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『【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】』感想

本記事は、にじさんじに所属するライバーで見習い烏天狗の「山神カルタ」さんが投稿した歌ってみた動画『【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】』について、感想を書く記事です。

(以下、YouTubeのチャンネルページ・歌ってみた動画へのリンク)



はじめに


この記事を書く際に、にじさんじwikiの山神カルタページ配信アーカイブのタイムスタンプコメントにじさんじコメント検索など、様々なサイトやコメントを参考にさせていただいています。

日々、wikiやWebページを編集・整備してくださっている方、配信アーカイブにタイムスタンプ付きコメントを残してくださっている方、本当にありがとうございます。


本記事では、歌ってみた動画及び本家『フォニイ』の内容、曲に関わる様々な要素の説明、作家意図を類推するレベルの個人的な解釈を書きます。

他人の解釈は相容れないので見たくない・作品至上主義でリスナーの感想・解釈は目に入れたくないという方は、お互いのために自衛をお願いいたします。

また、この先を読んでいただけるなら、その前に必ず、歌ってみた動画及び本家『フォニイ』の視聴をお願いします。

また、「これが絶対的な正しい解釈だ」という論調で書かないように十分気をつけているつもりですが、良くない表現・言葉遣い、この記事に対する意見・苦情・批判、誤字脱字・解釈の矛盾点の指摘など、何か気づいたことがありましたらコメントいただけますと幸いです。


山神さんは、歌ってみた動画を投稿する前後の雑談配信内にて、解釈を手助けする導線・考察のヒントを少しだけ提示してくれています。

もしも、この記事から初めて山神さんの『フォニイ』について知ったという方がいらっしゃるとして、自分の中に曲の考察や解釈の世界を拡げてみたい・わからないことについてわかりたくて納得したいと思っているならば、ぜひともこちらをご確認いただきたいと思います。

(以下、配信アーカイブの該当部分から、時間指定リンク)




さっくり感想


3.0お披露目配信の最後に、サプライズで今回の歌ってみた動画のサムネイルが公開されたのですが、まず目に飛び込んできたのは、原曲『フォニイ』とは違うお面と、普段の山神カルタとは違う髪色でした。


『フォニイ』については、最近流行している曲かつ、にじさんじライバーも何人か歌ってみた動画を投稿していたので、個人的に既知の楽曲でした。

いざ公開されてみると、疾走感があるピアノとバンドのDTMサウンドに山神さんの綺麗な裏声の高音が映えて、聴いていて心地よい歌ってみた作品でした。


また、概要欄には、前回の歌ってみた動画泡沫未来に続き、「Second chapter 承」と書かれていました。

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画像2

(「承」の前に一字分スペースが空けてあるところ、芸コマですき)




歌ってみた動画の制作に関わったクリエイターの方々


今回の歌ってみた動画のイラストを担当されたのは「&田」さんです。

(以下、告知ツイート引用)


今回の『フォニイ』では、割といかつい表情の天狗の面やウルフカットの山神さんを落ち着いたトーンの色味で描かれていましたが、Twitterのメディア欄をざっと見させていただいたところ、ビビットな背景に美麗な顔面が印象的なオリキャラのイラストを多数投稿されていました。

また、原神や初音ミクといったキャラクターの二次創作イラストも描かれていて、どのキャラクターも可愛らしかったです。

今回の山神さんのイラストでもそうでしたが、髪・手・服装に落ちる光や陰影の表現や、目の中の光があるのとないのとをはっきりと描き分けている感じが、個人的にめちゃくちゃ好きです。

(以下、ツイート引用)



映像を担当されたのは「しょうけい」さんです。

(以下、個人サイト・告知ツイートへのリンク)


前々作オノマトペ、前作の泡沫未来に引き続き、映像制作を担当されています。

今回の『フォニィ』も、随所に原曲MVの演出を再現していてリスペクトが感じられる作品になっていて、再現力と技術力がすごいと思いました。

上記のHPを見ていただければよくわかるのですが、しょうけいさんは、企業勢・個人勢にかかわらず、Vtuberの歌ってみた動画の映像編集を数多く担当されている方です。

しょうけいさんの制作実績を紹介する文章は、前々回の『オノマトペ』前回の『泡沫未来』の感想記事にも書きました。

今回もコピペになってしまって恐縮ですが、今、記事を読んでくださっている方が前々回・前回の記事を読んでくださった方ばかりだとは限らないので、ここでも改めて記載しておきたいと思います。

~~~~~ ここからコピペ ~~~~~

個人HPに制作活動の経歴がずらっと並んでいますが、その中から、にじさんじライバーの歌ってみた動画に限って抜粋すると、

瀬戸美夜子の『ファンサ
にじサガ(える、リゼ・ヘルエスタ、雪城眞尋、レヴィ・エリファ、相羽ういは、早瀬走)の『徒花ネクロマンシー
元にじさんじゲーマーズ(叶、赤羽葉子、笹木咲、本間ひまわり、葛葉、魔界ノりりむ、椎名唯華、雪汝、闇夜乃モルル)の『Virtual to LIVE

を、これまでに制作されているようです。

山神カルタに関わることだと、非公式のにじさんじ周年記念企画動画『【にじさんじ】3周年非公式ショートMV企画』にて、TVアニメ『氷菓』の二番目のOP『未完成ストライド』のメロディーに乗せて、最近コラボ名が決まった「みらるた」が、手を取り合って駆けているシーンの映像編集をご担当されています。

(以下、動画・告知ツイートへのリンク)

~~~~~ ここまでコピペ ~~~~~



MIXを担当されたのは「よしけん」さんです。

(以下、ツイプロページ・YouTubeチャンネルへのリンク、告知ツイート引用)


しょうけいさんと同じく、前作の『泡沫未来』に続いてMIXを担当されています。

よしけんさんの制作実績を紹介する文章は、前回の『泡沫未来』の感想記事に書きました。

またコピペになってしまって本当に恐縮なのですが、前回の記事から一部抜粋して記載しておきたいと思います。

~~~~~ ここからコピペ ~~~~~

Twitterのモーメントにて、よしけんさんが制作に関わった歌ってみた動画をまとめてくださっているのですが、Vtuberかどうかという活動形態に関わらず、そして、にじさんじの内外を問わず、関わった歌ってみた動画の数がとても多いと思いました。

その量と告知の頻度を見て、制作スピードの速さに驚かされました。

(以下、Twitterモーメントへのリンク)

一部にはなってしまいますが、現在に至るまでに、「相羽ういは」「le jouet(緑仙、夢追翔、加賀美ハヤト)」「くれっしぇんど(緑仙、シスター・クレア、ドーラ)」「町田ちま」「健屋花那」「森中花咲」「朝日南アカネ」「白雪巴」「JuvveL(月ノ美兎、竜胆尊、夕陽リリ、本間ひまわり、奈羅花)」などが歌う歌ってみた動画のMIXに関わっていらっしゃって、にじさんじライバーのことを広く追っているリスナーなら必ずよしけんさんがMIXされた楽曲を一曲は聴いているだろう、と思わせられるほどです。

にじさんじ外で言うと、ホロライブの「天音かなた」「星街すいせい」、最近バズって話題になった「酢酸かのん」、あにまーれの「宗谷いちか」の歌ってみた動画にも関わっていらっしゃいます。

~~~~~ ここまでコピペ ~~~~~



『フォニイ』を制作したクリエイター


今回の歌ってみた動画で山神さんが歌った『フォニイ』は、ツミキさんが作詞曲し、2021年6月5日にYouTube及びニコニコ動画にて発表・投稿された楽曲です。

(以下、YouTube動画・チャンネルへのリンク)


ツミキさんは、2017年にニコニコ動画にてオリジナル楽曲「トウキョウダイバアフェイクショウ」を投稿したところからネット上での音楽活動を始められたそうです。

今年の2月には、1stフルアルバム「SAKKAC CRAFT」をリリースし、8月には「NOMELON NOLEMON」というユニットから「INAZMA」という楽曲をリリースしています。

(以下、動画へのリンク)


1stアルバムについて、全ての楽曲を初音ミクボーカルにリアレンジした理由・自身の経歴・音楽体験・これからの活動への意気込みを語ってくれているインタビュー記事がありますので、ぜひご覧になってみてください。

(以下、ネット記事へのリンク)



一方で『フォニイ』のボーカルには、バーチャルシンガー「花譜」の音楽的同位体(花譜の声をサンプリングしたいわゆるボーカロイド)である「可不」が起用されています。

また、『フォニイ』は同チャンネル内の動画で現在最多の再生回数を誇る人気曲です。

既に各種SNSやYouTubeなどの動画サイトにて、素人・歌い手さんを問わずたくさんのカバーが生まれていて、それによって、曲の認知度の高まり及び大きな流行のムーブメントが引き起こされている、という印象があります。


イラストを担当されたのは、ツミキさんのアーティストビジュアル(上記ツミキさんのHPへのリンクに載っている画像)も描かれている、「ウエダツバサ」さんです。

(以下、個人HPへのリンク・告知ツイート引用)


個人HPの「Works」ページを見ていただければわかるのですが、ウエダさんは数多くのボカロ楽曲のMVイラストを制作されていて、今年からはアニメーション映像の制作も行われているようです。(『フォニイ』の映像制作・編集はツミキさんが行っているそうです)

(以下、YouTube動画へのリンク)


「Gallery」ページからイラストを拝見させていただいたところ、モチーフとして花や植物を精緻に描いていることが多い、という印象を持ちました。

『フォニィ』のMVにも、キャラクターが右手を逆手にして花と植物を持っているイラストがありました。

一色ではあるもののどこかぼかされているような背景、細かい線での精緻な描きこみ、彩度と明度のバランスを巧みに使い分けたような美麗なイラストばかりで、個人的にはとても好きなイラストばかりでした。

(以下、ツイート引用)




『フォニイ』の感想・個人的な解釈

ここからは、『フォニイ』という楽曲について、感想・個人的な解釈を書いていこうと思います。


まずは、感想から書いていきます。

『フォニイ』という楽曲は、ボーカルとピアノ伴奏から始まり、続いてどんどん細かくなるスネア+キック+クラッシュシンバルの連符と高速で切り替わる映像で音数と音量・情報量を増してたたみかけて、猫のお面を被ってポーズを決める少女の印象的なイラストに変わったところでイントロが流れます。

最近は「曲の最初に長ったらしいイントロがあるとまず聴かれず流行らない」という話を聞いたりしますが、『フォニイ』は曲の出だしから音楽と映像・イラストの見事な合わせ技でリスナーの興味をがっちりと掴むことに成功していて、たった十数秒で、リスナーの興味や曲の展開への期待感を最大限に煽るような、非常にキャッチーな作りになっている、と思いました。

MVも、2・4小節ごとに映像がフラッシュして一瞬乱れるような演出があって、歌詞はフォントの大きさや位置を変えて表示され、アニメーション映像ではなくとも動きが目まぐるしく、曲の持つ疾走感を更に高めてくれているように感じました。

楽曲全体としては、シンセでの音作りがボーカル「可不」との親和性が高いと思いました。

また、音域も高く最高音はHiG#、BPMも♩=170ハイテンポで、ピアノや4つ打ちドラムのサウンドによる軽快さ疾走感が感じられる楽曲だと思います。



続いて、『フォニイ』の歌詞で語られているストーリーについて、個人的な解釈を書いていきたいと思います。

ツミキさんがTwitterに曲の歌詞を載せてくださっていたので、ありがたく引用させていただきます。

(以下、ツイート引用)

英単語については不勉強ながら全く意味が分からなかったので、ネットで調べたものを記載しておきます。

phonyにせの、いんちきの、うその(形容詞)にせもの、いんちき、見かけ倒しの人(名詞)【引用元:weblio辞書

antipathy(根強い)反感、毛嫌い、相容れない性質、性に合わないこと(名詞) 【引用元:weblio辞書

「phony」は意味としては「fake」に近く、「real」「genuine」「authentic」(本物・真の・純正)が反対語です。

また、「antipathy」はsympathy」(同情・思い遣り・憐み・同感・共感・賛成)の反対語です。


歌詞の中で語られているストーリーの主体は、MVの中に登場する猫のお面をつけた少女だと思います。

MVの中で彼女は、猫のお面を被りながら手を頭の横に持ってきて耳のように見立てるポーズや、跪いて猫の手を真似るポーズをとっています。

猫の面について、私は以下のように解釈しました。

「猫」+「仮面」=「猫を被る」+「ペルソナ」

「猫を被る」と「ペルソナ」という二つの要素を組み合わせたメタファー表現だと解釈し、これが楽曲『フォニイ』で語られる詞のメインテーマだと思いました。

「猫を被る」は自分の本性を隠して大人しく振る舞うこと、「ペルソナ」は心理学用語で、社会や他人から求められて演じる役割(外的側面)のことです。
(心理学については全くの素人なので、「ペルソナ」の説明が間違っていたら大変申し訳ないです。)

「猫を被る」という行為は、本当の自分を隠す「phony」な振る舞いでありながらも、自分の言動を相手の趣向や場の雰囲気にチューニングして違和感がないように合わせていく「sympathy」な振る舞いでもあると思います。

ただ、猫を被ることで上手なコミュニケーションが出来て場の雰囲気が良くなったとしても、偽らない「本当の自分」はその場から取り残されてしまってしまい本当の自分を曝け出して他者とのコミュニケーションを図ることができない状況が「antipathy」だと感じられる、ということを言っているんだと思います。


歌詞の中では、彼女の一人称視点から言葉が綴られています。

・何故ならば全ては嘘で出来ている
絶望の雨はあたしの傘を突いて
煩わしいわ
・何時しか言の葉は疾うに枯れきって
散々な日々は変わらないわ

といった比較的ネガティブな言葉が使われ、自分を取り巻く日々の状況に嘆息・辟易する気持ちが表現されているように見受けられます。


また、『フォニイ(偽物)』という曲名に対応・呼応するように、

造花より綺麗な花はない
に絡まっているあたし
・鏡に映り嘘を描いて自らを見失った絵画(メイク)
・鏡に映るあたしを欠いて誰しもが見間違った虚像(フェイク)

などとも書かれていて、「本当・本来の自分」が持たない属性や魅力を付加・誇張して偽る行為の虚しさが表現されているように見受けられました。


「嘘・偽りの自分」について、彼女は、

・簡単なことも解らないわ あたしって何だっけ それすら夜の手に絆されて 愛のように消える
・如何して愛なんてものに群がり それを欲して生きるのだ

と言っています。

『あたしって何だっけ』という独白は、「本当の自分とは一体何なのか」というアイデンティティを探求して苦しむ気持ちの発露だ、と思います。

絞り出すように言い放った独白に続けて、彼女は『夜の手に絆されて 愛のように消える』と言います。
この部分は非常に情緒的かつ婉曲な比喩表現で、個人的にはとても好みです。

情緒的な表現を噛みくだいて理解したかったので、野暮かもしれませんが言い換えてみるとこれは、「朝日が昇って夜が明けていくように、一夜限りの熱に浮かされて翌朝には消えて無くなってしまうように、いつかは消えゆく儚い感情である『愛』のように、『あたしって何だっけ』という気持ちもいつかは消える」ということだと思います。

あたしって何だっけ ≒ 愛
⇒ 自己探求(自己喪失)≒ 愛欲

更に彼女は、『如何にして愛なんてものに群がり それを欲して生きるのだ』とも言っています。

こちらは上記の図式を当てはめてみると、『愛なんてもの』を執拗に欲することと『あたしって何だっけ』と本当の自分の姿を探求する気持ちを抱えることは同質であり、自分が生きている限りそれらを欲することは決してやめられないことに気がついて、諦め混じりに独り言ちているように聞こえます。

あたしって何だっけ ≒ 愛
⇒ 簡単なのに解らないこと、儚く消えてしまうもの、生きていると執拗に欲するもの


曲の最後に彼女はこう言って物語を締めくくります。

嘘に絡まっているあたしはフォニイ
造花だけが知っている秘密のフォニイ

『あたしって何だっけ』と「本当に自分」について苦悩していた少女が辿り着いたのは、「本当の私」は『嘘に絡まって』いることを認め、同時に『フォニイ』そのものであると断定して認めることでした。

嘘に絡まっているあたし=フォニイ

そして、『秘密のフォニイ』=「誰にも知られていない嘘に絡まっているあたし」を知ることができるのは、『嘘』『絵画』『虚像』「猫を被る」「仮面」などの外的側面の要素と同じ、誰かの手によって形作られた『造花』だけだ、という結論に至っています。

『antipathy world』においては、他人に望まれる振る舞いをとり続け『造花(一番綺麗な花)』になることで、初めて「本当の自分」の形を理解することができる、ということを逆説的に表しているようにも見えます。

簡単なことも解らないわ あたしって何だっけ
 ⇒ 嘘に絡まっているあたし=フォニイ
 ⇒ 秘密のフォニイ(=
誰にも知られていない嘘に絡まっているあたし)を知ることができるのは造花だけ
⇔ 他者との関わりの中で「造花になる」ことで、巡り巡って「本当の私」を知ることに繋がる


楽曲『フォニイ』の歌詞で語られているストーリーからは、物語の主体が「外的側面」と「本当の自分」のギャップに悩む姿を読み取ることができる、と私は思いました。

「本当の自分が何なのか悩む」というのは割とありふれた普遍的なテーマだという気がしますが、普遍的なテーマについて書いているからこそ楽曲を聴くリスナーはそれぞれが抱える悩みを自ずと投影しながら彼女の人物像を多彩に想像することができると思いますし、だからこそネット発の音楽をメインカルチャーとして今現在享受している若い世代に支持される人気流行曲になっているのかもしれない、とも思ったりします。

この少女のバックグラウンドにどんな事情があるんだろうかと想像してみると、夢や目標に向けて自己実現を希求する過程で壁にぶつかって悩んでいるとも、恋愛にまつわる人間関係の悩みに辟易しているとも捉えられて、楽曲を聴く人によって様々な解釈が生まれてきそうな感じがします。



山神カルタのカバーならではのオリジナル要素・原曲リスペクト要素・個人的な解釈など


ここからは、山神カルタが歌ってみた動画でカバーした『フォニイ』について、原曲リスペクト要素・オリジナル要素・個人的な解釈などを、必要があれば原曲と比較しつつ、書いていきたいと思います。

わかりやすい説明のために、それぞれの動画のスクショを引用させていただきます。何か問題があればご連絡・ご指摘ください。


曲の冒頭に白いアイコンが目まぐるしく変わっていく演出があると思いますが、その部分に山神カルタのオリジナル要素が見受けられます。

原曲『フォニイ』では以下の順で変わっていきます。

☔→⚠→🌗→♬→◎→⚥→❁→🙂→*→◆→★→♥→●→⚁→▶
①:雨と傘
②:警告マーク
③:下弦の月
④:連桁付き一六分音符
⑤:二重丸
⑥:男女マーク
⑦:七つの花弁がある輪郭付きの黒い小花
⑧:笑顔
⑨:アスタリスク
⑩:ひし形
⑪:星型
⑫:ハート
⑬:丸
⑭:サイコロの2の目(左右反転)
⑮:再生マーク

①のマークは歌詞の『絶望の雨』を受け止める『あたしの傘』、⑦の花マークは、ボーカルとして採用されている「可不」の大元である「花譜」を表していたりするのかもしれないと思いました。

続いて山神さんの方ですが、以下の順になっていました。

☔→⚠→🌗→♬→◎→⚥→🙂→ときんちゃん→*→◆→★→♥→●→🎴→▶
①:雨と傘
②:警告マーク
③:下弦の月
④:連桁付き一六分音符
⑤:二重丸
⑥:男女マーク
⑦:七つの花弁がある輪郭付きの黒い小花⇒笑顔
⑧:笑顔⇒ときんちゃん
⑨:アスタリスク
⑩:ひし形
⑪:星型
⑫:ハート
⑬:丸
⑭:サイコロの2の目(左右反転)⇒花札マーク(左右反転?)
⑮:再生マーク

順番として笑顔が先に来て、その後に花マークに代わってときんちゃんになっていました。かわいい。

ボーカルは可不ではなく山神カルタだ、という意味にもとれると思いました。

フォニイ _ phony - kafu [オリジナル] 0-13 screenshot (1)

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 0-13 screenshot (2)

そして、サイコロの2の目のマーク(⚁)に代わって自身のファンマークである花札(芒に月:🎴)マークが使われていました。どちらも左右反転しているように見受けられます。白く塗りつぶされたアイコンになった際にサイコロの2の目のマークと花札マークって形としてかなり似ていて、初見時はわかりませんでした。

フォニイ _ phony - kafu [オリジナル] 0-15 screenshot

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 0-15 screenshot


サムネイルからもわかる通り、今回の歌ってみた動画に登場する山神カルタは烏天狗の面を被り、頭の横に手を掲げ、髪を短く切り、前回の『泡沫未来』同様に、髪色・服装が対称的な二名が登場します。

烏天狗の面については、原曲の猫の面からガラッと変えて自身のオリジナリティを前面に打ち出してきたところが非常に良かったと思います。

頭の横に手を掲げるポーズですが、こちらは原曲のものと若干ポーズが異なっているように見えました。

フォニイ _ phony - kafu [オリジナル] 0-20 screenshot

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 0-19 screenshot

特に指の開き方が違う気がしていて、原曲の方はぴったり閉じて猫の耳を模したポーズなのに対して、山神さんの方は指を開いて烏天狗の黒翼を広げた姿を模したポーズになっているのではないか、と思いました。

髪色がいつもと違いますが、こちらは『泡沫未来』からの続章であることを鑑みても、この人物は間違いなく「山神カルタ」であるということです。(他ライバーのことだと誤解されている方がいらっしゃったようで、山神さん本人が配信上で言及しました。)

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Twitterのヘッダー画像も歌ってみた動画投稿後から変わっていて、これについても同じく山神さんから配信上で言及がありました。


曲が進んでいくと、烏天狗の面は外れます。

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そして、『泡沫未来』の時のように画面上に二人の山神カルタが登場するのですが、なんと耳にピアスが開いていました。こちらも色が対称的。

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 1-25 screenshot

山神カルタの最新の新衣装(7月18日にお披露目されたもの)を注意深く見た方はきっとわかると思いますが、ピアスは山神さんの左耳にしか開いていないんです。

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ここで登場したいつもの髪色の山神さんの右耳には開いていないはずのピアスが開いていて、まるで鏡写しのようです。前回の『泡沫未来』と同じです。

更にこのイラストが左右反転して入れ替わる演出があったりして、

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 1-32 screenshot

歌詞の『こころの裏面』『鏡に映り嘘を描いて自らを失った絵画』『鏡に映るあたしを欠いて誰しもが見間違った虚像』辺りの言葉の意味を考えさせられるような演出に見えます。

ちなみに、原曲『フォニイ』でこの部分は、マネキンと猫面をつけた少女のイラストになっています。

フォニイ _ phony - kafu [オリジナル] 1-25 screenshot


2番Aメロの最初には、原曲・歌ってみた共に風船のイラストが登場し、原曲では左が水色で右がピンク、歌ってみたの方は二人の山神さんの色(左:いつもの色、右:反転色)になっています。

フォニイ _ phony - kafu [オリジナル] 1-40 screenshot

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 1-40 screenshot


また、間奏では、原曲・歌ってみた共に傘のイラストが登場します。(この傘は『絶望の雨』を受け止める『あたしの傘』だと思います)

原曲では少女が着ている服の色に近い水色の生地に風船の色に近い水色の手元の傘、歌ってみたの方は普段の山神さんの髪色に近い色の生地に反転色の手元、そして傘の向き原曲と歌ってみたで対称的になっています。

フォニイ _ phony - kafu [オリジナル] 2-12 screenshot

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 2-10 screenshot


ラスサビ前では、原曲・歌ってみた共にそれぞれのキャラクターが手に植物を持っています。
原曲では複数の花や植物を蔓で縛ってまとめた花束を右手(逆手)で下に向けて持っていて、歌ってみたの方では『ヨヒラ』でも登場した彼岸花だけを複数本、右手(順手)で同じく下に向けて持っています。

フォニイ _ phony - kafu [オリジナル] 2-26 screenshot

【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 2-23 screenshot

歌詞にも『造花』とあるように、原曲・歌ってみた共に、手に持っている植物は造花なんだろうと思います。


原曲・歌ってみた共に、1・2番サビではキャラクターが歌いながら目を瞑っていて、ラスサビでは歌いながら目が開いています。

ですが、山神さんの歌ってみたの方のラスサビは、原曲のそれと比べて割と目がぱっちり開いているように見えました。

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【歌ってみた】フォニイ【covered by 山神カルタ】 2-43 screenshot


ざっくりまとめると、

・アイコンの変更(花→ときんちゃん、サイコロ→花札)
・猫面→烏天狗面、ポーズの変更
・『泡沫未来』同様、髪色・目の色・服装の色づかいが対称的な二名が登場する(マネキンと少女→二人の山神カルタ、今回はピアスの色・穴も対称的)
・風船の色の変更
・傘の色と向きの変更
・持っている植物と持ち方の変更
・ラスサビの表情

というふうになると思います。


比べてみて思ったのは「左右」についてです。

描かれているモチーフの向きや二人の立ち位置が入れ替わったりすることが多いように感じていて、二人の立ち位置に関しては、前回の『泡沫未来』でも、まるで回りながら踊るようにシーンごとに入れ替わっていました。

「左右」について、日本では左が優位で(着物の右前、左大臣>右大臣、魚は左頭、舞台の上手下手、衆参両院の配置、上座下座、車両の左側通行)、海外では右が優位だという印象があります。

文字を書く際にも日本は縦書きで右から左へ流れていき(一時期は横書きでも右から左へ書く文化があったり)、海外では左から右へと流れていくことが多いと思います。

二人の山神さんの位置が入れ替わったり、原曲と傘の向きが変わっていたり、どちらが本当でどちらが嘘なのか、どちらが本物でどちらが偽物なのか、どちらが優位でどちらが下位なのかということになるかとは思いますが、目まぐるしく左右が入れ替わることで「どちらも表に出ることがあるし裏に潜ることもある同一で表裏一体の存在である」ということを示しているのかもしれない、と思いました。


特に二人の山神さんの髪色・服装・ピアスの色と穴の位置についてですが、この二人は『泡沫未来』の時から一貫して「対称的」「反転」の表現が貫かれています。

楽曲『フォニイ』で語られる物語における『あたしって何だっけ』と自問自答する文脈に、バーチャルな存在としての「Vtuber」が乗っかると、その活動形態や内容に伴うあれこれと関連させるとしても、メタ的な考察に発展させるとしても、かなり親和性が高いように感じられました。

それこそ、「対称的」「反転」の表現を用いる山神カルタ独自の表現がその文脈に乗っかることで、歌詞にある言葉との親和性もより高まって、両者の表現するテーマの相似点が上手く重なっていると思いました。


山神さんが持っている赤い彼岸花の花言葉の中には「また会う日を楽しみに」という言葉があるようで、『さようならまたねと呟いた』という歌詞にぴったりだと思いました。

傘の向きと植物を持つ手が原曲と反転しているのはなぜなんだろう、と思って色々と考えてみましたが、腑に落ちる理由や解釈には思い至りませんでした。


前章『泡沫未来』からの繋がりを重視して考えると山神さんの髪型は、「あんなに長くたなびいていた素敵な髪をばっさりと切ってしまった」というふうに見えると思います。

絵柄の問題もあるかとは思いますが、原曲『フォニイ』と比べても山神さんの方の襟足は綺麗に切りそろえられてはおらず、ウルフカットのようなワイルドな短髪の髪型になっているようにも見受けられます。

「髪を切る」というのは外見を変えるための一番手軽かつ分かりやすい手段であり、自他を問わず及ぼす影響が大きい手段でもあると思います。

自分の気分を変えたい時、大胆にイメージチェンジしたい時、そしてよく言われるのは「失恋した時」にばっさり断髪するというものです。

現実・創作の中でよく用いられる手段としての「断髪=失恋」というイメージが先行しているだけなので、「起→承」の間で山神さんが「失恋した」とはっきり断定するつもりはありませんが、今までの物語を俯瞰してみると、「起→承」の間での山神カルタの持つ雰囲気や楽曲のテイストの変わりようは、もはや「転」レベルの変わりようだった、と個人的には思います。

「起」の『泡沫未来』ではあんなににこやかに笑って楽しそうに二人で歌って踊っていたのに、「承」では一転、髪をばっさりと切って、片方が抱きかかえられて目から光が無くなっているような状態にもなって、自己について苦悩するテーマの歌を歌うなんて……という感じです。

きっかけになる「何かが起こった」ということは示されつつも、実際に「何が起こったのか」はリスナーが知覚できないブラックボックスになっていて、創作物を楽しむリスナーの立場からは色々想像できる余地が残されているような気がします。

私の想像力が乏しいのと「起→承の間に何が起こったのか」ということを語るための論拠・手がかりが見出せなかったので、ここでは変に妄想して語らないことにします。


個人的には、今回の『フォニイ』では髪色が違う反転神さんの方が前面に押し出されているように思いました。

ラスサビでは原曲やその前のイラストの表情と比べて力のあるぱっちりとした目の表情をしていたりして、諦観して『あたしはフォニイ』と言い放つというよりも、『あたしはフォニイ』だということを受け入れて、この先に希望的な物語が続いていくような印象を受けました。




最後に


にじさんじの中に限っても、多くのライバーがこの曲を歌枠で歌ったり、歌ってみた動画を制作して投稿・発表しています。

〇歌ってみた動画
7/13 朝日南アカネ7/16 不破湊8/5 町田ちま9/28 家長むぎ10/2 Perta Gurin10/7 Lee On10/9 鈴鹿詩子
〇歌枠・弾き語り枠
9/9 弦月藤藤士郎9/23 Petra Gurin9/30 Elira Pendora6/25,8/29,9/16,9/30 三枝明那10/4 緑仙

「にじさんじコメント検索」で「フォニイ」と検索すると、「161 動画:1664 コメント」という結果になりました。(10/10 現在)

中身を詳しく見てみると、それぞれのライバーの歌ってみた動画への感想コメントもありますが、歌枠や弾き語り枠でのリクエストが多いことがわかります。(「phony」で検索すると、EN・ID・KRの歌枠でのリクエストコメントも数件引っかかりました。)

海外を含め、にじさんじのリスナーの中でも知名度が高い楽曲であること、「自分が推しているライバーにぜひとも歌ってほしい」「ライバーが歌っているのを聴いてみたい」と思っている人がリスナーの中に結構いる、ということがよくわかると思います。

山神カルタとしてソロで発表される歌ってみた動画の中では、最も知名度が高い楽曲で、今現在この瞬間において特に流行っている曲が選曲されていた、と個人的には思います。


個人的な話にはなってしまいますが、前回の『泡沫未来』の感想記事であまりにもメタ的な解釈に寄りすぎてしまったという反省があったので、きっぱり断定するような書き方は避けたつもりです。

また、作者の意図や動画内で表現されている事実とあまりにもかけ離れた解釈にならないように、元となる根拠や情報の精査には気をつけたつもりではありますが、どうだったでしょうか。

やっぱり頭の中で考えていることを言語化するのは本当に難しく、今回もただ長いだけで非常に読みづらい文章だったかと思います。

ここまで読んでくださった方、いらっしゃいましたら本当にありがとうございます。


今回の歌ってみた動画『フォニイ』は、何より配信上で山神さん本人も言っていた通り、解釈のきっかけになるような様々な要素が散りばめられている歌ってみた動画でした

ここから「転」で一体どんな展開になるのか、非常に楽しみです。

そして、叶うことなら、章立てされた歌ってみた動画全てを投稿し終わった後のクリエイターズトーク的な「あとがたり」はぜひとも聞きたいです。




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