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娘の本音を抱きしめた日

「スイミングまであと何日?」
ここのところ毎日、5歳の娘は聞いてきた

お兄ちゃんと習い始めてから1年
楽しくやってきたけど
いくつかの理由でどうしても嫌になってしまった

少し前から行く直前になると
行きたくないと色々な理由が出てくる

「足がつかなくて怖い」
「先生が怖い」
「お腹が痛い」
「前にいたお友達がいない」
「楽しくない」
「できない」

その言葉に寄り添って私も精一杯応援してきたけど
あまりに繰り返すから
何のために娘を励ましているのか分からなくなった。

娘が〈行きたくない理由〉はどこにあるんだろう。

〈原因〉を見つけなければ、前に進めないと私は思っていたのだ。


そんなある日のことだった。

それはまたスイミング前日の夜
私は大好きな鯖の竜田揚げを揚げていた。

「ママ、明日スイミングに行けないかもしれない」
と小さな声が近づいてきた。

私は揚げ物を気にしながら娘を見て、
「わかった、今手が離せないから後で話を聞くからね」と伝えた。

ところが次の瞬間
娘はもう顔をぐしゃぐしゃにして泣いて
肩をあげてしゃくり上げながら大きく声を絞り出して言った

「もう・・・スイミング・・・やめたい。」
「がんばりたいけど・・・もうがんばれないの。」

私は娘のその声その顔を見て
ハッとして、すぐに娘を抱きしめた。

頑張りたいけど、もう頑張れない。

もうこれは、心からの本音。心から漏れた叫びのようだった。

辞めたい理由を私はずっと知ろうとしていたけれど、
理由なんて、必要ないのだ。

そして火を止めて、こう声をかけた。

「本当の気持ちが、今ちゃんと出たんだね。
 えらいね。よく言えたねぇ。」

娘はなぜ褒められたのか分からずキョトンとしていたけど、

私は「わかったわかった、もうおしまいにしよう。今まで頑張ったね。」

私は何度も娘の頭を撫で回した。


その後二人でお風呂に入ってまた話の続きをした。
そして2つだけ娘に伝えた。

1つ。
あなたは「もうできない」って言うけど、
できるようになったことの方がこーんなにたくさんあって、
今できないことはこーんなにちょっとなこと。
本当によく頑張ったね。

2つ。
あなたは、自分の心をごまかさないで、「お腹痛い」とかごまかさないで、
「頑張りたいけど頑張れない」って素直に伝えられたね。
だから、あなたの気持ちがよーくわかったよ。

「あとはママに任せてね」と伝えると
泣き腫らした娘の目からまた涙がポロポロと溢れていた


私はこの娘との着地点に1ミリの迷いもない。

やりたくないことを、やり続ける忍耐力は、
この先の時代、人を幸せにするだろうか。

心を震わせてワクワクすることに没頭する力、
自分を信じる力こそ、彼女の人生を幸せにしてくれると思う。

そんなことを、娘は身をもって〈私に〉突きつけてくれたのだと
あとで思った。

あなたの未来は可能性で溢れている。

勇気を持って1つ手放すあなたに、とびきりの扉が必ず待っている。

ママは、本気でそう思っているよ。


おわり

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