ショートショート『笛注意報』
大雨注意報が発令されたその日。僕はとある計画を実行することにした。
僕が通っている小学校は、校長先生の親族が災害で亡くなってしまったこともあり、注意報だけで休校、緊急下校の対応をとる学校だった。
その仕組みを知ったとき、悪質な計画を思いついてしまった。
注意報が発令され無人となった学校に潜入し、クラスのマドンナK子ちゃんのリコーダーの頭部管と、僕のリコーダーの頭部管を交換する、という計画だ。
リコーダーの頭部管を交換して、間接キスを独占したい。そんな男なら誰でも抱く欲求を、休校になる注意報で叶えることにした。
雲色は悪いが、まだ小雨だ。学校に忍び入り、暗く静かな洞窟に変貌した廊下をK子ちゃんへの愛で突き進んだ。
やっとだ。やっとK子ちゃんと……
体中のエロスティックな欲望を、すべて右手に集めて、開け慣れた扉をスライドした。
だが、K子ちゃんの席に先客がいた。K子ちゃんの頭部管を手に持った出席番号8番が座っていた。
「何してんだ!」
計画が失敗された怒りも込めて、力強く注意した。
–––––完–––––
本作は、たらはかにさんの #毎週ショートショートnote という企画を基に作成した物語です。
お題は、『笛注意報』でした。
*オチがいまいちわからなかった人は、コメント欄をご覧ください。
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