見出し画像

みんな同じ #5


「人に対して悪口言う人って、自分1人だけで自分が成り立ってると思ってるんだよな。きっと。」

「誰かがいるから自分がいるのに、自分のことしか考えていなくて視野が狭いよな本当」


と彼が急に話始めた。

ネットでは一部の人達だが
彼らを罵倒する言葉を書き込んでいるらしい


彼はそいつらに対する愚痴が溜まっていたようだ

15分程か、もっとか

彼の口は止まる事なく話し続けていた


「ごめんね俺の愚痴ばっかりで、聞いてくれるからつい話すぎちゃった」

と、彼は言った


悪口とかそういうの気にする人なんだなと思った。
なんだか意外だった。


彼が尊敬する先輩の話をきいた
私が日々ちょっと頑張ることの話もした
彼の学生時代の恩師の話も聞いた
私の最近しんどかった出来事も話した
カッコいい生き方の話もしたし
私の学生時代怖いもの知らず最強無敵伝説の話もした

気がついたらこの話だけで3時間は経過していた


全ての会話に心打たれた。
彼が伝えてくれる言葉全てに新鮮味があって
この言葉を直接伝えてくれる人に出会えて良かったし
私の思っていることや今感じたことを、
ここまで素で話せる相手がいることの有難さを、
肌で感じた時間だった。

正直私達は側から見たら
明らかにセフレだが
2人で過ごす時間はあまりに得るものが多すぎて
そんな肩書きどうでもよくなった。

「この話、最近〇〇とも話したんだけどさ」

芸人仲間とするような話を私ともしてくれていたらしい

10歳も年下の私のことをちゃんと1人の人
平等に同じ目線で接してくれているのを感じて
嬉しくなった。


「何かあったらいつでも相談しておいで」

彼がそう言ってくれた
その言葉が20代を迷走している私にとって
どれだけの救いか


凄く心強い。
彼が先輩から学んだことを
私に沢山教えてくれているこの時間
絶対に無駄にしたくないと思った。

なんだか熱くなってお酒もすすんでいるからか
彼が熱く先輩の話をしている時に

「周りに沢山尊敬できる人達がいて毎日刺激的で、得るものが無限にある環境の中で、何者でもない私と過ごしている時間って楽しいですか?」

と、あまりに野暮な質問をしてしまった。


私に対してどう思っているか毎日のように気にしてはいたが、絶対に聞かないようにしていたし面倒くさい女だとも思われたくなかった。

質問をした直後”やってしまった”と思っていたら、

彼は顔をニヤつかせながら

「当たり前だよ。楽しくなかったらこんなに何度も会わないし誘うこともないよ。楽しいのかな?なんてそんなこと思わなくていいのに……どんなに居心地の良い先輩でも無意識に緊張感をもっているから多少なりとも疲れたりするけど、この時間は本当にリラックスできてるし、会いに来てくれて心からありがとうって思ってる。自分を下に見なくて良い。芸人仲間とココは別だからね」

彼が目をみて話してくれた。


言わなきゃ良かったと思ったことが
言って良かったに変わった瞬間だった。


そこから彼は恥ずかしさが消えたのか
私のことを褒めてくれた

「毎回思うけどコミュニケーション能力高いよね。人と接するのが上手。無意識だろうけど素で楽しんでくれてるから相手にも伝わる何かがあるんだと思うし、言葉に優しさがある。それはきっと経験と努力で手に入れたものだと思う。しっかり社会人してるんだなってすごい伝わってくるよいつも」


こんなに直球で褒められることがないので
なんだか照れ臭かった。 


「なんか考えてみたら、初めて会った日以降ずっと家で呑んでるよね、今度外で美味しいもの食べに行こうか」

急に彼がそう言った。

「そうですね!食べにいきましょう!」

そういうと彼はニコニコしながら
「でもM-1優勝するから忙しくなっちゃうな〜」
と冗談を言った

「忙しくて人気者になっちゃうかもしれないですね」
と私も笑いながら言った

「そんなのは関係ないよな」

彼は冗談を言って笑っているが
本当に優勝したら何かが変わってしまうのだろうか

今日も刺激的な1日だった
彼との10時間はあっという間だ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?