見出し画像

立憲民主党 道下大樹 衆議院議員 参考人質疑 第213回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和6年4月3日


043 道下大樹

○道下委員
 立憲民主党の道下大樹でございます。
 今日は、大変お忙しいところ、4名の参考人の皆様にこのようにお越しいただいて、先ほど意見陳述をしていただきまして、本当にありがとうございます。
 それでは、それぞれの皆様に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、斉藤幸子参考人に伺いたいと思います。
 お話しされている中で、面会交流を含めて、高裁まで5年かかったということでございますが、ただ、離婚はまだ終わっていないということでございます。どのような今不安をお持ちでしょうか。


044 斉藤幸子

○斉藤参考人
 裁判が続くことが不安です。
 DVを理由に離婚したいですが、DVを認められるのに時間がかかるので、早く終わる性格の不一致で離婚したいと思っています。
 しかし、離婚が成立しても、相手が面会交流を再度申し立てるかもしれません。私が通院しているクリニックにも、うその診断書を発行していると訴訟を起こす可能性もあります。私や家族、私に関わる全てを裁判に巻き込んでいくのではないかという不安があります。


045 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 今回の民法改正案では、子の利益、子の最善の利益ということが繰り返し出てきます。今回、参考人の中で唯一でしょうか、DV被害の、今離婚協議をしている当事者という立場から見た子の利益というものをどのように感じていらっしゃいますでしょうか。どうやったら子供の利益を重視できるというふうに思われますでしょうか、斉藤参考人に伺いたいと思います。


046 斉藤幸子

○斉藤参考人
 子の利益が、人それぞれの価値観で判断されていると感じます。
 今でさえ、裁判所はDV、虐待を見抜けていません。共同親権が導入されたら、今よりも裁判所が忙しくなるので、1つの事案にしっかり時間をかけてもらえず、適当な扱いになってしまわないかという不安があります。
 私の場合もそうですが、面会に応じないと親権を失うよと調停委員や調査官から言われたり、さらには、面会に応じないなら養育費減額に応じなさいと、代理人がついていない同居親に強く迫った裁判官もいたと聞いています。
 裁判所に対する不信感は、みんなが思っているよりずっと根深いです。裁判所が、裁判官や調査官、調停委員に対して、DV研修をしっかりと義務づけてほしいなと思います。


047 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 そこで、今、裁判官や家裁の調査官、そして調停委員の方々の話にもなりました。もし、この民法改正案が成立、そして公布、施行され、斉藤参考人の一方の配偶者が共同親権への親権変更を家庭裁判所に申し立てたと仮定した場合、DV被害を受けたということをどのように家庭裁判所の裁判官や調査官、調停委員の方々に説明できると思われますでしょうか。そして、家庭裁判所、それらの裁判官の皆様などがDV被害を認めてくれるというふうな自信はお持ちでしょうか、伺いたいと思います。


048 斉藤幸子

○斉藤参考人
 私を人格否定するメールのスクショを数枚しか、記録で残っていないのですが、それで説明するしかないなと思っています。
 ほかの方もなんですけれども、調停でDVの記録を提出しても、夫婦喧嘩のいっときの暴言ですねと判断されてしまった、受け取られたというのを聞きますので、裁判所がDV被害を認めてくれるという自信はありません。


049 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 ちょっと、そういう自信が持てないということは、これは斉藤参考人のみならず、今、実際にDV被害を受ける、また、これから、今は結婚して仲睦まじい関係かもしれませんが、今後離婚するかもしれないという子を持つ父母、そして、これから結婚しようかな、子供を産み育てようかなというふうに思っている若い皆さんにも大変大きな、ショッキングなお話かというふうに思います。
 斉藤参考人、とはいえ、家庭裁判所の裁判官、調査官、調停委員の方々に、このようになってほしいという、例えば、先ほども話がありました、更なる、犬伏参考人からは講習を受けるだとか、そういったことがありましたけれども、何かこのように是非とも取り組んでいただきたいという御意見は、お考えはありますでしょうか。


050 斉藤幸子

○斉藤参考人
 実際に現場の支援をしてもらうというのを実施したらいいと思います。


051 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 次に、山口参考人に伺いたいと思います。
 日米家族比較法の研究をされてきたということでございます。私もいろいろと調べてみますと、欧米諸国の離婚後の養育法制というもの、家族法については、法律用語としては、親権ということでペアレンタル・オーソリティーという言葉が使われてきたということでございますが、その後、カストディーということで、これ、ペアレンタル・オーソリティーのオーソリティーが権限であって、カストディー、監護という言葉に変わり、そしてさらに、今現在では、ペアレンタル・レスポンシビリティー。『レスポンシビリティー』というのは親の責任というんですね。権利からだんだん親の責任なんだというふうに変わってきているというふうに思います。
 日本の法律との対比で考えると、権利、権限から子供の監護、保護、そして、責任、さらに、養育といった大きな流れで欧米諸国が来ているのではないかなというふうに思うんですね。
 だから、先ほどもしばはし参考人も、共同養育というお話、これを非常に重要視されています。
 なので、私自身は、このような、今のような親権という言葉、これはオーソリティーという、ペアレンタル・オーソリティーよりも、海外はだんだん日本のような形というか、何でも親権、ペアレンタル・オーソリティーというよりは、だんだん日本の法律などに近づいてきたのではないかなというふうに思うんですね。
 アメリカの1つの州であるルイジアナ州では、婚姻中は共同親権なんですけれども、離婚したら、まず、親権がなくなるということなんですよね。親権がない。オーソリティーがない。その後どうなるか。監護とか養育とか、あとは親の責任であるレスポンシビリティーに変わってきているんです。その上で、元々、離婚前、離婚協議中、そして、離婚後の様々な相談支援体制などが充実している。ちゃんと契約するというものがあって、だんだん、親の責任をどうするのかということに変わってきているというふうに思うんですが。
 そう考えますと、共同親権という、ペアレンタル・オーソリティーを今、日本が、ちょっと、欧米とは1周回って、遅れて、共同親権、ペアレンタル・オーソリティーというものを導入する必要があるのかなというふうに思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。


052 山口亮子

○山口参考人
 御質問ありがとうございます。
 非常に多方面から御指摘いただいて、必ずしも私の理解と一致しているかちょっと分かりませんけれども、私が今まで、ちょっと、学んできたところを申し上げますと、まず、カストディーという言葉でアメリカは来ておるということなので、離婚後は、ここでも、意見陳述では、親権ではなく監護権という言葉で説明させていただきました。ですから、カストディーという言葉はありました。
 でも、これに関しましても、やはり保護とか管理ですとか拘束というような言葉の意味がありますので、おっしゃられたように、ペアレンタル・レスポンシビリティーとか親責任、そして、具体的に何をするのかということで、養育時間とか養育計画という言葉に変わってきたというのは御指摘のとおりでございます。
 しかし、アメリカでは、ペアレンタル・ライツという、これが法律用語としてあるんですけれども、これが憲法上の権利とし1つ存在していますので、あえて、これは親権ではなく親の権利と言って、監護権とは分けて私は考えておりますが、この憲法上の親の権利とは何なのかというと、やはり、国家からむやみに権利が制限されないというところで、非常に強い権利を持っております。ですから、日本よりもちょっと保守的ではあるとは思いますが、第3者からもそして国家からもむやみに権利を制限されないという意味では、アメリカは依然としてペアレンタル・ライツは持っているというふうに思っております。
 しかし、私人間におきましては、御指摘のように、親の義務ということ、あるいは、具体的に養育ということに変わってきていますので、これは、おっしゃられたとおり、実態を表すというものでいいと思います。
 日本の親権についてですけれども、やはり、同じように、日本は憲法上の権利とは議論されておりませんので、私法上で、第3者に対する親の権利ですとか国家に対する親の権利という意味も含めて、親権というものが残ったと思っておりますので、親の責務、義務、親権ということも含めて親権というふうになっていると理解しております。
 以上です。


053 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 日本の、今、我々も含めてかもしれません。私は、このペアレンタル・オーソリティー、カストディー、それからレスポンシビリティー、しっかりと分けて議論しなきゃいけないというふうに思うんですね。
 法務省が外務省を通じて海外の親権についての調査を行ったものも、ちゃんと詳細な文章を、調査結果を見ると、ちゃんとレスポンシビリティーだとか分けられているんですけれども、その調査結果を法務省がまとめた概要については、もうそれを全部ひっくるめて共同親権と言っちゃっているんですよね。だから、その概要だけ見た場合には、ほかの海外では共同親権をやっているんだ、だから日本も導入しなきゃいけないんだというように受け止める方々が多くなっているんじゃないかなというふうに思っていまして。
 今、山口参考人がおっしゃったように、本当にそれは、だんだん、先ほども、共同親権の今日はお話なんですけれども、共同監護ということで、やはり言葉を分けて、使い分けて使われたということで、これはしっかりと認識されているんだなと思うし、この点も我々は意識して、共同親権が外国では当たり前なんだではなくて、だんだんそれが監護や又は親の責任とか養育とか、これは、今の現行法制度でも監護とか共同養育とかはできるわけですので、私は、そういった意味では、私の立場として見れば、共同親権は導入しなくても皆様がやろうとされていることはできるんじゃないかというふうに思っています。
 次に、しばはし参考人に伺いたいと思います。
 同様のお話なんですけれども、今本当に取り組んでおられることで、1つ、共同親権で、共同養育ということなんですけれども、また支援の強化ということですけれども、私自身は、法律を変えなくても、そうした皆様の活動だとか、本当に、離婚後も何とか、親が争わないことということで、子供の望むことを進めることは今の現行法でもできると思うんですが、どのようにお考えでしょうか。


054 しばはし聡子

○しばはし参考人
 御質問いただきまして、ありがとうございます。
 共同養育を行うには、まず、離婚した後2人で育てるんだという価値観が世の中にまだ浸透していない、これが、恐らく単独親権制度ということが根強くあるのかなというふうに思っております。
 共同親権が導入されることで、御不安な方はもちろん単独親権という選択肢が残っている中で、共同親権導入という、ソーシャル・インパクトと申し上げてよろしいのか分からないですけれども、大きく、離婚した後も2人がきちんと親権を持って関わらなきゃいけないんだよということをここで潮目として変えていくことで、共同養育をするのが当たり前なんだという、共同養育がデフォルトの状態から話合いが進むことができるというふうに考えております。
 という意味で、共同親権と共同養育は別物だよねという議論もあるんですけれども、極めて相関性があるものだというふうに私は考えております。


055 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 共同養育というか、そう考えると、親の共同の権利というよりは、親の共同の責任ということなのかな、だから、先ほど申し上げたとおり、オーソリティーじゃなくてレスポンシビリティーなんじゃないかなというふうに思うんですよね。だから、そういった点が海外では、しばはし参考人がおっしゃるようなことを広めるためには、しっかりと親が離婚後もこういうことをしなきゃいけないんだよという親の責務を今いろいろと法を改正したりなんかしてやっていると思うんですよね。それでも、共同親権というものにこだわられるんでしょうか。


056 しばはし聡子

○しばはし参考人
 御質問ありがとうございます。
 いろいろな、親の責任ですとか親権の行使というようなところの、切り分ける、責任の方でいいのではないかという御質問だと思うんですけれども、まず、先ほども申し上げたように、お互いがきちんと責任を、責任といいますか、権利を持って親権を行使したい、その上で離婚をしたいという方も多くいらっしゃっています。お互い親権を持つことが今できない法制度だからこそ、離婚はお互い合意しているのにできないというような方も当然いらっしゃっています。ですので、難しい場合には単独親権という選択肢がある上ですので、きちんとした親権という行使をするものを、親が共同親権ということを選べる、共同親権で離婚はできるというような制度というのが必要だというふうに感じております。


057 道下大樹

○道下委員
 選べる制度であればいいということですね。分かりました。
 次に、犬伏参考人に伺いたいと思います。
 今、慶應義塾大学名誉教授であられるとともに、東京家裁の調停委員もされているということでございます。
 この法律、民法改正案が仮に成立された場合、公布後2年以内に施行されるということが記載されております。法の公布後、いろいろな準備などが必要になってくるというわけでありますが、先ほども斉藤参考人のお話がありましたし、犬伏参考人からも、家裁の人員の増強だとか施設の拡充というものが必要であろうというふうにおっしゃいました。
 その点についてなんですけれども、施設に関しても、今、建設費が高騰したり、人材が不足しているということ、それから、裁判官を増員すること、調査官は今、裁判官よりも少なくて、1500、600人ということ、非常駐のところもいる。調停委員の講習も、結構、人々の考え方を変えるのは大変重要かと思いますが、時間がかかると思います。
 公布後2年以内で施行するということは、この時間というのはこれで十分というふうにお考えでしょうか。


058 犬伏由子

○犬伏参考人
 直ちにその御質問に答えるということは難しかろうと思いますけれども。
 コロナ禍のときに、東京家裁の場合は、下の方で庁舎がつながっているんです、ですから、高裁などの建物とかそういったところを使うということは行っておりました。ですから、やはり庁舎を融通するとか、公的な機関というものがあるということを利用するということでやっていくというふうにしなければならないというふうに思っております。
 それから、別に2年後に始まるという話ではなく、常日頃から、調停委員や裁判所の裁判官は様々な共同した研修であるとか研究というものを続けておりますので、これからも私どもは、やはりDVに対する理解であるとか、様々なケースについてのケース研究というものを、調停委員も、それから調査官も裁判官も続けております。そういう中で法案の施行を迎えるということについては、十分に対応していくというふうには思っております。


059 道下大樹

○道下委員
 4名の参考人の皆様、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。


PDFファイル

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?