見出し画像

自由民主党 柴山昌彦 衆議院議員 参考人質疑第213回国会 衆議院 法務委員会 第3号 令和6年4月3日


011 柴山昌彦

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 冒頭、本日九時前、宮古、八重山地方で発生した地震により、沖縄本島を含め、三メートルの津波警報が出ており、一部では既に津波が到達しているようです。政府には、情報収集を含め、大きな被害が出ないよう万全の体制で対応してもらいたいと切に要望いたします。
 それでは、参考人への質疑に入らせていただきます。本日は、御出席をいただき、本当にありがとうございます。
 まず、斉藤参考人にお話をお伺いします。
 改正法八百十九条では、裁判所が離婚後単独親権とする場合に、父母の一方が他方からDVを受けるおそれがあることを要素の一つとして掲げており、かつ、これは精神的DVを含むとされていますけれども、これについてどう評価されますか。


012 斉藤幸子

○斉藤参考人
 裁判所がちゃんと判断してくれるとは思いません。


013 柴山昌彦

○柴山委員
 この後、午後に参考人として来られる北村晴男弁護士は、新聞のコラムで、子に暴力を振るう親は親権を失って当然だが、母親に対する父親からのDVのおそれを理由とするのはナンセンスであると主張されておりますけれども、この主張についてはどう思われますか。


014 斉藤幸子

○斉藤参考人
 失礼ながら、DVの種類を存じ上げないからそのような発言になっていると思います。


015 柴山昌彦

○柴山委員
 犬伏参考人にお伺いします。
 今も斉藤参考人からお話があったように、DVのみならず、またそのおそれについて裁判所は的確に判断できないんじゃないかという懸念があります。そして、一方、逆の立場からすれば、このDVのおそれという文言があると、証拠がなくても片方の言い分のみでそれが認められる可能性が否定できないのではないかとも主張されております。また、新しいパートナーと一緒になって、そのパートナーから子供が虐待をされ、そして別居親がそういった方々をしっかりとチェックをできないのではないか、こういうことも懸念をされております。
 果たして裁判所は、今お話があったようなそれぞれのケースについて適切な判断をしていくことができるんでしょうか。
 先ほど、犬伏参考人は、裁判所の人的、物的整備、充実についてはお話をされておりましたけれども、審理のプロセスですとか、あるいは裁判の質の向上、証拠の収集等についてどのように改善をすればよいのか、また、このDVのおそれという文言はこのままでいいのか、それぞれ御意見をお伺いしたいと思います。


016 犬伏由子

○犬伏参考人
 多岐にわたる御質問、ありがとうございました。
 私自身は裁判所を代表するという立場ではございませんけれども、今、この法案が成立するということに向けて、家庭裁判所としてもかなり、この法案に基づく、今御指摘のような、特に単独親権にすべき事案というものについては慎重に検討をされていることと思います。
 確かに、今の状況におきましては、先ほど言いましたように、リスクアセスメントであるとか、DV、児童虐待について十分にそれを判断するというところまでスクリーニングができているかというと、まだそこまでいっていないかもしれません。
 しかしながら、私ども調停委員としましては、事件配填の前に、そういった危険があるということについては十分に、一応、進行についての照会等が出てきておりますので、この事案についてはDVが主張されている、あるいは児童虐待のおそれがあるというような事件につきましては、それから、精神的な課題を抱えている人たちも実は今増えております。したがいまして、医務室技官の立会いであるとか調査官の立会いというのが、既に事件の当初から、調停事件において、調査官及び医務室技官の配填というものがございます。
 もちろん、過酷なDV事案というのは調停にはなじまないということはございますので、私どもは、調停にもなじまないケースというものをやはりきちんと峻別すべきだというふうに思っておりますし、そういう事案につきましては調停なしに、監護者指定だったら審判、それから離婚事件だと訴訟というふうになるわけですけれども、家庭裁判所としても、今後慎重に、やはりDV事案につきまして、当事者が非常に不幸な目に遭わないような運用というものに心がけて、今、家庭裁判所としては努力しているというふうにお聞きしております。
 今後の運用につきましては、家庭裁判所というのは非常に裁量性、柔軟性があるというメリットもありますけれども、やはり裁判所によって違うとか調停委員によって違うといったようなことで当事者が非常に傷つくということは避けるべきだと思いますので、調停委員に対する研修というものも十分行わなければいけない。
 今、調停委員というのは非常にいろいろ批判も受ける立場でございますので、研修であるとかDVに対する理解というのはかなり丁寧に、私どもも研修を受けるということですし、調停委員が自主的に研修を行っている。最近の調停委員さんは非常に真面目でございまして、自主研修というものを非常に行っており、外部の人たちのお話を聞くというような形で、私どもも、この法案が成立することになるということで、内部の研修であるとか家庭裁判所の研修によって、本当に十分にこの法案を前提とした努力というものを重ねなければならないというふうに今から心しているところです。
 まだまだ家庭裁判所の内部事情というものを私自身が深く存じ上げない立場でございますけれども、家庭裁判所としては、皆様の期待に応えるべく努力して、研修を受ける、それも外部の方々からいろいろDV被害のお話も聞くという形で努力していくというふうに私どもも心しているところでございます。


017 柴山昌彦

○柴山委員
 ありがとうございます。
 裁判官そして調停委員も含めて、仮にこの法律が成立をした場合にしっかりとした研修を行うということ、それから、調停プロセスには必ずしもなじまないような案件もあるので、しっかりとその見極めをしなければいけないということなどについて御説明をいただきました。
 共同親権導入に慎重な方々は、単独親権制度の現行法の下でも別居親との交流は確保できていると主張されています。しかし、令和三年度全国ひとり親世帯等調査結果によりますと、我が国で月二回以上の親子交流ができているのは、別居父について約四・二%、そして別居母については約一一・四%にすぎません。一方、例えば共同親権国のイギリスでは、月二回以上の交流は七一・九%にも上っています。
 今回の法改正によって、先ほど裁判所の期日の問題についても御指摘をしてくださいましたけれども、本当に子の利益にふさわしいケースで親子交流の推進というものが担保できるのかということについて、犬伏参考人にいま一度お話を伺いたいというふうに思います。


018 犬伏由子

○犬伏参考人
 私どもは、調停においては非常に当事者の声、当事者の主張を双方から丁寧に聞くということをまず心がけていて、調停委員としては傾聴というものを尊重しております。
 そういう中で、子供さんがどういう状況にあるのか、そしてやはり親子の交流というものの重要性というものを考えて、丁寧に丁寧に、面会交流がどういう形であればできるのか、できないという心情についてはどうなのかということを丁寧に聞いております。
 その結果、若干調停期日を重ねるということはあろうかと思いますけれども、調停の中で、調停で合意が形成する前の段階で試行的に面会交流をできないかというようなことも実施しておりますので、調停の期日が入らないとか、回を重ねなければいけないということによって親子の交流が長期間できなくなるということについては、私どもも心がけて、できるだけ調停の期日間で試行的にやっていただけないか。それは、ケース、ケースによって、やれるかやれないかというものを十分に見極めながら、調停委員が働きかけたり、当事者の代理人双方が期日間に具体的な面会交流をセッティングするというようなことで、できる限り、当該事案にふさわしい形で、私どもは、期日間にも面会交流ができるような働きかけというものをしております。
 決して、合意が成立できない、あるいは期日がなかなか入らないということで面会交流が行われないというようなことがないように配慮しております。
 先日も、手紙をお子さんが書いて、パパに会いたいというようなお子さんの手紙もありましたので、そういう心情はやはり大事にしたいと思いますし、調査官調査が入って、やはり調停での合意が成立する前に面会交流を実施できないかというような働きかけをしております。
 そのために、やはり庁舎内に試行面会ができるような部屋を確保していただきたい。しばらく前に、裁判所が、なかなか面会交流室、難しいんだよね、日比谷公園でやったらどうかというふうに言われたような例もありますので、庁舎内でできない場合も、支援団体もございますし、面会交流について、できる限り、可能なケースにおいては、長期にわたって断絶しないような努力というのを調停委員もしているというところです。
 お答えになったかどうか分かりませんけれども、以上です。


019 柴山昌彦

○柴山委員
 今回、試行面会について明文化されましたので、そういったこともしっかりと実践してほしいというふうに思います。
 続いて、しばはし参考人にお伺いします。
 養育費の支払いも含め、円滑な共同養育を実現するために、仲介機関、ADRなどの役割が大きいという主張はよく分かりました。しかし、先ほどデータでもあったように、親権を行う子がいるのに夫婦が離婚する件数は年間約十万件にも上るわけです。未婚の一人親の子供が十六万人に上るというデータもあります。果たして、そういったADRなど、十分ニーズに応えられるんでしょうか。自治体窓口や法テラスとか児童相談所のような役割も大きくなるというふうに考えるんですけれども、こういったニーズに本当に的確にこれから対応できるのかということについてお話を伺いたいと思います。


020 しばはし聡子

○しばはし参考人
 御質問いただきまして、ありがとうございます。
 ADRの認証団体、法務省での認証を受けた団体が行うことができるものになります。我々も、その中でも、離婚の担当になるのか、不動産なのかとか、いろんなADRの担当というのがあると思うんですけれども、結論から言うと、まだまだ団体としては足りないのではないかなと思います。
 ただし、弁護士会でも、弁護士のお立場の方というのは、ADRといいますか、仲裁を行うことができるというふうにはお聞きをしています。ADRを普及した上で、これは、私が普及というよりも、法務省さんになってくるのかと思うんですけれども、ADRという方法があるということをまず認知させていくこと、そしてADRという方法を行っていこうという弁護士の方が増えていくことということの取組になっていくのではないかなと思います。
 現状でいいますと、我々のところにも多く御相談者が見えていますが、今後、ADRをより使われたいという方の受入先ということがまだまだ足りていないというふうには考えておるところではございます。
 御回答になっていますでしょうか。


021 柴山昌彦

○柴山委員
 それと、しばはし参考人がおっしゃったことで、私、ちょっと重要だなと思った点が、司法改革のあるべき姿として、まずは、条件の取決めよりも先に、別居直後から速やかに親子交流をしていくべきだという御主張をされたかと思うんです。
 先ほど、事態の悪化を避けるためにも、まずは面会交流を、もちろんできる場合に限ってだと思いますけれども、速やかに行っていくことが必要だというふうにおっしゃったんですけれども、どのような根拠というか視点でそういう主張をされているのかということをいま一度教えてください。


022 しばはし聡子

○しばはし参考人
 御質問いただきまして、ありがとうございます。
 我々、面会交流の支援も行っておりましたり、同居親の方、別居親の方それぞれの個別の相談なども受けている中、特にやはり葛藤が上がるのが、別居親の方が長期にわたってなかなか子供と会えない、それが、面会交流調停を申し立てたとて、そこから、では実際何回やっていきましょうみたいなことを、月一回ないしは二か月に一回という調停の中で牛歩で決まっていく。あっという間に半年ぐらいたっていく。その間に、お金のことですとか、あと、あなたが悪いから離婚しましょうみたいなことを相手から一方的に言われていく。それで、より葛藤が上がっていき、だったら離婚をしないみたいになっていくケースが非常に多いです。離婚したいという同居親に対して、子供に会えないから離婚しないというような対立構造になっていくわけなんですよね。
 なぜ子供に会えないから離婚しないとおっしゃるのかというと、やはり子供に会えるという担保がない、不安だから、離婚、親権を失ってしまうと会えなくなってしまうのではないかというような、不安になられている方が多くいらっしゃいます。それが、一度でもといいますか、割と初期に会える、そして定期的に会える、相手も会わせる意思があるということがある程度見えてくれば、きちんと子供と交流ができるのであれば、離婚したくないけれども、離婚という選択肢もあるのかなということで、だんだん葛藤が下がっていきやすくなるというケースはよく見ております。
 一方で、争いの姿勢で相手を責めれば責めるほど相手側は逃げていくというような法則もありますので、別居親の方が葛藤が下がった方が相手も会わせやすくなる、鶏と卵ではないですけれども。というところからも、初期に子供との交流をしていくことによって、お互いの葛藤が下がりやすくなるというよき循環が巡ってくるのではないかなというふうに感じております。


023 柴山昌彦

○柴山委員
 山口参考人にお伺いします。
 先ほど、アメリカ、また韓国の事例について犬伏参考人からも御紹介があったんですけれども、離婚にはもちろんいろいろなケースがあるんですけれども、離婚するに当たって、養育計画書を作る、あるいは、そのための講座、カウンセリングを受けさせる、これを要件化するということ、今回の法改正では、本当にいろいろなケースがあるということで見送られたんですけれども、こうした制度を将来日本に導入するために何が必要だと考えられますか。


024 山口亮子

○山口参考人
 御質問いただき、ありがとうございます。
 最後に述べましたが、アメリカでも養育計画書が発達していったのは、共同監護の法制ができて十年たってからということですので、徐々に広がっていったということで、やはり探り探りだったと思います。
 しかし、どうしてそういうことを決めなければいけないのかというと、監護権や面会交流など画一的なものではなく、一緒にどうやって子供を育てていくか、やはり中身が重要なことだと思いますので、その中身を実行に移すために、それはやはり計画書という文書で、協議をし、合意をし、そしてそれを実行していく、そういうことが重要なんだ、そういうことが徐々に分かってきた。
 私たちは、そういう前例がありますので、日本でもこれを取り入れれば、共同親権を選択した家族にとっては非常に有益なものになると思います。
 それをどういうふうに広げていくかですが、それは、子供にとってどういう教育を親が責任を持って行うのが子の利益にかなうのかといった、やはり子供の利益観ですとか権利観を国民に周知し、例外はありますけれども、そういう共通観念の下に従って進めていくということが重要になると思いますので、やはり子供の利益とは何なのかということの議論、そして日本全体が考える基準というものを考えていくべきだと思います。
 以上です。


025 柴山昌彦

○柴山委員
 時間なんですが、最後にどうしても一点だけお伺いしたいことがございます。
 山口参考人、同じくアメリカでは、一方親による子供の連れ去りというものは、正当な理由がないものであれば、刑事事件、民事事件とも大変厳しく制限をされております。また、委員からは先ほど、今回の改正法案八百二十四条の三で、監護権、特に居所指定権の濫用についての懸念もお示しをいただきました。
 アメリカの裁判所であれば、裁判所が認めた面会交流や監護権や養育費などを……


026 武部新

○武部委員長
 時間が超過しておりますので、端的にお願いします。


027 柴山昌彦

○柴山委員
 はい。無視すると、裁判所侮辱罪が適用されるんですけれども、この担保の仕組みについて最後にお伺いしたいというふうに思います。


028 武部新

○武部委員長
 山口参考人、端的にお願いいたします。


029 山口亮子

○山口参考人
 最後の裁判所侮辱について、決められたことを守らなければ、裁判所侮辱として課金、拘留ができるということで、刑罰をもって履行、執行を担保するということになっております。決められたことは守らなければいけないという制度です。
 以上です。


030 柴山昌彦

○柴山委員
 ありがとうございました。


PDFダウンロード

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?