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括弧の前後2センチからの旅立ち

ことばは宇宙です。そのことばを使う民族が考えていることをどこまでも的確に表現しようとつねに拡張を続ける宇宙です。各個別言語はそれぞれが一つの宇宙です。日本語には日本語の宇宙があり、英語には英語の宇宙があります。私たちことばの教師は、学習者に最小限の労力でことばが使えこなせるような環境を整備しようと日々努力を続けています。しかし、私たちの生きている宇宙はそう簡単には征服できません。

一方、そうした宇宙に思いを巡らすこともなく、閉ざされた世界でしかことばに向き合おうとしない人もいます。単語集や文法問題集を通してしかことばに触れていない人たちです。宇宙との接触を断ち、断片化したいわば屍のような「ことば」がそこには並んでいます。これは問題集を作った人たちの意図したことではありません。問題集を解く側で、括弧の前後2センチ程度の閉ざされた世界で「ことば」を捉えようとしているのです。

大学受験で仕方なく英文法の学習を始めたという人が多いようです。文法の学習は、何となく怖い。そんな印象を持っている人も多いでしょう。そりゃそうです。宇宙ですから。不用意に身をゆだねれば吹き飛ばされてしまいます。実際そういった不用意な学習空間は珍しいものではありません。小テストの嵐があちこちに吹き荒れています。しかし、命綱をたぐり寄せながら、一歩一歩踏みしめながらことばという宇宙を眺めれば、意外に美しく、意外に興味深いと感じられるかもしれません。

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