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NHK・WDRプロジェクトの脚本開発への想いが本気すぎた

1.  WDRプロジェクトのメンバー募集がエモい!


NHK WDRプロジェクトメンバー募集より

WDR(Writers' Development Room)とは
NHKで新たに立ち上げる「脚本開発に特化したチーム」

脚本開発チームWDRプロジェクト「WDRプロジェクトとは」より抜粋

最大10名をメンバーとして選抜し、それぞれにオリジナルの企画で脚本を開発してもらいます。現段階で映像化・放送することが確約されているわけではありませんが、シリーズドラマとして放送することを目指し執筆活動します。

脚本開発チームWDRプロジェクト「WDRプロジェクトとは」より抜粋


 すごいプロジェクトの募集が出た。
 何が凄いかというと、10人の脚本家が最強のカードを出し合って、ひとつの作品を制作する脚本開発に特化したチームを作ちゃおう! というNHKの試みのグローバルみが!

 WDRプロジェクトでは、企画の段階から10人の脚本家が各自のアイデアを出し合い、練り上げる。ブレスト相手はディレクターでもプロデューサーでもなく同じ課題に挑む脚本家たち。そこで得たものをフル起動させて、脚本家全員が各自で第1話を執筆。その中で最も優れた第1話が採択され映像化する。

 本プロジェクトのディレクターである保坂氏のインタビュー記事によると、

海外では、複数の脚本家が『ライターズルーム』に集い、一つのドラマシリーズを共同執筆するのが一般的。
ー(略)ーアメリカでは、例えば50人の脚本家から第1話の脚本を買い、そこから選抜した10本を映像化。さらにその中から出来の良い5本だけを『パイロット版』として放送し、評判が良かった1本だけをシリーズ化する方法をとっています。

脚本開発チーム「WDRプロジェクト」立ち上げメンバーに独占インタビュー!


 アメリカではひとつのドラマシリーズに50人の脚本家のアイデアが詰まっているというのだから、全方向で隙無しになるのは納得なわけだ。そんな海外文化を取り入れるべくNHKが動いた。
 世界と渡り合えるところまで脚本を引き上げようとする情熱が募集要項からビシビシ伝わるWDRプロジェクト。エモい。エモすぎ。

 例えば、女性脚本家だけでは手が届かない男性視点に、別の脚本家がテコ入れするというのは、今までもあったお話だが、10人って数字は規格外すぎ。

2. 募集要項も規格外!

応募資格
・2022年10月から2023年5月まで、週1・2回の会議に参加して脚本を提出し続けることが可能な方。
・学歴・年齢不問。
・ドラマ業界ですでに仕事をされている方はもちろん、漫画・コント・小説・演劇・映画・アニメ・ゲームなどの分野で物語を作ってきた方、あるいは経験はなくても物語を作ることを生業にしたい方。

募集人数
最大10名

課題脚本
最長で15ページのオリジナル脚本をご提出ください。

2022年6月下旬にHPで受付を始めます。
締め切りは2022年7月31日23:59です。

脚本開発チームWDRプロジェクト「募集要項」より抜粋


 WDRプロジェクト募集要項では、「最長で15 ページのオリジナル脚本をご提出ください」とある。つまり15分間の脚本で審査が行われるということ。(脚本の長さの表記が見つけられなかったため、通常の20字×20行=1枚と思われる)
 例えば、映画脚本のコンテストとして有名な城戸賞の募集は80枚〜120枚、フジテレビのヤングシナリオ大賞は50枚〜60枚である。
 他の賞と比べてもボリュームが少ないため、書き切るハードルが低くなり多くの人が挑戦しやすい。

 しかもこの課題「物語の始まりでも途中でも構わない、思わず一気見したくなる、とにかく続きが気になることを重視する」とある。(詳しくは募集要項をご覧ください)
 これはつまるところ完成原稿じゃなくていいから、自分のオリジナリティを発揮しているシーンで、アッと言わせてくれよ! お前の最高が見たい! ということだと理解した。
 台詞においては誰にも負けない!とか、キャラ作りなら任せろ!とか、誰にも思い付かない発想ができる!という個々の強みを活かせるわけで、それこそ多種多様な脚本家たちを一つの壺に押し込んだら……、未だかつてない完成度の高い脚本が産まれてくる想像しかできない。

 WEBTOONも制作者が集まって、ひとつの作品を作るという点でいえばそう。
 1人の漫画家が作品の全てを引き受けるのではなく、漫画制作を分業化をすることで、ハイクオリティな縦読みコミックを作り出すことに成功している。
 これはドラマ制作を、俳優、監督、カメラマンなどに分業化するのと同様なシステムだが、その中の脚本を特化させ、脚本チーム全体でクオリティを上げようとしていることからも、NHKのWDRプロジェクトへの本気度が伝わる。

 さらに募集要項には「経験はなくても物語を作ることを生業としたい方」とある。どんなジャンルからでもウェルカムな精神。門戸の解放具合も規格外だった!

追記:「WDRプロジェクト」立ち上げメンバーに独占インタビュー!の記事

脚本開発チーム「WDRプロジェクト」立ち上げメンバーに独占インタビュー! | LOCATION JAPAN.net ロケ地から、日本を元気に!ロケーションジャパン

 「脚本家が切磋琢磨して、才能を磨き合える業界にしたい」というチーム発足メンバーの方のお言葉通り、脚本に対する想いが溢れたインタビュー記事なので、ぜひとも読んでいただきたい。

3. WDRプロジェクト、TapNovelの「1話でエントリーする長編ゲーム小説大賞」の審査項目と似てるのだが。


第一話でエントリーする長編ゲーム小説大賞 BY TapNovel より

 WDRプロジェクトの募集要項を読んでいて、あれ? これって、どこかで目にしたことがあるなあ、と思ったら「TapNovel」の「1話でエントリーする長編ゲーム小説大賞」の審査項目だった。

審査項目
イントロダクションに惹かれるものがあるか(≒その作品を読みたいと思うか)
主人公の行動線は明確か(≒第1話でどんな話なのか理解できるか)
主人公に感情移入できるか(≒主人公がやろうとすることに共感できるか)
引きが作れているか(≒第2話を読みたいと思うか)

「第1話でエントリーする長編ゲーム大賞」応募要項より抜粋

 こちらのコンテストは長編の第1話で審査がされるもの。
 審査項目にあるように、第1話で、引きが作れている作品であるかが勝敗の鍵を握る。WDRプロジェクトの課題脚本でも「続きが気になること」と明記されている通り、ゲーム小説でも脚本でも引きの重要度を感じる
 これは音楽のイントロがどんどん短くなっている理由と同じで、ひとつの作品に対して消費者が費やす時間が年々短くなっていることが要因だ。これはWEB小説においても同様の流れなので、第1話の引きの重要さは否めない。

 今は無限に作品があり、どの作品に時間を割くかを読者が取捨選択できる。
 WEB小説は無料で読めるという手軽さも、その流れを作る要因になっていると考えられる。

 まず購入した作品だと「元手を取るためにも最後まで読み切ろう!」とマインドセットされるから読了率は上がる。しかし無料なら気に食わない展開になれば、無理に読み進める必要がないので、いつでも抜けられる。
 なぜなら無駄なことに時間を払う必要はないからだ。

 筆者の作品でも第1話で(酷い時は1ページ目で)読者は続きを読むかどうかを決めているのが見える。4話、5話と続けば、そこから先は固定の読者がつき大体の読者は最後まで読んでくれる。
 ようは第1話で提示した世界が、読者の想像していた内容と異なれば離れていくし、それを超えていれば「ほうほう? それで次はどうするのだね?」と続きを読もうと残ってくれる。これは毎話ごとの読者との駆け引きでもあるので、こちらの罠に絡みとれたなと、ほくそ笑んでいても、次の話で魅力的な引きが作れていなければ、逃げられることも当然ある。話数が増えれば徐々に低下していくものだが、読者との対戦を楽しむのもWEB小説で連載する醍醐味だったりする。

 ただやはりWEB小説でもドラマでも、第1話は何より大切にしなくてはならない存在だ。読者は第1話を必ず通ってくるわけで、(いきなり最終話を読むというチートを使う読者様もいらっしゃるが)読者へのPRする場所だと思って何より時間をかけたい。
 映画だって、第1作目が最高に面白いのだ。

 ということで、WDRプロジェクトで選ばれた10名の脚本家によって、どんな作品が生み出されるのか、今からワクワクしている。数年後には世界中から「あのWDRプロジェクトの脚本みたいな面白い脚本が欲しいんだ!」と言わせていることだろう。

4. 追記: TapNovel・「長編コンテスト対策講座」 


TapNovel ・「長編コンテスト対策講座」編集長

 前述した長編コンテストの審査項目の詳細として、TapNovel の「長編コンテスト対策講座」というタップノベル作品がある。これはタップノベルのコンテストで審査をしている編集長自らが書いているもので、より詳細な審査項目を丁寧に説明している。
 TapNovelのコンテストに応募する人が熟読するのはもちろん、WDRプロジェクトにも通ずる審査基準が記されていると思ったので、参考までに紹介しておいた。無料で読めるし、作品作りにおいてもタメになるので、おすすめだ。


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