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M-1グランプリ2022予選動画感想 準々決勝③

 M-1グランプリは準決勝進出者が決まりまして、現在は例年通り、ワイルドカードを決めるために準々決勝で敗れた方々のネタが公開されています。

 3回戦のネタも感想を書いてきたんだから、準々決勝もやるしかない。そういう、誰にも求められていない義務感でまた感想を書いて参ります。

 何かのご参考になったり、暇潰しになったりしてくだされば、もう十二分に嬉しい、そんな状態です。今回はコンビ名の50音順に少しずつ感想を書いております。よろしくお願いします。

1.豪快キャプテン

 暴走族を注意するネタです。
 基本的なテーマは王道で、それをベースに「何らかの音が小さい」「すぐに寄付をする」の2パートで展開する構成となっています。あとは「大きな声で独り言を言っているように聞こえる」という要素を繰り返してみたり、伏線を回収してみたりと小技もきかせて少しでも多くの笑いを得ようとする意志が伝わって来るかのようです。

2.コットン

 街ブラロケをしたら変な人がいっぱい出てくるネタです。
 街ブラロケを進めるにしたがって異なる人物が現れ、ひと悶着ずつ起こしていく形になっておりまして、この形式自体はオーソドックスではあります。ただ、ボケのキャラクターの使い分けが巧みで、演じ分けがキッチリしているため、自然と次の人へ移ったことが見て取れるようになっています。また、ボケの笑いどころがハッキリしているため、シンプルなワードで素早くバシッと決めるツッコミと非常に相性がよくなっています。

3.コマンダンテ

 服屋で店員に間違われて声をかけられるんですが、結局店員をやってしまうネタです。
 序盤で「店員に間違われて気まずい思いをした。今後も店員と間違われることがあるかもしれないから練習させてほしい」という微妙な表現を使い、観客に「店員に間違われた時に気まずくならないよう店員ではないと言うのだろう」と誤解をさせておいたことが非常に重要なネタです。観客の意識をうまく誘導させておくことで、店員のフリをする様子で笑いが起きるようになっています。

4.コロコロチキチキペッパーズ

 熟女SMに行くネタです。
 「ことあるごとにボケが鞭でしばくんですが、熟女っぽい言動の時のみ鞭が効く」というシステムで最後まで駆け抜けた形になっています。基本的な活用として熟女の具体的な言動を用いてゆき、中盤以降は熟女でない人の特徴を混ぜて揺さぶりをかけることでウケを狙っていっています。

5.さすらいラビー

 マッチングアプリで出会った男女のネタです。
 男性役がキモいキャラで暴れる形がメインとなっています。ただ単にキモいだけでなく、単純に失礼な言動をしたり、身長差を使った方式も織り交ぜたりと、多彩な方法でウケを狙っており、話の流れも自然でスピード感のある漫才に仕上がっています。

6.サツキ

 言葉の力について主張するネタです。
 怪しい宗教家のような言動のボケが似たようなワードをオチとして用いる形がメインとなっています。オチのタイミングや言葉は観客に予測されやすくなりますが、敢えてそれを狙い、中盤になると決められたオチが出てくるのを心待ちにする観客もいるような状態を目指す形態です。ただ、オチのワードを少しズラす裏切りも用いているという、意外と一筋縄ではいかない構成の漫才にもなっています。

7.三遊間

 車の中から張り込みをする刑事のネタです。
 車内のあるあるネタをひたすら攻める形となっています。一言であるあると申しましても、「よくあるけどあまり誰も言っていない」という、良いあるあるネタの条件を満たしています。掘り下げ方も適切で、刑事のコントともそれなりにうまく絡めています。

8.シシガシラ

 自身に関するクイズを出していくネタです。
 それなりの賞金が出ると知った途端に緊張の度合いが上がってゆくという、言ってしまえばただそれだけのネタではあるんですが、見せ方が上手なために全然笑えるようになっています。序盤をフリの時間と割り切っているがために、終盤の盛り上がりに繋がっていると思われます。

9.10億円

 渋谷についていろいろ教えるネタです。
 渋谷にいるいろんな人をちょっとおかしくして登場させ、それをいじりつつ渋谷などの偏見を織り交ぜてゆく形となっています。変な人がいろいろ登場してちょっとずつ変な言動をしてゆくというオーソドックスな形をベースにしてはいますが、ボケとツッコミが互いに説明しすぎず、切り口も様々でどれもかなりひねりが効いています。

10.深海魚

 様々なもののギリギリ成り立っているところを狙うネタです。
 「何のギリギリを狙うか」「ギリギリをどう言い表すか」の2点が勝負所であり、結果としてかなりの高水準を保ったままやりきっています。繰り返し感を避けるために後半はストーリー性を持たせるなどの変化をつけていますが、あくまで「ギリギリ」を軸とした運びとなっています。

11.素敵じゃないか

 悩み相談を聞きながらいらんことをするネタです。
 ボケがするいらんことではなく、その後処理が本丸という非常に独特なシステムとなっています。細かいところまで変にこだわっている様子を見せてウケを狙うことに成功しており、敢えてストーリー性を皆無にすることで分かりやすい形に仕上げています。

12.スパイク

 ネタ中に不自然なアピールをしていくネタです。
 不自然なアピールを中心に展開していき、アピールが終わると特定のセリフ、特定のポーズで一区切りつける形になっています。形式は独特ですが、あざといアピールの内容自体は比較的オーソドックス寄りです。

13.セルライトスパ

 互いの得意分野で勝負するネタです。
 カラオケvs相撲という異種格闘技戦、いや、格闘技の対決なのかもよく分からない勝負がメインとなっています。舞台袖に消えたり、そこからマイクの前まで戻ったりと、時間を贅沢に使わざるを得ない形式となっていますけれども、一つひとつの笑いが大きいため、舞台に戻って来るまでの時間を客席が落ち着くまでの時間としても活用しているように見受けられます。

14.大仰天

 漫画みたいな恋愛をするため、妥協して自動車学校を舞台にするネタです。
 基本はベタな学園恋愛と自動車学校という舞台とのミスマッチを笑ってもらう形ですが、序盤からきちんとストーリー展開もしており、終盤の伏線回収でそれが花開いた感じになっています。

15.大自然

 群から離れた野生動物を保護して群に戻すネタです。
 ツッコミのしゃべりがゆっくりなため、必然的にツッコむ言葉の前半がフリ、後半がオチのような役割を果たしているのが特徴的です。後半にボケがコントから相方を切り離してひとりコントに入り、ツッコミがそれに戸惑うという部分もまた大きな特徴となっています。ふたりでコントする状態と、ツッコミがコントの外側からツッコんでいく状態はどちらも漫才に多く存在する形式ですが、それを途中で変更して、更にそれを指摘するのは珍しいと考えられます。

 今回の感想は以上です。ではまた、

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