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ラッパーと表面積

 いろんな方が言ってますが、アイデアは机でウンウン唸っている時よりも、全く別のことをしてる時にいきなりポンと出てくる場合のほうが多いようです。そして、それをその場でサッとメモって、仕事なり何なりに活かす。

 私、週に数回のペースでジョギングをしているんですが、そういう時に限ってアイデアがポンと出るんです。しかし、メモ帳とペンを持って走るわけにはいかない。必然的に身体でどうにかする羽目になります。

 とりあえず、思いついたアイデアの数だけ指を立てて走るようにしました。ふたつ思いついた時は2本の指を立てて走る。更に違うジャンルのものを思いついた時は、逆の手の指を立てることにしました。例えば、右手は仕事のアイデア、左手は趣味のアイデア、という風にする。

 でも、それだけだと自宅へ戻るまでにどんなアイデアを思いついたのか忘れてしまうという事故が多発しました。これじゃあ、単に指を立てて走っている人になってしまう。しょうがないので、思いついたアイデアを頭の中でリフレインすることにしました。そのうち、それじゃ不安だということで、思いついたアイデアを定期的に呟くようになりました。お陰で、思いついたアイデアを無事に家へ持って帰られる確率が圧倒的に増えました。

 両手の指を数本立てて、何かブツブツ言っている。変なラッパーみたいな感じでジョギングしている人がいたら、十中八九、私だと思ってください。

 さて、その日もいつものようにジョギングをしていたのですが、なぜか左手だけやたらと冷えるんです。確かにその日は冬で寒かったのですが、運動による熱で火照る右手とは全然違います。ジョギングは左右同じように手を動かしますから、環境の差というのは考えづらい。どういうことだろう。なんかそういう病気なのか。いろいろ考えた結果、気づきました。その日はジョギングの序盤でアイデアを思いついたため、左手の指をずっと立てたまま走ってたんです。一方の右手は握ったままでした。

 「表面積」という考え方があります。文字通り、表面の面積を言います。もう少しザックリと説明すると、表面を平らにして考えた時の面積を意味しています。

 表面積は凹凸が少ないほど小さくなります。つまり、同じ体積で最も表面積が小さい形は球なんです。だから、形状として非常に安定しており、無重力空間で液体は球になるのだそうです。

 表面積が大きいと、お隣さんと接する部分が大きい。逆に小さいと、接する部分は小さい。これが重要なんです。

 ジョギングしていた私の手の場合、お隣さんは冬の冷たい空気です。しかも、ジョギング中はずっと北風がビュービュー当たる。そして、手は握りこぶしの状態よりも指を立てたほうが表面積は大きくなる。表面積が大きいということは、北風に当たる部分が大きい。だから手が冷たくなったのではないか。

 試しに、手の形を左右逆にしました。右手の指を立て、左手は握りこぶしにして走る。こうも違うのかというくらい、左手が暖まるんです。逆に右手は立てた指を中心に体温が冷たい外気に吸い取られてゆく。仮説が確信に変わった瞬間でした。

 これはnoteに書こうと思い、新たに指を1本立てました。その分、手は急速に冷えてゆきました。

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