M-1グランプリ2022予選動画感想 準々決勝④
M-1グランプリは準決勝進出者が決まりまして、現在は例年通り、ワイルドカードを決めるために準々決勝で敗れた方々のネタが公開されています。
3回戦のネタも感想を書いてきたんだから、準々決勝もやるしかない。そういう、誰にも求められていない義務感でまた感想を書いて参ります。
何かのご参考になったり、暇潰しになったりしてくだされば、もう十二分に嬉しい、そんな状態です。今回はコンビ名の50音順に少しずつ感想を書いております。よろしくお願いします。
1.ダイタク
肝試しに行った時の話をしてたちまち揉め始めるネタです。
ボケとツッコミがそれぞれの証言をひとりコントで表現し、最後はその両コントを合体して大きなオチにする構成になっています。この構成だとふたつのひとりコントが単なるフリの役割だけになってしまうため、笑いどころを作る目的で、コントに入っていないほうが野次を入れるなどしています。
2.タイムキーパー
副業でアシカショーをするネタです。
片方だけコントをして、ツッコミがコントの外側にいる形式はよくある形式ですし、相方がコントを拒否してひとりでコントをするという形もないわけではありませんが、冒頭の発言を伏線に、ツッコミが徐々にコントへ入るよう誘導するシステムは珍しいと思われます。余計な伏線を張らず、アシカを目立たせるなどの気配りも印象的です。
3.滝音
おススメのメイドカフェを紹介するネタです。
ボケの発言を補完するようにツッコむ際、ツッコミが独自のワードを非常によく用いるという特徴があります。その独自ワードも余計な説明を省くために用いる場合が多く、観客へ感覚的に意味を伝える役割を果たしています。
4.たくろう
一般人の不倫をターゲットにした週刊誌の見出しを考えるネタです。
例えを敢えて誤解してみせたり、安易に使われがちな単語をいじったりと、例え話の抽象的な部分をうまく利用した漫才となっています。相手の例えを明らかに越えようとしていたり、急な成長を見せたりと、ふたりの会話に具体的な枠組みを設定することで、抽象的過ぎて意味不明になることを防いでいます。
5.タチマチ
相方が可愛がっている犬に対抗して金魚を可愛がろうとするネタです。
相方に対抗するあまり変な主張をするネタの一種と思われます。ただし、特にボケの口調が穏やかなため、そこまで喧嘩腰の会話ではなく、妙に冷静なまま話が進んで行っています。
6.ダブルアート
ヤバい人に話しかけられて対応するネタです。
コントへ入る前にする明らかにおかしいツッコミと、ヤバい人にもっとヤバい対応をするという2つがネタのメインとなっています。要は全体的にボケがヤバい人に扮するわけですけれども、お笑いのネタなんてヤバいやつの宝庫なわけです。そこをもう「とにかくヤバいやつになる」という真正面からの一点突破で挑んでいるところが印象深いネタです。
7.ダブルヒガシ
中年男性と飲むことができるスナックのネタです。
オリジナルで作った変なお店の変なところを笑ってもらう形です。ボケが扮する関西系中年男性の演技がこのネタの魅力であり、最大の笑いどころとなっているため、構成や設定はボケの演技を活かすために下支えする役割を果たしています。
8.TEAM BANANA
海に連れていきたい芸能人にランクインしたTUBEと実際に海に行った場合を想像するネタです。
適当なランキングに敢えてメスを入れ、いじっていく形となっています。意地悪な視点に終始していますが、どこか共感を呼ぶようなものを選んでいるために笑えるという、毒舌の王道とも言えるネタだと考えられます。
9.チェリー大作戦
飼ってる犬と公園で遊ぶ想像をするネタです。
漫才内のコントでは道具を用いないため、往々にして観客の想像力に頼った演技で何とかするわけですが、それをうまく使ってボケの腹積もりで飼っていると認識したりしなかったりすることで笑いを誘うという、これまで様々な芸人によってされてきたコントをフリにしたような形になっています。最終的には飼ってる犬を雑に大量生産するなど発想をうまく飛ばしており、やれることを大体やったような感じになっています。
10.ツートライブ
知らない芸能人のゴシップを話すネタです。
知らない芸能人のよく分からない言動をゴシップとして紹介し、それにツッコんでいく形となっています。時々実在する芸能人を入れたり、ちょっと際どい表現を使ったりして話に変化をつけています。
11.鶴亀
人間としゃべれる動物が対談するネタです。
「対談で話すことを考えていない」というボケをひたすら繰り返す形となっていて、繰り返し型でしばしば見受けられる、単調さを防ぐ目的で会話内容に変化をつけることもほとんどしていません。やや特殊な形で淡々と進むネタとなっています。
12.TCクラクション
ディベートが強いと主張する人が相手の意見にすぐなびくネタです。
論理の誤謬を突くかのような漫才で、まさにディベートらしいとも言えます。冒頭の「何気にディベートが弱い」ということを観客にじわじわと気づかせるくだりは単独でも使い物になるやり取りですが、「勝利と敗北、得るものが多いのはどちらか」というテーマに加え、ディベート勝者に賞品を付けることで誤謬に至る道筋をつけ、終盤の混沌とした笑いへ繋げています。
13.デルマパンゲ
グルメリポートでどうしようもないことばかりするネタです。
まず食事マナーの悪さを笑ってもらい、そうなるに至った背景を少しずつ明らかにしてゆくという2段構えの形になっています。品のなさもリアリティのあるものから、非現実レベルでバカげたものまで取り揃え、その振り幅によって単調さを防いでいます。
14.天才ピアニスト
ネイルサロンに行ってみるネタです。
ストーリーを進行させながら、ボケとツッコミが交互にやってくるオーソドックスな形式となっています。ボケは主にキャラクターで勝負し、ツッコミは同じような言い方でバシッと決める形を多用しますが、たまにその基本形とは異なる形のツッコミをすることで変化をつけています。
15.東京ホテイソン
海外のサッカー実況空耳ゲームをするネタです。
何の予備知識なしに聞くと空耳にならないのに、予備知識が入るとそれっぽく聞こえるという空耳の強引さを利用した形になっています。構造上、フリのパートが長くなってしまうため、オチの部分でフリに費やした時間を取り戻すレベルの笑いが要求されます。観客は「そう言っていたのか」というアハ体験によって笑いが増幅されているため、費用対効果があるとの判断したのだと思われます。
今回の感想は以上です。ではまた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?