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注意が悪事を誘う場合

 「こういうことをしてはいけませんよ」という注意が「こういうこと」をする人を生んでしまう場合があります。

 例えば、私がプラネタリウムを見に行った時のことです。近所の幼稚園から来たのでしょうか、制服を着た5歳くらいの子供の団体と一緒の回になりました。子供たちは友達同士で楽しそうに話をしていたものの、プラネタリウムの説明が始まると自然と静かになり、この年頃の子としてはちゃんとしていた印象でした。

 プラネタリウムの職員がマイクで注意事項を説明した時です。幼稚園児の団体さんが来ていると事前に知っていたようで、彼ら向けの注意事項を追加で説明していました。

「背もたれはお空を見るために倒れるようになっています。だから、ガチャガチャ揺すらないでくださいね」

 そんなことを言っては逆効果、と私が思うより早く、幼稚園児たちの方からガッチャガッチャガッチャガッチャという、町工場みたいな音が聞こえ始めました。変な注意をしなきゃ静かだったのに。職員の方もきっと「しまった」と思ったことでしょう。

 「こういうことをしてはいけませんよ」と言ったがために、幼稚園児が「こういうこと」の存在を知り、即実行に移した。きっと別の注意でも同様の現象が起きるに違いありません。例えば、「耳の穴にビーズを入れてはいけません」ですとか、「口の中に磁石を入れてはいけません」ですとか、「鼻の穴に豆を入れてはいけません」ですとか、そういう注意です。

 どうして具体的な事例がこんなにもスラスラ出てくるのかと申しますと、全部私が幼少期にやったことがあるからに決まっています。例えば、「耳の穴にビーズ」は、面白がって耳の穴に小さなビーズを入れたり出したりしてたら、ひとつ出てこなくなってしまったという案件です。頭を振ると耳でゴソゴソと音がするんですが、指を突っ込もうが穴を下にして跳ねようが全然出てこない。間もなく耳鼻科へ連れていかれ、医師によってどうにかこうにか発掘していただきました。

 「口の中磁石」の場合は1センチ×2センチくらいの長方形の磁石を口に入れて遊んでいたらうっかり飲み込んでしまい、泣きながら母親に訴えてすぐさま内科へ連れていかれました。レントゲンで見ると消化器系の中にあっても消化されずに粘る磁石の影がハッキリと確認できまして、これが人生初のレントゲンとなりました。医師曰く「そのうち出てくるでしょう」ということで、出てくるのが確認できるまではおまるの使用を余儀なくされました。卒業したばかりのおまるなのに、出戻り&強制留年です。医師の言った通り、次の日には出てきまして、捨てればいいのに母はしっかり洗ってまた使ってました。

 ビーズと磁石の件がありましたから、「鼻の穴ビーンズ」の時は焦りました。豆を鼻の穴に入れて遊んでいたらそのまま奥に行ったまま戻って来なくなったんです。さすがに3回目ともなると怒られ方も半端ないに違いない。私は恐怖におののきました。どうにか親にバレずに済ませたい。でも豆は出てこない。指も鼻息も無力です。どうしたもんか。家の庭でひとり焦っておりますと、何の前触れもなく大きなくしゃみが出まして、その勢いで豆も出てきました。すごいぜくしゃみ、ありがとうくしゃみ。

 こんな目に遭うのは私だけで充分です。新たな被害者を生まないためにも、小さな子に変な注意をしないよう心掛けたいものです。

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