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M-1グランプリ2022予選動画感想 準々決勝⑥

 M-1グランプリは準決勝進出者が決まりまして、現在は例年通り、ワイルドカードを決めるために準々決勝で敗れた方々のネタが公開されています。

 3回戦のネタも感想を書いてきたんだから、準々決勝もやるしかない。そういう、誰にも求められていない義務感でまた感想を書いて参ります。

 何かのご参考になったり、暇潰しになったりしてくだされば、もう十二分に嬉しい、そんな状態です。今回はコンビ名の50音順に少しずつ感想を書いております。よろしくお願いします。

1.骨付きバナナ

 3年生が引退したあとの中学女子バスケットボール部2年生と1年生をやるネタです。
 やけに具体的なテーマですけれども、あるあるネタをベースにしたオーソドックスなコントがメインの漫才となっています。動きもあり、伏線回収もありと、ちゃんとやっている組のちゃんとしたネタという印象です。

2.マッハスピード豪速球

 撤去された自転車を集積所へ取りに行き、そこで働いている男性と揉めるネタです。
 個人で勝手に自転車を撤去しているヤバい人とのやり取りを見せる、コント色の強い形となっています。ヤバい人なんだけどヤバい人なりの理屈がちゃんとあり、それが話を面白くさせています。終盤の伏線回収もまた、ちゃんとした理屈のもとに成り立っているものであり、それゆえ観客にもキチンと受け入れられたのだと思われます。

3.マリオネットブラザーズ

 野球の映像をスローで見るネタです。
 ボケが様々な人のスローモーションをやり続け、ツッコミがそれを説明しながらいろいろツッコんでいく形式で最後までいく挑戦的な漫才となっています。説明は最低限に留め、なるべくツッコミに時間を割いており、しゃべらないボケの面白さを補完しようと心掛けているのが見て取れます。

4.マルセイユ

 「ないない著名人」というオリジナルゲームをするネタです。
 「名字と名前を言い合って著名人でない人名を完成させる」という独自ゲームのルールがそのまま漫才のシステムとなっています。最初は乗り気じゃなかった方がだんだんテンションが上がってやる気になってくるのは王道ではありますが、それだけ効果がある流れとも言えます。

5.見取り図

 取材での言動を曲解してネットニュースに公開するネタです。
 「取材をして、それに基づいて曲解して記事にする」というのが基本システムで、見出しがオチとなっています。あとは細部を変化させながら繰り返してゆくという構造です。繰り返しの側面が強いネタではありますが、雑誌名だったり記者の去り方だったりと楽しめる要素をいくつも用意することで繰り返し感を薄めています。

6.モグライダー

 俳優の名前を代表作などと関連付けて覚えようとするんですが、失敗を繰り返すネタです。
 失敗のどこまでが意図的でどこまでが天然なのかよく分からない、その辺りを笑ってもらう形式だと思われます。ゴチャゴチャしすぎても良くないですし、すんなりいったら面白くない。調節が難しいシステムです。

7.モンスターエンジン

 魚目線で釣り人に文句を言うネタです。
 釣りを具体的にいじっていく形です。魚目線という視点も全くない形ではないんですが、単純に話し方が達者なので非常に聞きやすいため、基本的なところが強い漫才という印象です。

8.ゆにばーす

 女性も異性の裸を見て興奮すると主張するネタです。
 下ネタへ真正面から取り組んだ漫才となっています。ひかれる危険性と隣り合わせですが、その辺はギリギリを狙いつつ攻めているのだと想像できます。下ネタにおける地上波のギリギリはなぜか往々にして金玉辺りに落ち着くことが多く、個人的な印象ではここ20年くらいは金玉がボーダーライン近辺にある言葉であり続けています。

9.吉田たち

 自分とよく似た人と出会った話をするネタです。
 自分たちの他に似ている人と出会うことで更に話がややこしくなるという、双子をうまく活用したテーマとなっています。双子が自分によく似た双子以外の人と入れ替わるという発想が出てくるのは双子芸人ならではの極致と言えます。

10.ランジャタイ

 礼儀正しいゴリラを作るネタです。
 話の筋を理解する必要が全くないというか、むしろ理解なんて邪魔でしかないという意味において非常に特異的な形となっています。テーマもおかしいし、ボケの言動はマジでヤバい人のそれじゃないかと言うレベルですし、登場するキャラクターも脈絡がない。でも、面白いものの根源ってそういうものでしょ。そう思わせるような力を感じます。

11.リニア

 ビジュアル系バンドを作ろうと誘うネタです。
 最初は乗り気じゃなかった側が、徐々に細かな設定などのアイデアを出してゆき、最終的には芸人を捨てる覚悟にまでなる様子を笑ってもらう形となっています。そのためにバンドへ誘う側が稚拙な設定を出すというお膳立てをし、相方のバンド熱に火をつける必然性を生んでいます。

12.隣人

 怪盗になって幻のダイヤを狙うネタです。
 レーザーで体をスライスされるという、グロい上に表現の難しいことを何となく分かる形にし、なおかつ引かれることなく笑いに活用する表現力は特筆すべき点だと思います。本当に絶妙な動きで何とかしているところが単純にすごいと思いました。更にはそれをうまくつかってダイヤを取り、最後のオチにまで活用しているのですからさすがです。

13.令和喜多みな実

 ソロキャンプでチャッカマンを使うネタです。
 チャッカマンを「火をつける職業の人」として話を強引に進めていく形となっています。ボケが淡々と安定したトーンで話をするんですが、安定した話しぶりだからこそ、言い方のちょっとした変化がすごく目立ちまして、そのちょっとした変化で目立たせる手法を効果的に使っているように見受けられます。

14.忘れる。

 校長先生が卒業証書を授与しようとしてなかなかしないネタです。
 短いスパンのやりとりをちょっとずつ変化させながらひたすらひたすら繰り返してゆく独特の形となっています。ここまで短くシンプルなくだりを繰り返し続けるとかえって気にならなくなると申しますか、繰り返しがどう発展していくのかに興味が出てくるため、単調な感じが薄まります。もちろん、繰り返している最中もツッコミがちゃんとツッコんだり乗ったりして変化をつけている上、繰り返し自体も次々に変化しているという点も大きいのは間違いありません。

 今回の感想は以上です。ではまた。

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