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人類と一緒にスズメを滅ぼしてしまう可能性について

 地元は田んぼが多い土地柄のため、お陰様で一年を通じて稲がどのように育っていくのか何となくは分かります。例えば、大体春から初夏にかけて、田んぼは代掻きということをするわけです。秋から春にかけて、乾いた田んぼに水を入れまして、土を混ぜて泥状にし、田植えができる状態に持って行く作業ですね。

 昔は全て手作業だったり、または牛を使ったりしていたようですが、今は専ら機械でございます。地元にいた頃は、4~5月頃になると毎年のように田んぼが代搔きされ、たまに油断しまくった男子中学生が自転車ごと落っこちて泥まみれになるという悲劇が起きたりします。

 そんな代掻きなんですが、いつの日からかあることに気づきました。代掻きをする機械はデカいし音も結構するんですけれども、その機械のそばに割とデカめの鳥がいるんです。サギですね。代掻きされたばかりの水田に立ち、ジッと機械の様子をうかがっている。

 大体の野鳥は警戒心が強く、近づくとパッと飛び立ってしまいます。轟音を上げて代掻きする機械ともなれば、近寄ることもないかと思いきや、サギは1~2メートルの位置をしっかりキープしています。何なら、代掻きしている最中の田んぼではもれなく、数羽のサギが機械のそばにピッタリとついている。

 一体なんだろうと思ってしばらく様子をうかがっていたところ、甲斐あって理由が分かりました。代掻きされた直後の田んぼにサギがクチバシを突っ込むと、何やら丸いものを拾い上げて飲み込んだんです。恐らくタニシだと思います。

 冬場は乾いた田んぼの地中で過ごしていたタニシが、代掻きされることで結果的に掘り返される。そこをサギが狙ってパクついていたわけですね。よく見たらカラスもサギに混じってタニシを食べてました。

 しばしば野生生物は人が保護しないと滅びてしまうみたいな論調があります。そういう生物がいるのは事実でございますが、一方で人間を利用してしたたかに生きている生物も結構いるのだと痛感させられます。

 それこそ、どういう理由かはともかく、人のそばに住んだり人と暮らしたりすることを選んだ生き物はそれなりにいまして、有名なところですとスズメがあげられます。

 なぜかは知りませんがスズメは昔から人を警戒する割には人の暮らす集落に生息する傾向がありまして、その集落から人が立ち去ればスズメもいなくなり、集落に再び人が暮らし始めるとスズメもまた生息を再開するんだそうです。野生のスズメがやってくる時なんて道端でパンを食っている時くらいで、当然ながら目的は私ではなく私からこぼれ落ちるパンくずです。こういうことを繰り返し覚えてスズメは人のそばに生息するようになったのかもしれません。

 そう考えると、もっと人にベッタリして生きている生き物が、我々が知らないだけでひっそりと生きているのかもしれません。そういう生き物は当然ながら人類がいなくなってしまうと絶滅、またはその危機に瀕してしまうことになるでしょう。

 環境問題やそれを題材とした創作物なんかを見ますと、たまに「人間がいなくなれば自然は以下略」みたいな主張が出てきます。環境問題の多くが人間によるものであり、環境問題の解決策としては極論として扱われます。そして、人類を吹っ飛ばす根拠としてピッタリなせいか、悪役がその考えに基づいて人類の前に立ちはだかる。

 その手の悪役としては「人類がいなくなればその他の生物にとっては万々歳」となるから頑張って悪いことをするんですけれども、人と近いところで暮らすことを選んだ生き物たちがその流れ弾に当たって人類と一緒に滅びかねないわけです。つまり、「人類がいなくなればその他の生物にとっては万々歳」とは限らない。

 煽るとか反論するとか、そういうわけでなしに、単純な疑問として、人類を滅ぼしたがる悪役はそこんとこどう考えているのか、一人ひとりにアンケートを取ってみたくなりました。きっといろんな考えが聞けると思います。

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