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愉快犯の不法投棄というか不法投棄の愉快犯というか

 不法投棄という言葉自体は昔から知っていました。小学生のころ、図書室で読んだ環境問題に関する本では、道路脇の原っぱに積まれたタイヤの山や、窪地に打ち捨てられた家電の数々、山奥に並べられた薬品入りドラム缶などの写真が載せられ、重大な問題として扱われていました。

 ゴミを勝手に捨てるのはよくない。そんな作者の意図を小学生時代の私はしっかり理解しましたが、同時に重大な誤解をひとつしました。「不法投棄とはこれだけ大規模なものである」というものです。

 それから10年近く経ち、私は大学生になっていました。自転車でのどかな風景を走っていますと、コンクリートの壁の上に古いテレビが置いてありました。厚みが半端ない、いわゆるブラウン管のテレビです。当時はその土地の人が通行人を笑わせるために置いたのだと思い、携帯電話のカメラで撮影までしてしまいました。

 同じころ、大型商業施設のそばの歩道に、ボロボロの子供用ブランコが丸々ドーンと置かれていたこともありました。小さい子がふたり乗れるようなブランコでした。あまりにシュールすぎて噴き出した私、こちらも思わず撮影してしまいました。

 テレビやブランコが単なる不法投棄だと知ったのは、恥ずかしながらそれから5年くらい経ってからでした。小学校の図書館で読んだレベルの大規模な不法投棄はどちらかというと少数派で、多くはもっと小規模、そして時にシュールな形で打ち捨てられているのだと思い知りました。

 そして、話は最近の出来事に移ります。私がジョギングをしていると、細い道の脇にテレビが捨てられていました。こちらもまた、今となっては懐かしいブラウン管タイプのテレビです。さすがにもう、その土地の人が私を笑わせようと思って置いたとは考えませんでした。普通に不法投棄であり、やってはいけないことです。しかも、ご丁寧にテレビの上にはビデオデッキまで置いてある。

 テレビとビデオデッキを同時に捨てた不法投棄者は、今頃、罪悪感を握り潰し、すっきりした様子で新しい薄型テレビとブルーレイレコーダーを使っていることでしょう。そして、捨てられたテレビとビデオは風雨にさらされながら、いつ来るともしれない回収業者を待っている。何とも迷惑な話です。

 次のジョギングでも、そのまた次のジョギングでも、やっぱりテレビとビデオは同じ場所に捨てられたままでした。よくないよな、と思いつつ、私もまた特に何もしない。不法投棄の問題は根が深いものです。

 それからも何回かジョギングで同じ場所を通りました。相変わらずテレビとビデオは捨てられっぱなしだったんですが、私、突然あることに気づきました。ビデオデッキの下にあったのはテレビじゃなくて電子レンジだったんです。

 ビデオデッキの下にあるテレビっぽい外見のものはテレビって認識するに決まってるじゃないですか。なんでこう通行人を試すような捨て方をするのか。それともおちょくっているのか。もしくは、私が勝手に勘違いしただけなのか。

 不法投棄野郎の愉快犯的な側面が垣間見えた一件でした。

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