M-1グランプリ予選動画感想 予選3回戦 2022年10月24日開催分②
M-1グランプリ2022の予選3回戦の動画が次々に公開されています。1回戦の感想で割とヒーヒー言ってたはずなんですが、なんか手を出してしまいました。せっかく面白い漫才が見られるわけですし、面白ければやっぱり覚えておきたい。そのためには感想を考えて書いて、何なら載せるのが一番です。そんな奮い立たせ方でやってみようと思います。よく分からない紹介になりましたが、よろしくお願いします。
動画がたくさんありますので、ある程度の感想がまとまったら載せていく形を取って参ります。百人組手みたいに感想をかいてますので、雑な部分があるかもしれませんし、あまりにあれだったら後でコッソリ書き直すかもしれません。何ならここのメッセージだって使い回してます。言い訳が済んだところで、早速参ります。
1.ファンファーレと熱狂/ネイビーズアフロ/なにわスワンキーズ
1-1.ファンファーレと熱狂
大阪NSC41期生(2018年入学)同士のコンビです。
例えツッコミに例えツッコミを重ねようとしてくるネタです。
独自システムを導入して、それを使い倒す形式となっています。最初はシステムの基本動作を観客に見てもらい、把握してもらったうえで、相手が例えてないのに勝手に例えたり、「弾切れ」と称して先ほど使った例えを使ったりと応用を使って話を発展させるわけです。そういう意味では王道の使い方も併用していると言えます。
1-2.ネイビーズアフロ
NHK上方漫才コンテストで優勝経験がある他、上方漫才大賞で新人賞を獲得しています。
若く見られなくなった話をするも、なかなか話をさせてもらえないネタです。
ベースは相方の話をひたすら妨害する形式です。ただ、一応は相手の話の流れに沿いつつも、自分の意見ばかり早口でまくしたてるというところに特徴がございます。ネタが後半に差しかかるにしたがって話の速度は上がっていき、話している内容がどうとかいうよりも、ただ早口でまくしたてることに重きを置き、それに対して妨害された側が怒るというオーソドックスなところに落ち着いています。
1-3.なにわスワンキーズ
NSC大阪34期(2011年入学)のトリオです。
野球をやっている子供がカミナリ親父宅の窓ガラスを割ってしまうネタです。
テーマも形式もオーソドックスです。野球ボールでカミナリ親父の家に窓ガラスを割るという伝統的なテーマから、いろいろとおかしな親父が出てくるコントが繰り返されていくところまで、分かりやすいネタとなっています。親父のキャラクターの他に、窓がないという点が意外と目新しく、そのためか割と多用しています。
2.爛々/マーメイド/フミ
2-1.爛々
NSC大阪39期(2016年入学)のコンビです。
バイト先の人を好きになったんですが、その人がいろいろとツッコミどころがあるネタです。
まずふたりのキャラクターが確立されていて、しかも互いの守備範囲がキチンと決められている印象です。言い換えれば、どういう笑いをどちらがやるのかしっかり決まっていて、互いに邪魔をしない感じです。その上で、無駄な言動がなく、言葉を減らしつつも表情で笑わせる時があれば、言葉をまくし立てつつも言語と情報の整理ができたセリフのため観客に意味をスッと理解させる力も備わっています。また、普通に話しているようでボケとツッコミのやり取りが多彩で飽きさせません。むしろ、あっという間にネタが終わったと感じるほどです。
2-2.マーメイド
NSC大阪42期(2019年入学)のコンビです。
財布を拾った時のシミュレーションをするネタです。
「財布を落として自分の中の天使と悪魔がそれぞれの主張を訴える」というよくあるテーマに「天使と悪魔の役を誰もやらない」という新しいシステムを組み込んだところに最大の特徴があります。当然ながら、あとはそのシステムをいかに使うかにかかってくるわけで、この組の場合は「誰にも天使と悪魔が見えない」という状態を主に活用しつつ進行しています。最後に悪魔化した天使と悪魔の誘いを振り切って己の意思で正義を選ぶというどんでん返しを作るなど、ストーリーも頑張ってひねった感がございます。
2-3.フミ
NSC大阪38期(2015年入学)のコンビです。
ネタ中に企業のPRをして差し入れを狙おうとしているネタです。
こういうネタで重要になってくるのは、どこまで狙うかだと思うんです。何をもらおうとしているか、とも言います。もう欲望を最大値まで広げまくるか、もしくはいじましいまでに細やかな欲望にするのか。このコンビの場合はちょうどいいところを狙おうと頑張った感がございます。つまり、強欲過ぎず、しょぼ過ぎずを、あれこれ調整してよさげなラインを定めたような感じです。
3.秋おうぎ/令和喜多みな実/センリーズ
3-1.秋おうぎ
NSC大阪43期(2020年入学)のコンビです。
怪談でよくある七不思議ならぬ六不思議を話すもいろいろとおかしいネタです。
論理が前面に出ているネタです。「『七不思議ではなく六不思議しかない』というのがひとつ目の不思議」は本来の意味での不思議じゃないから五不思議じゃないか、みたいな、まるで数学的帰納法を思わせるようなことを言い出したかと思えば、いろんな不思議を足してひとつの不思議にしてしまったりと、とにかくいかにおかしな理屈を紹介するかに力が入っているように見受けられました。
3-2.令和喜多みな実
元「プリマ旦那」で、令和になったのを機にコンビ名を改名しています。関西の数々のお笑い賞レースで結果を出し、M-1グランプリは準々決勝の常連です。
写真のモデルを相方に頼むも、聞けば聞くほど仕事内容に問題が出てくるネタです。
非常に落ち着いた話しぶりで聞き取りやすいテンポが何よりも素晴らしいと思いました。お陰で笑いどころを観客に聞き逃させません。ネタの内容自体は話の流れで次々と衝撃的な事実が判明していく形となっていて、そのため次にどんな問題が起きるのか観客の興味をそそらせる効果が出ています。また、端的な一言で聞いた人に明確なイメージを想起させる能力に長けている印象です。
3-3.センリーズ
事務所の先輩後輩コンビですが、高校時代の同級生でもある珍しいコンビです。
真の教育が分かっている先生をやるネタです。
いわゆる「あるあるネタ」が強いコンビのようで、ネタ中のボケやツッコミの多くが「あるあるネタ」の性質を持ったものになっています。もしくは、それの発展形として親しまれてきた「細かすぎて伝わらないモノマネ」の系譜にあたるものです。
4.からし蓮根/ツートライブ/天才ピアニスト
4-1.からし蓮根
2019年にM-1グランプリ決勝進出、準決勝も4度進出しています。
井戸端会議をやってみるんですが、話の内容が大体おかしいネタです。
淡々と話しているようでいて、出てくるボケが本当に予想を裏切りに裏切るわけです。いや、裏切るだけなら誰でもできるんですけれども、日常でよくある会話を素材にして、どこの井戸端会議でもされない言動に再構成させてしまっているところが非常にうまいです。ツッコミは無駄がなく、あざとさもなく、何がおかしいのかを必要最低限の表現で見事に説明しきっています。
4-2.ツートライブ
NSC大阪30期(2007年入学)のコンビで、近年は準々決勝の常連です。
インスタグラムで炎上した話をするネタです。
ネタ全体のテーマよりも重要なのは「自分がやっていたことが偶然にも最近になって流行してきたものだった」ということを繰り返すシステムだと思われます。そのシステムを起点にして、流行りに乗りたい気持ちをチラチラ出してゆく面白さも乗せて最後まで行った感じです。
4-3.天才ピアニスト
2021年のTHE Wで準優勝経験があるコンビです。
夏を満喫できなかったからと海水浴に行くネタです。
ツッコミの形がかなり確定しているのが最大の特徴です。かなりの場合、同じ言い方、同じ動作でツッコんでいきます。また、何かに例えるツッコミが多く、独特な比喩が見られます。
5.ビスケットブラザーズ/ロングコートダディ/カシスオレンジ
5-1.ビスケットブラザーズ
2022年キングオブコント覇者。近年では賞レースに滅法強いです。
おかしなスイーツ屋に行くネタです。
あくの強いキャラクターのボケをちょっと離れた位置から実況するようにツッコんでいくスタイルとなっています。ボケの演技は卓越しており、本当にヤバい人にちゃんと見えています。ツッコミはツッコむだけでなく、間を持たせるためのしゃべりも担当しており、場合によってはフリのような役割もになっています。
5-2.ロングコートダディ
昨年のM-1では決勝進出、キングオブコントでも今年は2度目の決勝進出を果たしました。
甥っ子と何して遊ぶか悩んでいる相方のために独自ゲームを紹介するネタです。
構成は独自ゲームをふたつやるという非常にシンプルなもので、テンポがゆったりしていることもあって話の進展は緩やかで、笑いどころが決して多いネタではないんですが、それを補って余りある楽しさなのが非常に不思議です。ただ、キャラクターに合った言動がウケに多大な影響を与えているのは推測できます。ボケの飄々としたキャラのお陰で大して動かずともやる気のなさそうな様子がふんだんに出ていますし、逆にツッコミのどこかおかしな一生懸命さも非常に自然で楽しめます。その独特な雰囲気があるからこそ、そこから流れるように「俺のことなめとるやろ」と来るのが妙におかしいのだと推測します。
5-3.カシスオレンジ
NSC沖縄3期(2013年入学)同士のコンビです。
知識のない相方に干支を全部言ってもらうもいろいろとおかしいネタです。
アホなキャラクターのボケに対してツッコミは優しくツッコんだりたまに聞き流したりするスタイルが特徴的です。巳年のくだりが最もよかったのはご納得いただけるところだと思います。
6.シンバルモンキー/軍艦/リャンフーテン
6-1.シンバルモンキー
松竹芸能所属のコンビで、イオリさんは打楽器が得意とのこと。
太鼓の達人のようなゲーム、ジャンベの達人をするネタです。
音楽の著作権問題により恐らくネタが1分以上カットされているので分からない部分も多いですが、基本的にはジャンベという打楽器を用いて太鼓の達人みたいなゲームをし、しかし太鼓の達人を異常にライバル視されているというところがポイントかと思われます。
6-2.軍艦
NSC大阪44期(2021年入学)のコンビで、NSC在学中に準々決勝へ進出し、M-1グランプリ2021年ベストアマチュア賞を受賞しています。
飼ってるハムスターが鬱っぽいと言って愚痴るネタです。
けだるそうなお兄さんふたりがけだるそうに話すんですが、それが妙に面白いコンビです。愚痴によく合う話し方と申しましょうか。ずっと同じトーンで話しているんですが、ハムスターが普通にしゃべったり文豪みたいなことをやりだしたりと、異常性が当たり前のようにスッと入ってくるのが非常に独特で楽しめます。ボケはもちろんなんですが、ツッコミもツッコんではいるものの、何気にボケの異常性を割と肯定しているという独特さも特筆すべき点かと思われます。
6-3.リャンフーテン
NSC大阪42期(2019年入学)のコンビです。
胸に刺さった言葉ベスト5を言っていくも、相方に言われたばかりの言葉ばかり上げていくネタです。
まずベースとして、相方に言われたばかりのものを「胸に刺さった言葉ベスト5」に次々とランクインさせる、というシステムがあり、そこへ意図的に特定のワードをランクインさせようとする野望が話をゆっくりと発展させてゆきます。そして、意図した通りランクインしないという形になっています。独自システムを重視し、前面に出したネタだと思われます。
今回の感想は以上です。ではまた。
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