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M-1グランプリ予選動画感想 予選3回戦 2022年10月25日開催分①

 M-1グランプリ2022の予選3回戦の動画が次々に公開されています。1回戦の感想で割とヒーヒー言ってたはずなんですが、なんか手を出してしまいました。せっかく面白い漫才が見られるわけですし、面白ければやっぱり覚えておきたい。そのためには感想を考えて書いて、何なら載せるのが一番です。そんな奮い立たせ方でやってみようと思います。よく分からない紹介になりましたが、よろしくお願いします。

 動画がたくさんありますので、ある程度の感想がまとまったら載せていく形を取って参ります。百人組手みたいに感想をかいてますので、雑な部分があるかもしれませんし、あまりにあれだったら後でコッソリ書き直すかもしれません。何ならここのメッセージだって使い回してます。言い訳が済んだところで、早速参ります。

1.イノシカチョウ/ジュリエッタ/イチオク

1-1.イノシカチョウ

 大阪NSC35期生(2012年入学)同士のトリオです。もともとコンビだったのが、以前に解散した相方を編入させてトリオになるという、ちょっと変わった経歴を持っています。
 女子高の先生が女子生徒に手を出さないように頑張るんですが、いろいろと妨害が入るネタです。
 似たような形式のコントが3セットあり、最後だけ終盤に変化をつけて終わるようになっています。トリオ漫才ですとどうしても3人目を遊ばせがちという難点がありますけれども、この組の場合はもう割り切ってしばらくふたりのパートを作っています。

1-2.ジュリエッタ

 元「ガトリングガン」の井尻さんと元「ソーセージ」の藤本さんによる、NSC大阪27期(2004年入学)同士のコンビです。
 相手が圧倒的に不利な条件でディベートを挑むネタです。
 不平等な状態でディベートをするも、不利な方が勝ってしまうという基本システムを3巡する形式となっています。ちょっと変わったシステムを繰り返す形は、現在ではオーソドックスの範囲内だと思われます。2度の逆転をしたにもかかわらず、3巡目で勝負を諦めるところが最大の笑いどころではないでしょうか。

1-3.イチオク

 大阪NSC36期生(2013年入学)同士のコンビ。もともとトリオだったのがひとり抜け、現在の名前になりました。
 オリンピックを見に行くも、別のことばかり気になってしまうネタです。
 オリンピックでいろんな競技を見てゆくという非常にオーソドックスなテーマに「目の前の競技よりも気になることが脇で起きている」というシステムを組み込んだ形となっています。当然、力が入っているのも「目の前の競技より気になること」であり、さすがに外さない絶妙なものばかり取り揃えていました。見せ方は一定で、最後にちょっとひねっている状態です。

2.ぐろう/ローズ/ブルーウェーブ

2-1.ぐろう

 大阪NSC42期生(2019年入学)同士のコンビです。
 待ち合わせ時刻について揉めるネタです。
 月曜深夜1時が本当の意味での月曜深夜1時なのか、それとも火曜に入った状態での深夜1時なのか、という互いの「月曜深夜1時」の意味が齟齬しているところを笑ってもらうネタとなっています。非常に限定されたひとつのテーマについて論争し、事例を出して自らの主張の正当さを主張する形です。割と王道寄りのネタではないかと考えられます。

2-2.ローズ

 大阪NSC43期生(2020年入学)同士のコンビです。
 「ホットティ」の「ほっといて」のように比較的似た発音の言葉のどちらを言っているか当ててもらうゲームをするネタです。
 独自に考えたゲームをして、後半から新たにルールを追加して再びゲームをする。そういう意味では独自ゲームを展開するネタとしては典型的な形となっています。

2-3.ブルーウェーブ

 松竹芸能所属のコンビです。
 無人島サバイバル体験に行くもいろいろと問題があるネタです。
 声が大きく動作も大き目という、熱量高めなツッコミが特徴的です。サラッと問題な新事実を告げるボケとの対比でも笑ってもらう形だと思います。

3.コウテイ/隣人/紅しょうが

3-1.コウテイ

 2020年にABCお笑いグランプリで優勝しているコンビです。ちなみに2度の解散と再結成を経験しています。
 マグロを釣りに行くんですが、妙なことばかり起きるネタです。
 著作権の関係で恐らく10~15秒程度カットされいます。話の筋がグチャグチャなようで、いろいろな気遣いが見られるネタです。まず、ボケが適当な動きばかりしているようですが、細かなところまで再現しているため観客が話を見失わないようになっています。また、人によっては意味が通じづらそうなボケに対してはツッコミが丁寧に説明を交えてツッコむため、分かりやすくなっています。また、テンポも意外とゆっくりで、観客を置いてけぼりにしづらくしています。

3-2.隣人

 以前のコンビ名は「隣人13号」。大阪NSC34期生(2011年入学)同士のコンビです。
 いろんな顔を付け替えて戦うオリジナルヒーロー「フェイスマン」のネタです。
 顔役と胴体役に分かれる漫才というのが最大の特徴ではあります。顔と胴体をドッキングさせたり分離したりと、動きのある漫才でした。顔と胴体の役に分かれる時の準備中に間を繋いだり、説明せずに博士役から頭役にするなど、変な間を埋めるために様々な工夫が見て取れます。

3-3.紅しょうが

 事務所の先輩後輩コンビ。THE Wでは3度の決勝進出を果たしています。
 愚痴を話している本人より聞き役が怒ってあげることで話している人の溜飲が下がるネタです。
 漫才でよく見られる現象として「どちらかもしくは両方が怒りだす」というものがあります。ですが、怒りに必然性が欠けると怒るためだけに怒ってるのを観客が察知して冷められる危険性があります。そのための解決法としては主にふたつ、「怒りに必然性を持たせる」と「必然性のなさをネタにする」があるわけです。この組の場合は「相手のために敢えて怒ってあげる」というのが必然性を持たせるわけですが、これの強力なところは「敢えて怒ってあげる」ために突然わざとらしく怒ったとしても必然性があるんです。というか、どんな怒り方でも大丈夫です。そこを見つけたのは非常に素晴らしい。冒頭で何気に言った「最近イライラすることが増えた」というのも効いています。

4.カベポスター/らいken/はるかぜに告ぐ

4-1.カベポスター

 ここ数年、関西のお笑い大会でいくつもの賞を取っているコンビであり、M-1グランプリでも2年連続で準決勝進出中です。
 近所の女性コンビニ店員と仲良くなるために、多彩な注文をひたすらするネタです。
 「女性店員と仲良くしたいため、コンビニでできる様々なことを次々に注文する」というのがメインとなっているんですが、脇を固めるシステムがよくできています。例えば、研修中の店員に面倒な注文をしまくる状況であったり、今のコンビニはここまでできるのかという発見であったり、違うコンビニに転職した女性店員に敢えてシンプルな注文をする手法だったり、その全てが「ひたすら注文をする」という、ともすれば同じものの繰り返しに陥るネタに適切な変化をつけています。無駄のない的確なツッコミも非常に効いています。

4-2.らいken

 ピン芸人の今井らいぱちさんとkento fukayaさんのコンビです。
 居酒屋にいた変な店員を再現するネタです。
 変な人の変なポイントを再現しつつ、その店員の名前をもじったツッコミをしてゆく形式です。おかしなキャラクターはお笑いのネタで膨大に登場するわけですが、この組の場合は舞台を広く使ってよく動くのが特徴的です。

4-3.はるかぜに告ぐ

 現役NSC生のコンビです。
 修学旅行の夜のガールズトークのネタです。
 気の強そうな女性とおっとりしてそうな女性という役割分担がされていて、おっとりしてそうな方がどぎついことをためらいなく言うという、分かりやすい形式が展開されています。とにかくギリギリ笑えるところを狙おうとしている意図が感じられます。

5.翠星チークダンス/タチマチ/茜250cc

5-1.翠星チークダンス

 高校生の頃から組んでいる男女コンビで、ハイスクール漫才優勝経験があります。以前は「いなかのくるま」名義で活動しており、オール巨人さんに変なコンビ名を呼ばせる目的でつけたんだそうです。
 思わせぶりな態度を取り続ける相方を利用して己の欲望を満たすネタです。
 男女コンビという状況に「暗に己の欲望をネタ中に満たそうとする」をうまく活用した形式となっています。最初の場面は単に思わせぶりなことをする女性を見せ、次の場面で真のシステムを観客に理解させ、あとは徐々に欲望を満たしつつ、相方へ要望を言い出すという方式で話を自然に発展させています。段階の踏み方はこれがベストのように思います。

5-2.タチマチ

 同じ事務所の先輩後輩コンビです。
 野菜と果物の違いを語り、相方にうざがられるネタです。
 話す時の細かな演技が最大のセールスポイントという、ありそうでちょっとない漫才が特徴的です。知識を語るその嬉々とした感じを徐々に出していき、それを相方のボケが静かに理不尽にイライラしてくるわけなんですが、知識を語る感じがリアルなこともあって、語っている序盤から観客が笑い出すわけです。ですから、後半でいきなりビンタしようが眼鏡が飛ぼうが笑いになる。よくできています。

5-3.茜250cc

 こちらも同じ事務所の先輩後輩コンビです。
 旅館に泊まるも女将がやけにいろいろおかしいネタです。
 ある程度のところまで場面を進めた後、ツッコミが決められたポーズで明るくツッコみ、それから再び場面を進める、という形式を繰り返していきます。この形だとツッコミの数が限られますし、ツッコミのタイミングが観客に察知されやすいため、ツッコミ一つひとつのクオリティがかなり重要になってきます。この組の場合は観客の予想を違うところをツッコんだり、言われて初めて気づくようなツッコミをすることで、システムの弱点を克服しています。後半は逮捕など暗い話を明るくツッコむという対比でウケを取っています。そう考えると、もっといろいろできる形式なのかもしれません。

6.生ファラオ/20世紀/ヘンダーソン

6-1.生ファラオ

 大阪NSC37期生(2014年入学)同士のコンビです。
 愛犬を高い高いするんですけど、その高さが異常なネタです。
 横跳びする回数なら全漫才一でしょう。異常な高度を誇る高い高いをやりまくるだけなんですけれども、だんだんその異様な飼い主に引き込まれてゆき、相手の犬を誘った辺りで笑いのピークになります。ホラーでよくある演出なんですが、ホラーと笑いは紙一重みたいな話はちょこちょこ聞きますし、意外と笑いのアイデアが眠っているのかもしれません。

6-2.20世紀

 大阪NSC35期生(2012年入学)同士のコンビです。
 失恋を忘れさせる話し方をした大人の女性を演じるネタです。
 ちょっとズレた大人の女性なんですが、それに相方が徐々にハマってゆくという形式です。終盤のハマりっぷりが本当にバカバカしく、そこが最大の笑いどころとなっています。

6-3.ヘンダーソン

 2021年にオールザッツ漫才で優勝、M-1グランプリでは昨年に初めて準決勝に進出しています。
 復帰会見の練習をするネタです。
 「コントに入ろうとする場面でコントに入らずツッコむ」という特殊なシステムを用いた漫才です。コントに入るまででいろいろフリを仕掛けておいて、コントに入ろうとするところでツッコみ、オチのような役割を果たすわけです。それだけを多用していると単調になってしまうため、キチンとコントもやりつつ、再び特殊なシステムを活用するなどして観客を飽きさせないよう気を遣っています。もちろん、基本となる漫才自体もちゃんとしている点が特殊システムを活かしている面はございます。

 今回の感想は以上です。ではまた。

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