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題名読書感想文:10 シリーズも続けば家康をタイムマシンで轢く

 このシリーズでは、敢えて本のタイトルだけを見て感想文を書いております。今回もよろしくお願いします。

 さて、人気作品の宿命としてシリーズ化がございます。様々なジャンルで数々の作品がシリーズ化してゆきました。

 シリーズも長く続くと、様々な変化が見えてきます。例えば、「歴史漫画タイムワープシリーズ」です。

 子供向け歴史漫画と思われるシリーズでございます。漫画は楽しいし、読めば勉強になる、というわけです。

 しかし、時代区分は数に限りがございます。このシリーズも弥生から古墳、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、江戸、幕末、明治、大正、そして戦後へと続いてきました。

 日本史ですと、大体はこの辺で完結です。昔に読んだ歴史漫画も戦後で終わっていました。ですから、ここでシリーズを完結させる選択もあったと思います。途中で打ち切り同然に終わるシリーズだって普通にある中で、ちゃんと完結まで辿り着いたのはひとつの達成です。

 しかし、せっかく長く続いたシリーズ、ここで終わらせていいのだろうかと思うのもまた人の心理というものです。そこで、様々な場面や人物に焦点を当ててシリーズを存続させたようです。歴史区分で分けたものは「通史編」とし、何か特定の人物を扱ったものは「伝記編」、城郭や合戦など特定のテーマを扱ったものは「テーマ編」として、歴史漫画タイムワープシリーズは新たな道を歩み始めました。人物やテーマならば時代区分と違って、題材は「桁何個違うの」レベルに膨大です。うまくやれば、息の長いシリーズとなる可能性がございます。

 このシリーズは「歴史漫画タイムワープシリーズ」ということですから、タイムワープは踏襲する形になっています。当然の流れで、書籍のタイトルに「タイムワープ」とついている。そのため、結果的に不思議なタイトルとなっているものもあります。

 例えば「伝記編」の「徳川家康へタイムワープ」です。

 タイムワープと言うからには、時間を飛び越えるわけで、目的は時間移動のはずなんですけれども、人物に向かってタイムワープしています。「戦国時代へ」ではなく「家康へ」。なぜか私、ドラえもんがタイムマシンで家康に激突する場面を思い起こしてしまいました。

 「テーマ編」にも不思議なタイトルがございます。例えば「大阪城へタイムワープ」です。

 「タイムワープ」は時間移動が主目的のはずなのに、行き先が場所だけで時代が書かれていないんです。もちろん、中を読めばどの時代か分かる仕組みになっていますが、私が大阪城に行ったらうっかりタイムワープしてしまうんじゃないかと不安になるタイトルです。

 最も不思議だったのは「憲法はじめてタイムワープ」です。このタイトルだけだと、どの時代のどこへ行くのか分からない、ついでに誰へ行くのかも不明という新感覚タイムワープです。

 副題の「日本国憲法で鬼ヶ島を救え!」のお陰で鬼ヶ島に行くことはうかがえますが、とにかく次世代のタイムワープを垣間見た気がしました。

 こんなシリーズもあります。「角川まんが科学シリーズ どっちが強い!?」。様々な生き物を戦わせてどっちが強いのか決めるシリーズのようです。

 もちろん、実際に戦わせるのは難しいので、仮に戦ったらどうなるかを描いたもののようです。いわば生物界の異種格闘技戦であり、生物が好きな子なら大体はワクワクするテーマでございます。当然ながら監修には専門家が入り、生物学的に正しい対決が展開されているものと思われます。

 当然ながら、このシリーズの肝は対戦カード、すなわち何と何を対決させるかでしょう。最初はみんなが良く知る生き物が登場します。例えば、最初に登場したのは「ライオンvsトラ」「ゴリラvsクマ」「サメvsメカジキ」です。

 上から四足歩行対決、二足もいける対決、魚類対決の3本ですね。その後も「カブトムシvsクワガタムシ」の王道対決、「オオカミvsハイエナ」の軍団対決、「コブラvsガラガラヘビ」の毒蛇対決など、特定のテーマに沿った異種格闘技戦が繰り広げられていきます。

 しかし、対戦カードを決めるのも楽ではありません。監修に専門家が入っているとは言え、特定のテーマに沿って、なおかつ白熱のバトルができる対戦カードを考えないといけない。

 個人的に対戦カードの傾向から変化が垣間見えたのは次のバトルです。「ヒクイドリvsカンガルー」。

 カンガルーはともかくヒクイドリです。こんな生き物をパッと思い浮かべられるのは、結構な生き物好きです。名前もすごいですが生態もすごく、飛ばずに走るタイプの鳥なんですが、足の爪が鋭く、気性が荒いため、世界一危険な鳥とも言われています。

 そんなヒクイドリがどうしてカンガルーと対戦するのかと言えば、どうやら最強のキッカーを決めようという趣旨のようです。

 この「ヒクイドリvsカンガルー」辺りから、対戦カードがマニアックになっていくんです。例えば、「サシハリアリvsグンタイアリ」のアリ最強決定戦。

 「クロアナグマvsミツアナグマ」のアナグマ最強決定戦。

 「カナダカワウソvsアメリカビーバー」の北米代理戦争。

 次の対戦カードが気になるシリーズです。

 最後にもうひとつシリーズを紹介いたします。「おばけずかんシリーズ」です。ウィキペディアにシリーズの項目があるレベルにメジャーで、シリーズ累計売上150万部、ドラマ化・アニメ化・映画化を達成している人気作品です。様々な場所のオリジナルおばけの特徴や対処法を紹介する内容とのこと。

 年代を問わず怖い話はエンターテイメントの一大ジャンルでございます。人気シリーズが出てくるのは当然と言えましょう。

 この「おばけずかん」は「うみのおばけずかん」や「やまのおばけずかん」など、1冊ごとに場所を定め、そこに出てくるおばけを扱う形となっています。

 怖い話は恐怖を身近に感じてもらうためか、舞台はありふれた場所である場合が多い。このシリーズもまた、ありふれた場所の図鑑を多く出しています。子供にとってありふれた場所と言えば学校や家、街や公園があり、いずれの「おばけずかん」も複数の種類が出版されています。中でも「がっこうのおばけずかん」は8種類も出ています。

 こんな感じで「おばけずかんシリーズ」は2024年2月現在、絵本だけで34作品が出版されており、更に関連商品も発売されてきました。これだけあると、やっぱり不思議なタイトルのずかんが出てくるんです。例えば、「レストランのおばけずかん」です。

 やけに限定的な図鑑です。病院やお墓ならともかく、レストランなんです。我々は様々な廃屋やら古戦場やらを心霊スポットと見なしていましたが、その考えを改めなければならないのかもしれません。

 「おまつりのおばけずかん」もあります。

 あんなに明るくて騒がしくて人が集まるようなイベント、おばけなんて来るわけないと思っていました。盲点でした。太鼓がドンドコなっているそばで、お化けは息をひそめてほくそ笑んでいるんです。

 極めつけは「オリンピックのおばけずかん」です。

 「オリンピックには魔物が棲んでいる」と言わ続けてきましたけれども、まさか図鑑でまとめなければならないほどの種類が存在しているとは思いませんでした。次回のパリオリンピックでは選手の方々に是非とも気をつけていただきたいところです。

 長く続けていればいろんなことが起こる。シリーズもまた同じだというのがよく分かる事例でございました。

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