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コンプライアンスドクロ

 テレビでコンプライアンスについて語られることが増えたように思います。お笑い番組においては結果的にコンプライアンスが表現へ制限をかけているようで、「なかなか大変なんですよ」みたいな主張をちょこちょこ拝見しています。

 一方で、ダウンタウンの浜田さんが暴力的な言動をするや否や「治外法権」といじるなど、コンプライアンスをフリにした笑いも見られるようになりました。確かにコンプライアンスは仕事をしにくくしているのかもしれませんが、そのやりにくさを笑いに変えてゆく姿勢は私も見習いたいところです。見習ったところで、どこで活用するのか全く決めていませんが。

 とは言え、何となくお笑い番組を楽しんできた私としては、今も昔も変わらず楽しいわけです。昔は自由だったとか、今は窮屈だとか、見てる分には特に感じられない。もちろん、時には自分にハマんないお笑いもありますが、その点だって今も昔も同じです。そんな細かいところを気にして見てないだけなんだと思います。

 ただし、お笑い以外の番組で、コンプライアンス的に気になったことがあるにはあるんです。

 だいぶうろ覚えで書きますけれども、その番組は私が子供の頃に放送していたもので、特殊な趣味がある方を取り上げていました。多くは一般人で、番組スタッフがカメラを持って出向く形だったと記憶しています。

 印象深かった趣味人はドクロマニアでした。人骨が好きというよりは愛情の対象を人の頭蓋骨にしぼってまして、とにかくしゃれこうべを模したグッズをひたすら集めている方なんです。そんな方ですから、もうご自宅は圧巻です。天井から床までドクロまみれでどんなお化け屋敷よりお化け屋敷っぽい。もしくはカタコンベのレプリカです。いや本当に、特殊な墓地みたいな部屋だったんです。

 「この部屋で寝れるの?」と思ったんですが、布団も枕もドクロなのを見て、そんな疑問を抱いた自分が恥ずかしくなりました。寝具もドクロな人は寝れるに決まってますよね。ちなみに、デザインは全然違うんですが、今でもアマゾンにドクロの枕カバーと布団カバーが普通に売ってました。ドクロ素人の私にとってはすごく不思議なんですが、需要があるみたいです。

 さて、そんなドクロマニアさんですけれども、お気に入りは実物大のドクロなんだそうです。それを複数個所有しているばかりか、わざわざそれ用の台を買って、その上に雰囲気満点のドクロをポンポンポンと並べて置いてありました。どう見ても処刑場の光景なんですが、れっきとした個人宅のインテリアです。

 しかし、その本物そっくりなドクロを映しながらこんな感じのナレーションが流れたんです。

実はこのドクロのうちいくつかは山で拾ってきたのだそう。そのため、毎朝のお経を欠かさないそうです。

 そんなナレーションを受けてドクロマニアさんが数珠を片手に何やらお経を唱えながらもう片方の手でチーンとやっている姿に子供ながら「大丈夫なのかこれ」と思っていました。そして、大人になって考えれば考えるほど大丈夫じゃない気がしてるんです。毎日お経をあげたからどうとかいう話じゃないのではないかと。テレビを見た警察関係者が普通に動いたとしてもおかしくありません。

 結局、その後のドクロマニアさんがどうなったのか分からないまま、番組の記憶がどんどん曖昧になって現在に至ります。昔に比べてコンプライアンスが厳しくなったのかはよく分かりませんが、本物かもしれないドクロを陳列している様子を平気で放送しているところは確かに今よりおおらかだったのかもしれません。というか、山で拾ったドクロを勝手に家のオブジェにするなんて当時もダメだったと思いますけど。

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