名前にこもる強烈なイメージ
世に名前がある限り、名付けるという行為が存在します。そして、いろんな人がいろんなものに名付けてゆく。そうなると、どこかの段階で名前はよく見るタイプとなかなか見ないタイプに分かれてくるでしょう。つまり、同じ名前でも「これは普通」とか「あれは特殊」とか、異なる評価をされるようになっていく。そして、特殊な名前は往々にして注目されるようになります。
山手線の駅名はその典型でしょう。「東京」とか「新宿」とか「品川」とか、そういう駅名が並んでいる中に突如として「高輪ゲートウェイ」という新顔が現れ、反対意見が噴出するなどちょっとした騒動になりました。古くは吉田兼好が「徒然草」でこんなことを書いています。
現代語訳は検索するといろいろ出てきますが、大体は以下の通りのようです。
「お寺の名前とか、いろんなものに名前をつける時、昔の人は分かりやすいそのまんまな名前を付けたもんなんすよ。それに対抗してセンスがあると思われたいんだか知らんけど、敢えて珍しい字を名前に使ったりするのはなんか嫌っすね。大体あんま考えてない人が激レア感を出そうとしてそんなことするんすよ」。
特殊な名前は創作の題材にされることもあります。落語の「寿限無」がその代表格としてあげられます。子供にやたらと長い名前を付けてしまったばかりに、現実ではまず起こり得ないような現象をいろいろと引き起こすお話ですね。もちろん、近代の創作物でも名前に関する小噺的エピソードは存在しておりまして、例えば、高橋留美子さんによって1987年から1996年の間に連載されていた漫画「らんま1/2」では「パンスト太郎」と名付けられた青年が命名者に改名を迫る話が描かれています。
一方で、名前にはイメージというものがあり、何らかのきっかけでそれが激変してしまう場合がございます。
江頭2:50さんと言えば今や人気ユーチューバーとして知られていますが、一時期は黒タイツをはいて暴れ回り、カメラの前で全裸になるのもいとわない、かなりヤバめの暴れん坊として知られていました。昔から「私生活は真面目で礼儀正しい」と言われ続けていましたが、一方で「抱かれたくない男ランキング」では上位に君臨し続けるなど、女性を中心にかなり恐れられてきた歴史があります。
「江頭」自体は普通の名字であり、江頭2:50さんの出身でもある佐賀県や福岡県を中心に多くの江頭さんがいらっしゃいます。しかし、江頭2:50さんのインパクトもあって、一時期、江頭という名字は「黒タイツで大暴れ」というイメージが少なからず付いていたことでしょう。
世の中、時に特殊な名前がつけられますし、普通な名前に特殊なイメージがつく場合もある。それは今までもあった話ですし、これからもある現象でしょう。そして、それはどうやら国を問わずどこでも起こりえる。
天才と言えばいろんな人の名前が出てくるでしょうが、まず出てくるのがアルベルト・アインシュタインです。相対性理論を始めとする数々の功績は今もなお、その名と共に世界へ轟かせています。
天才とは言え、アインシュタインは本名です。つまり、世界にはアルベルト以前にもアインシュタインさんはいたはずですし、現在でもアインシュタインさんはいるわけです。検索してみたところ、当然の結果としていろんなアインシュタインさんが出てきました。英語版ウィキペディアを見ると、コメディアン、作家、音楽学者、外交官など、様々なアインシュタインさんがいらっしゃって、なかなかの充実っぷりです。
その中にこんな方がいらっしゃいました。
ジークフリートと言えば、叙事詩「ニーベルゲンの歌」に登場する戦士であり、現在に至るまで多くの創作物に登場しています。名前が格好いいことでもお馴染みですね。強烈なイメージがついた名前を背負ったアインシュタインさんがご自身の名にどういう印象も持たれたのかは分かりませんが、作家として長らく活動されていたようです。
こんな名前の方もいらっしゃいました。
ナポレオンといえばもちろん、あのフランス皇帝が真っ先に出てくるでしょう。ものすごい名前を背負ったものです。ちなみに、こちらのアインシュタインさんはインドのクリケット選手として活躍されていたようで、調べた限り現在もご存命です。
それにしてもナポレオン・アインシュタインです。日本人で表すなら「湯川信長(湯川秀樹+織田信長)」みたいな感じでしょうか。なんかこれはこれでありな気がします。有名人の名前から拝借したとしても、あんまり気にする必要がないのかもしれませんね。大変失礼いたしました。
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