なぜか正確に遅れていく人

 通勤や通学で同じ時刻に家を出ますと、同じような人に出会うものです。もちろん、歩く方角は一緒ですし、何なら格好も大体一緒です。通勤または通学だろうなと思い、そして、向こうも私を見てそう思っているかもしれません。

 そんなよく見る人の中に、いつからかちょっと特徴的な人が現れました。格好自体は普通の女性です。小柄で、短髪のグレーヘアー、眼鏡をかけており、落ち着いた服装をしている。ただ、いつも走ってるんです。行き先は駅でしょうが、全然ジョギングに適した格好ではない。何なら、履いているのはパンプスです。

 最初は「寝坊したのかな」と思っていたんですが、毎日毎日、同じ時間に走っているのを見かけるんです。夏の暑い日も冬の寒い日もそうですし、雨の日には傘をさして走っています。たまに見かけない日もありますが、タイミングが合わなかっただけで駅に向かって走っていったことは想像に難くありません。

 どういうことなんでしょう。毎日のように寝坊していると考えるには時間に正確過ぎます。私が知っている遅刻魔は、10分遅れるかと思えば3時間遅れたりする。そうかと思えば誰よりも早く乗り込んでくるなど、とにかく時間感覚がぶっ壊れています。同じような時間帯に駅へ走るためには、緻密な計算に基づいて家を出る必要がある。

 それとも、いつも起きたい時間よりちょうど5分だけ寝坊してしまう体質なのでしょうか。または、見たい番組が終わってから駅まで走れば間に合うと知ってしまったがために、毎日のように走る朝を受け入れるようになったのか。日ごろの運動不足をここで解消しようとしている可能性もあります。いずれにしろ、特殊な人です。

 こうなると気になってくるのは、どんな状況なら早朝ダッシュを諦めるのかという点です。嵐の朝、大雪の朝、体調が優れない朝、いろいろ可能性は考えられます。ただし、女性に実験するわけにはいきませんし、毎日のように待ち構えているわけにもいかない。つまり、日々の出会いが大切になってきます。

 自分も出勤しているんだぞってことを忘れそうになったらやめようと思います。

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