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M-1グランプリ予選動画感想 予選3回戦 2022年10月30日17時開催分②

 M-1グランプリ2022の予選3回戦の動画が次々に公開されています。1回戦の感想で割とヒーヒー言ってたはずなんですが、なんか手を出してしまいました。せっかく面白い漫才が見られるわけですし、面白ければやっぱり覚えておきたい。そのためには感想を考えて書いて、何なら載せるのが一番です。そんな奮い立たせ方でやってみようと思います。よく分からない紹介になりましたが、よろしくお願いします。

 動画がたくさんありますので、ある程度の感想がまとまったら載せていく形を取って参ります。百人組手みたいに感想をかいてますので、雑な部分があるかもしれませんし、あまりにあれだったら後でコッソリ書き直すかもしれません。何ならここのメッセージだって使い回してます。言い訳が済んだところで、早速参ります。

1.大仰天/ハバネロ胡椒/ほのか

1-1.大仰天

 同じ事務所の先輩後輩コンビです。
 「おさかな天国」の歌詞をリメイクするネタです。
 「魚介類を使った文章を時間内に完成させる」というテーマの漫才となっています。シマアジをオチに使いつつ、段階を踏んで徐々に作り上げ、多少強引にでも完成させて終わるという形式であり、この点は王道寄りかと思われます。

1-2.ハバネロ胡椒

 社会人漫才の業界では名の知られたアマチュアコンビです。
 運動中に飛ばした記憶を取り戻そうとするネタです。
 運動中に記憶を飛ばし、副作用でスポーツ全般の知識を失った人に、偏見しかないスポーツの解説をしていくというスポーツいじりの変形版みたいな形式となっています。似たようなペースでいじりながら最後まで行っています。

1-3.ほのか

 東京NSC26期生(2020年入学)同士のコンビです。
 オークションに参加してみるネタです。
 「オークションで競り合いたいのに誰も競ってくれない」という形を基本に話が展開していきます。全体的にオーソドックスな印象を受けるネタでした。

2.ワラバランス/ウエストランド/納言

2-1.ワラバランス

 東京NSC17期生(2011年入学)同士のコンビです。
 意地悪な姑に言い返そうとするネタです。
 「嫌味なしゃべりをしているけど話している内容は親切」というギャップを狙った形式でひたすら攻める漫才となっています。きちんと演技をした王道的なネタと言えるでしょう。

2-2.ウエストランド

 M-1では決勝進出経験もあるタイタンの有望株です。
 最近あった話がことごとくコンプラ関係で不安になるネタです。
 「コンプラがきつい」というのは近年になってネタにされるようになってきたテーマではありますけれども、ツッコミがまくしたてるというこの組独自の見せ方でうまくやってのけた印象です。特にうまいのは、序盤を中心に直接的な表現を避けている点で、それにより観客の理解は少し遅れるんですが、その分、観客自らがだんだん察していって笑えるようになるという現象に繋がり、中盤以降の盛り上がりに繋がっていきます。

2-3.納言

 既に売れている太田プロダクション所属のコンビ。準々決勝の常連です。
 焼肉屋の面接をするネタです。
 ボケが偏見を言ってツッコミがそれをたしなめるというのが基本的なスタイルとなっており、それをコントのストーリーに載せて見せているといった感じになっています。互いのキャラクターを出していくよう気を遣っており、煙草や際どい話をしていくボケに対し、ツッコミは全体的にナヨナヨした感じを出すようになっています。

3.ブレード・ランナー/シャウト/女将

3-1.ブレード・ランナー

 太田プロダクション所属の車太郎さんと元「アントワネット」でワタナベエンターテインメント所属の小澤さんとのコンビです。恐らくユニットだと思われます。
 車椅子の人が付添人込みで割引になることを主に自虐するネタです。
 自虐ネタというのはお笑い的には本当に基本中の基本であり、やろうと思えば誰でもそれなりにできるため、手腕が問われる分野でもあるわけです。自分を貶めすぎると引かれますし、逆に自慢が混ざっていても笑えなかったりする。その点から考えるとこの組はかなり微調整された形跡が見られます。クーポンのような親しみがあってどこかポップな印象を与えたり、キレるにしても変な脅し方をしてみたりと、笑いどころをちゃんと作ることに尽力しています。

3-2.シャウト

 ピン芸人のバイク川崎バイクさんとサンシャイン池崎さんのユニットです。
 水の上を走るような感じで漫才をやってみるネタです。
 わざとスベったあとのフォローで笑わせる、いわゆる「スベり芸」の変形版のような形になっています。スベるくだりをスベるくだりでフォローするというスタイルは、スベり芸が根付いた昨今でもやっている人はおらず、盲点だと言えると思います。それだとただスベってばかりになりますので、そこは言い方や動きで何とかしようとしている感じです。

3-3.女将

 今年になってK-PROからフリーになったコンビです。
 潜入スパイをやるも問題が次々起こるネタです。
 物語の進行に従ってボケ、それをすぐにツッコんでいくという、非常にオーソドックスなスタイルとなっています。ツッコミのトーンが大体同じであり、短い言葉でぬるっと決める形です。

4.鶴亀/ネギゴリラ/ぶるファー吉岡

4-1.鶴亀

 東京NSC16期生(2010年入学)同士のコンビです。
 美容室を忘れてしまった人がふさふさになった時のために美容室の練習をするネタです。
 何だかんだ言いながら芸人に根強い人気を誇るハゲいじりですが、この組のような髪型をスムーズにコントへ繋げる流れは目新しいと思いました。特徴的でありながら無理な設定というわけでもなく、観客がスッと受け入れられる。いいところを見つけています。

4-2.ネギゴリラ

 プロダクション人力舎所属のコンビです。
 万引きGメンをやってみるも、やってくるのが大体怪盗というネタです。
 推定10秒程度映像がカットされています。基本的には「万引きGメンが対処できるような相手ではない」というオチに繋がる流れを複数回繰り返す構造になっていて、オチのボケのセリフにも共通するワードを入れています。テーマは若干ひねっており、構造はオーソドックス寄りだと思われます。

4-3.ぶるファー吉岡

 ピン芸人のルシファー吉岡さんと紺野ぶるまさんのユニットです。
 1キロ先の女性のブラ紐を見るのはセーフだろうと主張するネタです。
 徹底して下ネタのギリギリを狙う組で、今回もまた同様です。ボケの話し方がポイントで、本当に遠距離覗きの正当性を主張している感じが出ており、また変質者的な気持ち悪さを削ぎ落しているため、漫才の面白さに一役買っています。身振り手振りもリアルさを出すことに成功しています。出てくる例え話も、敢えて科学的な話題をバカバカしく持ち出したり、可愛らしいものを選んだりすることで気持ち悪さの削減に役立ち、テーマの割に笑いやすい話を作り上げています。

5.コマンダンテ/素敵じゃないか/ママタルト

5-1.コマンダンテ

 静かな漫才が特徴的なコンビで、M-1では準々決勝の常連です。
 朝ごはんを昼ごはんのあとに食べるみたいな主張する人と軽く言い争うネタです。
 話のテーマは日常生活にありふれているものでありながら非常に異質な部分があるものになっていまして、このようなものはうまくいけば観客に受け入れてもらいやすく、かつどこが面白いかする理解してもらいやすくもなります。このネタに関して言えば、それがうまくいっています。例え話も絶妙で、例えられるものと例えるものの距離が遠すぎると意味が通じませんし、近すぎると例えの意味がなくなり面白くもなくなる危険性があるのですが、この組の場合はギリギリ通じる辺りをよく突いてきています。

5-2.素敵じゃないか

 大阪NSC36期生(2013年)同士のコンビで、M-1では3回の準々決勝進出経験があります。
 エレベーターの非常ボタンに書かれている「押し続ける」は長押しか連打かで議論するネタです。
 ふたりが互いの主張をぶつけ合っておかしくなるところを笑ってもらう形となっています。議題とも言えるテーマ設定は分かりやすく共感が得られやすいものをキチンと選び、互いの主張もある部分は分かるしある部分は明らかにおかしいという丁度いい加減になっており、終盤では白熱しすぎて互いに訳が分からなくなるところで笑いを誘えています。

5-3.ママタルト

 サンミュージック所属のコンビです。2020年以降はM-1・キングオブコント共に準々決勝へ進出しています。
 健康診断を受けに行くネタです。
 必然的に体格をいじることになるネタなのですが、コントインしてボケが身体をいじる医療従事者側といじられる本来の自分側の役を両方やることで自分が自分の身体をいじる形になっています。ツッコミはコントの外側から医療従事者側の無茶苦茶ないじりをツッコむ形となっているため、「他人の身体をいじる」という行為にしないことで観客を笑いやすい雰囲気を作るよう気を遣っています。強いていじっているところと言えば健康診断を受けると決めた相方を褒めるところですが、それ自体は正しいことですので嫌ないじりとはなり得ません。

6.忘れる。/ぺんとはうす/春組織

6-1.忘れる。

 東京NSC15期生(2009年入学)同士のコンビですが、紆余曲折の末にフリーとなった2019年に結成しています。
 もうすぐ発車する電車に乗り込もうとするネタです。
 最初はオーソドックスな漫才なんですが、途中からはずっと同じようなリズムに乗って踊ったりツッコんだりし続ける独特な形式を用いています。同じ形式をとにかく繰り返すんですけれども、きちんとその都度その都度変化をつけることにより最後まで楽しめるネタになっています。何気に繰り返しに入っている時の表情が重要だったりします。

6-2.ぺんとはうす

 東京NSC21期生(2015年入学)同士のコンビです。
 相方を占うネタです。
 明るいボケとゆったりしたボケが特徴的です。ツッコミの形を恐らく敢えて決めていて、それにより安定感を出すことに成功しています。もちろん、感情の出し方などは微妙に変化させ、後半への盛り上がりに一役買っています。

6-3.春組織

 マセキ芸能社所属のコンビです。
 牛の乳を搾る練習をするも失敗するネタです。
 「牛の性格に合わせて乳を搾る」というテーマを提示したあと、牛の乳を搾ろうとして失敗するというくだりを、少しずつ話を進展させながら繰り返す形になっています。テーマはやや特殊ですが、形式はオーソドックスです。

7.TCクラクション/アイロンヘッド/マリオネットブラザーズ

7-1.TCクラクション

 それぞれ別の事務所でコンビとして活動していましたが、解散してフリーとなった際にコンビ結成、現在はグレープカンパニー所属です。
 「〇〇じゃないけど」という言い方に突っかかっていくネタです。
 どこか自信のなさを出す「〇〇じゃないけど」という、いわば言い回しの癖のようなものを非常にうまく活用したシステムとなっています。ボケは最初「合ってるのに『〇〇じゃないけど』と言うな」というツッコミに敢えて使い続けて怒りのボルテージを上げさせ、「〇〇じゃないけど」の〇〇の部分を徐々に間違ってる方にスライドさせていくんですが、ツッコミは強引にそれも正しいというような主張をします。当然ながらそこが笑いどころとなるんですけれども、普通は強引さが気になってしまうはずなんです。その点を、貯めに貯めてきた怒りのボルテージが強引さを乗り越えるエネルギーとして充分量に達しているため、違和感なく笑うことが出来る形になっています。

7-2.アイロンヘッド

 大阪NSC30期生(2007年入学)同士のコンビです。
 芸人は夢を売る仕事だからと現実に引き戻すような言葉を使うなと指摘するネタです。
 芸人が日常的に使っている単語を、より一般的な企業が使っている単語に敢えて変換してしゃべり、そのミスマッチを笑ってもらう形となっています。最初は一般的に見て違和感のない言葉から始まり、徐々に強引さが増していく流れです。合間に何気なく言う観客への偏見がかなり効いているように見受けられます。

7-3.マリオネットブラザーズ

 大学の落語研究会の先輩後輩コンビです。浅井企画所属。
 番組で料理対決をするも大体ずるいネタです。
 対戦相手がメインディッシュを出したあとで自分が食後のデザートを出して勝利を勝ち取るなど、料理対決の後攻であることを利用した卑怯な手段で勝ち抜いていくというシステム1本で勝負しています。同じ形式を繰り返す構成であるため、笑いどころを観客に推測されやすく、その状況は観客の期待値をあげてしまうという難点に繋がっていくわけですが、全ボケが観客の期待値を上回っています。正面突破という言葉がふさわしいネタです。

 今回の感想は以上です。ではまた。

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