M-1グランプリ予選動画感想 予選3回戦 2022年10月31日13時開催分①
M-1グランプリ2022の予選3回戦の動画が次々に公開されています。1回戦の感想で割とヒーヒー言ってたはずなんですが、なんか手を出してしまいました。せっかく面白い漫才が見られるわけですし、面白ければやっぱり覚えておきたい。そのためには感想を考えて書いて、何なら載せるのが一番です。そんな奮い立たせ方でやってみようと思います。よく分からない紹介になりましたが、よろしくお願いします。
動画がたくさんありますので、ある程度の感想がまとまったら載せていく形を取って参ります。百人組手みたいに感想をかいてますので、雑な部分があるかもしれませんし、あまりにあれだったら後でコッソリ書き直すかもしれません。何ならここのメッセージだって使い回してます。言い訳が済んだところで、早速参ります。
1.エルフ/フランスピアノ/ゆにばーす
1-1.エルフ
大阪NSC38期生(2015年入学)同士のコンビです。
不動産屋の練習をするネタです。
当然なんですが、ボケがほぼギャル一辺倒となっています。キャラクターメインということもあってか、ネタのテーマは不動産屋というオーソドックスなものであり、何でしたら合間にギャグを挟むところももはや王道と言える形式だと思われます。分かりやすい漫才です。
1-2.フランスピアノ
グレープカンパニー所属のコンビで、キングオブコントでは準々決勝の常連です。
中華料理屋に行くネタです。
「店員同士が喧嘩して客が止めに入ることを利用してメニューを運ばせる」という独自システムをまず提示して、観客に理解してもらったらすぐシステムの応用的手法に移るという形になっています。店員が喧嘩を始めてから客が異変に気づくまでの過程でリアリティを出すためにはそこそこの時間を必要とするため、必然的にやや長めのフリを要求されるネタとなっています。終盤の応用を含め、ストーリーとしてはちゃんとまとまっている印象です。
1-3.ゆにばーす
M-1グランプリでは既に3度の決勝進出経験を果たしているコンビです。
合コンで浮気した話を聞くも浮気した方に同情するネタです。
ややこしい説明ですが、「適当に言い争っているだけなのに話がスムーズに進んでいる」と思わせないレベルで話がスムーズに進んでいます。浮気した人に同情して元カノを罵倒し、ようやく浮気した人を攻めるかと思えば浮気した人の下半身を独立した人格として扱い、最後にはトリオとまで言う。そんな感じで言い争ってる間に話題を極めてうまく進めています。下ネタを盛り込んではいますが、ボケがそういうキャラクターであることを世間にある程度認知してもらっているため、特にお笑い好きの人にとっては何も違和感がなく、当然のものとしてネタを楽しむことができます。キャラクターや時世を単純に盛り込むわけではなく、本当に必要なところできちんと使い、効果的な結果をしっかり生み出しています。
2.9番街レトロ/シマッシュレコード/観音日和
2-1.9番街レトロ
同じ事務所の先輩後輩コンビです。
彼女に仕事を当ててもらうもフィギアスケーターと言われたことでフィギアスケーターとして通すことに決めたネタです。
独特なテーマを冒頭で提示したあと、それによって起こる出来事を見せるわけなんですが、中盤では実は芸人であるという事実が言動でバレかける話に移って展開を変化させ、終盤は本当のことを彼女に伝えさせるため何らかの勝負を挑むという形にもっていくなど、場面の変化をスムーズにやってのけている点が特徴的です。平坦なトーンでしゃべるボケに対して、動きや言い方に変化をつけるツッコミがうまくネタを回しているように思われます。
2-2.シマッシュレコード
同じ事務所の先輩後輩コンビです。
ギターまねっこゲームをするもうまくいかないネタです。
楽器を持つということは、ネタの範囲が「その楽器を使う」というものにどうしても狭まりがちなんですけれども、その狭められた範囲の中でもうまく遊べるということを示しているようにも見受けられます。特にこの組の場合は、歌ネタの王道でもある「歌詞で笑わす」という手法はなく、これまた比較的用いられがちな「歌の間に相方が言葉でツッコミや茶々を入れる」手法でもなく、楽器の演奏でボケる比率が非常に高いという特徴があります。楽器の上手さだけでは笑いに繋がりませんが、楽器の上手さを真っすぐ笑いに繋げている印象を受けました。
2-3.観音日和
本物のお坊さんコンビです。ホリプロコム所属。
お経のコンサートを開こうと考えるネタです。
実際のお坊さんということもありまして、仏教関連のものをそれ以外のものに無理やり適用したり、反対にそれ以外のものを仏教関連のものに適用したりと、いわゆるミスマッチで笑いを取る形式を貫いているんですが、観客に通じるギリギリの仏教用語を持ってくる手腕が光った印象です。
3.井下好井/四千頭身/ななまがり
3-1.井下好井
同期のコンビではありますが、出身がそれぞれNSCの大阪校と東京校と少々特殊な状況になっています。
あげることで満足する「ギバー」、もらうことで満足する「テイカー」、あげたものともらったものが釣り合ってることで満足する「マッチャー」を扱うネタです。
独特なテーマなんですが、誰しもが理解できることでもあるため、ネタとしては非常に適切だと思われます。最初は言葉の定義を説明しながらウケを狙い、観客に認識してもらった途端、お笑い的な応用を始め、ラストはネタ中にやってきたことをうまくまとめつつも、更にもうひとつ話を発展させて終わります。多彩な内容をスキなくまとめた印象です。
3-2.四千頭身
既にしっかりと売れているワタナベエンターテインメント所属のトリオです。
歌詞っぽい言葉しりとりをするネタです。
オリジナルのゲームをベースに、同じオチにもっていかせようとすることでウケを狙うシステムとなっています。最初は見逃すけれども2回目には観客も認識する、という要素を盛り込むのが上手な印象です。また、ラリアットをラリーアットと敢えて言ってるようなのですが、このネタの場合はなぜかそれが正解に思えてきます。恐らくは言葉のテンポに関係すると思うのですが。
3-3.ななまがり
キングオブコントでは2016年に決勝進出、M-1グランプリでも準々決勝の常連となっています。
ハリウッドのアクション映画で小粋なジョークを言いながらふたりで打ちまくるネタです。
事実上「小粋なジョークが何ひとつ理解できない」という一点で突破する形式で、ネタの構造もどちらかと言えば繰り返しが多く王道に近いんですが、話の進展や見せ方の多彩さで繰り返し感がかなり薄くなっています。むしろ、最後の謎かけまで全部分からないという一貫性に斬新さを感じてしまうほどです。
4.ドンデコルテ/どんぐり兄弟/ヒガスミ
4-1.ドンデコルテ
事務所の先輩後輩コンビです。
駅員に絡んでいる人から駅員さんを救うネタです。
話が経過するにしたがってクレームを入れている人の意外なプロフィールが次々と判明するシステムで最後までいく形となっています。いかに意外性のあるものをいかに自然な流れで出していくのかが重要になるかと存じますが、かなりの高水準を維持しているものと思われます。特に、突然相方のファンだと判明しているところが効いています。
4-2.どんぐり兄弟
松竹芸能所属のコンビです。
ゲームをやるもボタン配置がとにかくおかしいネタです。
「ボタンに何を配置するか」と「ボタンをどのように組み合わせるか」の2本柱が主なシステムとなっています。たまにボタンを追加しつつ、セクシー系や政治ネタなどで軽くギリギリを狙いつつ、最後までいく形です。序盤の話が全くかみ合わない感じがよかったかと存じます。
4-3.ヒガスミ
大阪NSC42期生(2019年入学)同士のコンビです。
冠婚葬祭の意味を聞くネタです。
「冠婚葬祭の意味を聞くも、答えが冠婚葬祭に似た別の言葉だった」というシステムで最初から最後まで行く形となっています。別の言葉がだんだんと発展していくわけですが、文字数が長くなる傾向が強めです
5.オドるキネマ/人間横丁/軟水
5-1.オドるキネマ
同じ事務所の先輩後輩コンビです。
自分をペットで飼うとしたらサイズはどうすべきか相方に尋ねるネタです。
ペットとして小さいサイズの相方を飼い始め、だんだん気に入っていく様子を楽しむ形となっています。1場面をたっぷり使う、コント要素の強いネタです。
5-2.人間横丁
スクールJCA29期生(2020年入学)同士のコンビです。
みんなが熱中できるスポーツを提案するネタです。
にこやかでおっとりした雰囲気がありつつも何をやり出すか分からない部分があるボケと、それに戸惑いながらツッコむいかにも気の弱そうなツッコミというキャラクターが独特なコンビです。ふたりとも話すスピードがゆっくりなので、短い言葉で効率的に意味を伝え、しかも笑えるようにうまく調整していますし、言い方にも気を配っている様子が見られます。自身のキャラクターも当然踏まえて判断されています。
5-3.軟水
大阪NSC35期生(2012年入学)同士のコンビですが、吉本を一度離れたのち、東京NSC22期生(2016年年入学)として再入学した経歴を持ちます。
友人と肝試しに行って怖い目に遭った体験を話すネタです。
最初に1分程度費やして怖い話を一通り話し終えた後、順を追って肝試しに行った友人がさほど仲良くないことを次々に指摘していく形になっています。後半の伏線回収でより多くの笑いを得るために、最初の1分は敢えて笑いのない長いフリに費やしたものと考えられます。
6.ラタタッタ/キンボシ/リップサービス
6-1.ラタタッタ
東京NSC20期生(2014年入学)同士のコンビです。
人間ドックを受けるネタです。
ストーリーの進行に応じてボケたりツッコんだりするというオーソドックスな形式ではありますけれども、観客の予想しえないようなボケやツッコミをコンスタントに出し続けるという、基本とは言えなかなか大変なことを全般にわたってやってのけている点が光っていました。それゆえに、徐々に観客の笑いも盛り上がっていき、終盤のGACKTさんでピークを迎えられたように思います。
6-2.キンボシ
東京NSC16期生(2010年入学)同士のコンビです。
日本酒の名前か力士の名前か当てるクイズを出すネタです。
2択のクイズですとボケの種類が限らてしまい、実際ボケが窮屈そうな印象が見受けられるんですが、そもそもクイズ自体が単体の企画として使えるレベルで面白いため結構何とかなってるという、ちょっと珍しいネタになっています。
6-3.リップサービス
主に沖縄で活動しているフリーのコンビです。
探偵もののドラマをやるネタです。
「探偵ドラマのコントに入ろうとするも、振られた役が犯人だからとコントインを拒否する」という形式を多用する形になっています。終盤でで変形版を見せた辺りが最もウケておりまして、もう少し早くても全然耐えられそうに思いました。
7.ワールドヲーター/ナイチンゲールダンス/きしたかの
7-1.ワールドヲーター
太田プロダクション所属のピン芸人4人で組んだユニットです。
ヤバいオタクの人をいじるネタです。
基本的にはツッコミの他にフリ役とオチ役のと外側から茶々を入れる役を設け、振って落として茶々を入れるという形式になっています。ネタ中に2次元の相方が増えてもその傾向は同じです。
7-2.ナイチンゲールダンス
東京NSC22期生(2016年入学)同士のコンビで、昨年のM-1で初の準々決勝に進出しています。
セレクトショップに行くの店員がいろいろダメなネタです。
ボケの声が絶妙に面白く聞こえるため、普通にボケるよりもウケがよくなっているのではないかと思われます。とぼけたキャラクターが声と合っているのも大きいでしょう。
7-3.きしたかの
ワタナベコメディスクール14期生(2011年4月入学)同士のコンビです。
ルームシェアの相手に自分のアイスを食べられたと文句を言うも、新事実が明かされるネタです。
キレるツッコミは数多くいますが、中でも極めて高い熱量でキレるツッコミが特徴的です。アイスを勝手に食べた同居人の新事実を明かすことで高熱のツッコミに哀愁をまとって何だか面白く聞こえるという、激しめの化学反応を見ているかのようなネタでした。
8.いぬ/万福/初夢コスモ
8-1.いぬ
今年のキングオブコントで初の決勝進出を果たしたコンビです。
道端で人とうまくすれ違おうとするも全部失敗するネタです。
「いかにすれ違いを失敗するか」という考え方だけならばオーソドックスなんですけれども、この組はとにかく運動量でカバーすると申しますか、動きまくって取っ組み合って投げて蹴ってと、いわゆる肉体言語で会話する漫才となっています。特殊かと言えば十二分に特殊です。
8-2.万福
SMA所属のコンビです。
好きな人について話すネタです。
40代の人が40代の人を好きになったけれども、恋愛に関する相談が学生レベルというミスマッチを笑ってもらうネタとなっています。基本的には年齢や年代を材料にボケたりツッコんだりしています。
8-3.初夢コスモ
同じ事務所の先輩後輩が組んだトリオです。
嫌な人の特徴を次々に言っていくも、それを相方がついやってしまって大変なことになるネタです。
「『これをされたら嫌だ』という行為がスイッチとなり、その行為を嫌う相方が自動的に特定の言動をする」という独自システムの活用に終始しています。途中からは「嫌いな行為」が他の人にそのまま移るなどしてゴチャゴチャになるわけですが、ゴチャゴチャ感も笑ってもらう形式だと思われます。ものすごい練習量を感じさせます。
今回の感想は以上です。ではまた。
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