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機械に心を奪われてはならない

 機械の動いているところは見ているだけで楽しいものです。工事をしている重機とか、電車が連結する瞬間とか、何なら自動シャッターでも未だに「おおー」と思いながら見てしまうんです。

 機械の最たるものはコンピューターの類です。現在ではパソコンとかスマホなんかが身近なコンピューターの筆頭でしょう。新しいものを買うたびにビックリするような新機能がくっついてくる。「え、何、こんなんできんの」と毎度毎度驚かされます。まあ、人間、何事にも慣れるもので、新機能も使いこなしていくうちに新鮮さが失われ、日常にあるものとなっていくんですが、何年か経って買い替えの時が来るとまた驚かされる。どこまで進むんだ技術、とツッコミのひとつでも入れたくなります。

 当然ながら、新機能のついた新しい機械を購入するのは私だけではございません。他の人だって日々新しいものを買い、その新機能に驚き、そして順応していくのでしょう。近所のお宅もまたそうでした。

 最近では防犯カメラが珍しくなくなりました。公共のものはもちろん、一般家庭の玄関先にちょこんと設置する場合も増えております。機械が気になる私、もちろんいろんな防犯カメラを見つけては「お、カメラだ」と思うことを日課にしております。

 ご近所の玄関にも新たに防犯カメラが設置されました。それ自体は特別珍しい話ではございません。しかし、そのカメラはちょっと様子が異なりました。近くに人が来ると、それに追尾するかのようにカメラが自動的にその人の方向に向くんです。

 「家庭用防犯カメラもついにそこまできたか」と驚きました。いや、もちろんそういうタイプのカメラはもっと前からあったんでしょうけれども、一般家庭の軒先でそんなカメラを初めて見かけた私は外見こそ平静を装っておりましたが内心は不思議な踊りのひとつやふたつやってしまうレベルの大はしゃぎです。

 追尾型カメラのあるお宅の前を通る私にも当然、カメラが向きます。ちょっと試しに、ごく自然な感じで後ろ歩きをかましたところ、やっぱりカメラは私を追うように動く。どういう仕組みなのか知りませんが、よくできたカメラです。

 このまま追尾カメラ宅の前を2往復3往復としたいところでしたけれども、その時は出勤途中でしたし、何よりそんなことをしていたら追尾カメラ宅の方々から見た不審者ランキングトップ5にランクインしかねません。泣く泣く最寄り駅に急いだ次第ですが、当然ながら次の日もその次の日も、出勤時に追尾カメラ宅の前を通るたび、カメラが気になるわけです。チラ見して「おお、動いてる動いてる」なんてほくそ笑む。

 ある大風の日にカメラを見ると、なんかいつもと違う方向を向いていたんです。何だろうと思ってカメラの先を見ると、どこかで乾かしていたのが飛ばされたのでしょう。道路の脇にビニール傘が開いた状態で転がっている。一応、ビニール傘のそばまで来てカメラのほうを見ると、レンズがバッチリこちらに向けられている。ビンゴです。カメラは飛ばされた傘に反応し、不審者と見なして撮影していたのでしょう。

 多分、私は追尾カメラ宅の方々から見た不審者ランキングトップ10には入ってるんじゃないかと思います。今後は機械に心を奪われないよう精進し、不審者ランキングから脱したい所存です。何卒よろしくお願い申し上げます。

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