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旅とサッカーのマガジンが静岡県を本にするとこうなる【無料公開】


 OWL magazine代表に居座っている中村です。世の中に不安がうずまく状況に突如なってしまいました。

 思えばぼくが「夢」や「エンタメ」など楽しいことをしようと思ったのは、311の大震災があったときのことでした。世間を暗いムードが覆う中で、当時聞いていたPodcastチャンネル『東京ポッド許可局』が、番組を無料公開しました。

 被災している皆さんが少しだけでも苦しみを忘れられたら……という趣旨でした。不謹慎だという人もいましたが、救われたという被災者の声もありました。ぼくはアワビの研究者でしたが、自分には何もできないことに絶望し、のちに大学を飛び出していくことに繋がっていきました。

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 というわけで、この記事では、脳天気に静岡県へのサッカー旅取材のプランニングを書いていきます。静岡県と向き合うならこれだよな、という中村の取材プランを事前にばらしてしまう内容になってしまうので、ネタバレが嫌な方(いるとしたら相当ディープなすたすたぐるぐるファンですが)は読まないようにしてください。

 といっても、プランニングと、実際にできあがるコンテンツは大きく異なります。だから、読んでしまったので面白さがそがれるということもないとは思います。

というわけで……。

中村慎太郎

OWL magazine創設者。株式会社西葛西出版代表取締役。タクシードライバー。サッカーを愛する皆さんに伝えたいのは、自分の応援するクラブ以外を知ること!!旅とサッカーを紡ぐOWL magazineと共に、日本全国を庭にしよう!!

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当時の著者

いまより20kg痩せている
襟裳岬沖 8日間の航海
ハマドリちゃんを先取り。頭の上にいるのはタカアシガニくん。うしろが観察&実験につかっていたFRP水槽


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 はい、というわけで静岡県の話です。

 西葛西出版から展開するサッカー旅の本『すたすたぐるぐる』は既に埼玉編と信州編が発売されています。今年取り組むのは、静岡、島根、福岡の3県です。

 今日はそのうち静岡県について書きたいと思います。

 というのも一番プランニングに難航したからです。実は島根が一番簡単であっさり決まりました。福岡についても、高円寺のスポーツバーKiten!のふくやん選手に執筆依頼をするなど、割と身近なところおで著者が集まったのでうまくいきました。

 そして最後に残ったのが静岡です。ある程度できているのですが、現状でも完成図は見えていません。

 ぼくは、『すたすたぐるぐる』については、プレイングマネージャーのような仕事をしています。つまり、企画を立てて、著者を探して依頼し、自分でも書くわけです。

 静岡編では3記事を担当することになりました。もしかしたら2記事になるかもしれませんが。

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 その前に静岡県にサッカーチームまたはクラブはいくつあるでしょうか(学生サッカーは旅の目的地にはなりづらいので基本的には対象としていません)。清水エスパルス、ジュビロ磐田が2トップです。

 Jリーグのクラブは、アスルクラロ沼津、藤枝MYFCもあります。JFLの王者Honda FCもあり、フットサルのアグレミーナ浜松もあります(もちろん、Fリーグといえばの五十嵐メイが出動します)。ここまでで6チームです。

 さらに我々は旅の目的地として、岳南F・モスペリオ、焼津FC、伊豆SSも加えました。それだけでは終わらず、某チーム(シークレット!)にも行きます。他にも未定ですが目的地がもう一つあります。

 サッカーチームがあまりにも多すぎて、全体の統合性を取るのが難しいというのがサッカー王国静岡の本を作る上での悩みです。地域という文脈でいっても、磐田、清水だけで1冊の本でも表現しきれないだけの内容があるわけです。Honda FCも同様ですね。

 さてどうするか。

 まず、オープニング記事についてです。冒頭の記事は、書籍の趣旨を表現した上で、その後も読み進めようと思ってもらえるほど面白い必要があります。だからハードルが高いです。福岡編と島根編に関しては、ぼくではなくなるかもしれませんが、静岡はぼくが書くことになると思います。

 ではどこへ行こうかと考えた時に、まずぼくが考えたのは清水と磐田のどちらにするか、です。ただ、磐田は旅として描くのはなかなか難しい土地です。磐田にあるスナックを全県ピックアップするなどの努力もしてみたのですが、ギャンブル性が高く、冒頭を飾る記事にできる確信ができませんでした。それでも何とかこじあけられる可能性はあるのですが、旅記事というものは、旅に出る前にどれだけ嗅覚をきかせるかで勝負が決まるところがあります。

 それは、サッカーでいうと、ふわりと浮かせたロブパスをディフェンスの背後に出すようなものです。確実にパスが通る保証がはないが、そこに誰かが走り込めば大チャンスになるかもしれない。そういうタイプのパスです。遠藤保仁選手が出した何気ないパス。ボールはゆっくりと進むがディフェンスは誰も触れない。そして、そのボールが誰に辿り着くのか、パスの出し手以外は誰もわからない。そういうタイプのパスです。

 信州編では松代に賭けましたし、その賭けには勝ったと思っています。

 それでいうと、そこは磐田でもないし、清水でもないなというのがぼくの嗅覚です。もちろん、磐田も清水も良い記事に仕上げたいのですが、ぼくがいってオープニング記事にするのはちょっと違うかなという感触です。

 磐田よりも清水のほうが面白いことは起こりそうではありますが、もっと意表をつく必要があります。サッカー王国静岡の人であっても、想像だにできないような、意識の裏をついたパスを……。

 としたときに考えたのは、静岡県の特徴は何かということです。

・サッカー王国
・お茶
・富士山
・横に長い
・駿河湾(深海魚)
・工業地帯
・浜名湖
・伊豆

 などなど。

 あ、そうか。富士山だよなと気づいたときに、岳南Fモスペリオというクラブがあったことを思い出しました。富士市、富士宮市を本拠地とするサッカークラブです。

 OWL magazineでは、狂気のハーマイオニーことHarako氏が開発した「山のちサッカー」という試みがあります。登山したあとにサッカーを観るのです。

 ということは富士山に登ったあとに、岳南Fモスペリオの試合を見に行くといいのでは……。ということで、富士山の開山日とモスペリオの試合日程をみるとちょうど良い日程が……。

 でも、ただ登って降りてきて、試合を見るだけだとまだ面白くありません。もう少しひねりが必要です。そこをどうするかは、実はノープランです。旅というものはあまり細かいところまで決めないほうがいいのです。

 これが1つめ。

 もう1つは藤枝MYFCです。なんで藤枝を書くかというと、書く人が見つからなかったからという消極的な理由です。藤枝への観光旅はなかなか難しく、正直頭を悩ませています。焼津が近いのですが、焼津FCもあるので、藤枝は藤枝で完結したいところです。

 と考えると、藤枝はあれしかないかなというところです。大井川鐵道のSL電車は、非常に美しい景観を走り抜けて、温泉地へと辿り着きます。

 ただこれ、執筆難度がとても高いです。いいですか、みなさん。車窓を書くわけです。車窓というのは見るものであって、書くものではありません。だから動画とは相性がいいです。一方で書こうとなるとかなりシビアな挑戦になります。

 藤枝をどう料理するか。これはシンプルでそぼくな味の魚をどう調理するのかです。ヤガラのすまし汁のようなものです。

 いや、そうじゃない。サッカーにたとえよう。戦力が拮抗して面白いことが起こりそうにない試合。このまま0−0で終わるような試合展開。そこで途中出場が決まったジョーカーとしてのぼく。その試合を壊すのが仕事です。平穏でのどかな藤枝をどう切り崩すのか。家族連れでいくというのも一つのアイデアですが、一人のほうが身軽なのもあります。

 さあどうするか。と書いているうちに閃いたので探してみます。サッカー好きがいそうなスナックを。

 さて、最後の話題です。こうやって一つ一つ企画を作っています。他の著者とも打ち合わせをしながら。ただ、どうしても「箇条書き的」になってしまいます。面白いところが多いのだけど、全体の統合性をどう取るのかが決まりません。

 『すたすたぐるぐる』は、短編集ではありますが、全体としても一つの意志をもたせたいと思っています。

 と思ったときに、静岡県の特徴としてもっとも名高い、いや悪名高い「横に長い」という特徴を思い出しました。

 ぼくの愛する「新幹線こだま」はなかなか静岡県を抜けてくれません。一度下道で名古屋から東京へと戻ったことがあるのですが、そのときは静岡を抜けるのに6時間以上かかりました。

 静岡県は横に長い。ある種の畏怖と共にみんな通過していきます。そう、通過していきます。

 ああ、そうか。そこだ。この横に長いということを表現しつつ、静岡県の西部、中部、東部へのコントラストを表現することが大切だと気づきました。

 すたすたぐるぐる歩いていこう!

 自分の足で歩くこと、自分の目で見ること、自分の頭で考えること。われわれにとってはそれが旅です。静岡県を歩いてみよう!!

 静岡県は東西に150 km以上の長さがあります。直線距離を移動できるわけではないので、おおむね177 kmほど歩く必要があります。とすると、時速5 kmで歩くとしたら、36時間かかる計算になります。そのくらいなら何とかなりそうだ!!

 他の仕事もありますが、macbookを背負っていけば問題ないはずです。きっと、自分の足で歩いて行けば何か発見があると思います。色々な出会いもあるのではないでしょうか。

 そう、これこそが旅です。

 かつて、人々は東海道を歩いて往復していました。ぼくはもう41歳ですが、まだそのくらいなら歩けます。でも、どこで体調を崩すかわかりません。

 やるなら、今なのです。

 というわけで静岡県の最西部、湖西市の新所原駅から歩き始めて、最後は神奈川県に入り、箱根の関所をゴールとするプラン。

 これをどうまとめるか。物書きとしての本能がうずうずします。今の人なら多分動画コンテンツを作るでしょう。ウェブの人なら写真を中心のコンテンツにすると思います。しかし『すたすたぐるぐる』は文字の世界です。

 この旅をどうやって文字で、文章で表現しようかと今からわくわくしています。

 ただ、旅にでるまえに、必ずやっておく必要があります。それは荷物を減らすことです。できればお腹についている荷物を5kgは減らしておきたい。私が望むのはそれだけです。

 静岡県なんか歩いても何もないって?

 サッカーを愛するぼくにとっては、馴染みのある地名がたくさん。

 サッカーがあるおかげで、こんなにも楽しく旅をすることができる。サッカーのおかげでこんなに楽しい人生が送れる。感謝の気持ちと共に……。

 歩くぜ、177km!!!


すたすたぐるぐる歩いていこう!


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