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【第38回】マジック・サム/ウエスト・サイド・ソウル

早くに亡くなったミュージシャンは数多くいるけれど、「マジック・サム」の場合はその中でも群を抜いてそれを惜しむ声が多い気がする。それは死に様がとても可愛そうだから(働かされ過ぎ?)というのもあるのだろうけれど、やっぱりマジックさんの残したものがとても素晴らしく、そして可能性を感じるものだったからなんだろうなと思う。まあ、私には可能性とか難しいことはよくわからないけれども、この「ウエスト・サイド・ソウル」はシンプルにカッコ良いなと思ったLPだ。
このLPはジャケットがあまりに毒々しい色合いをしていて(見ていると目がチカチカしてくる)、あまりカッコいいとも思えずなかなか手を出せずにいた。なかなかお手頃な価格というものでもなかったし。ただ「早く逝った天才」とか「天逝のギタリスト」とかいろいろ言われてるので、やはりこれは聴いてみなければいかんなと思い、なかなかハードルのあがった状態で聴くことになった。
このハードルのあがった状態って結構難しいもので、私は昔からハードルを上げ過ぎて「期待していたほどじゃない」とか、「思っていたものと違う」みたいにガッカリしちゃうことが往々にしてある。安いからついでに買ってみましたくらいのテンションのほうがハマったりする。
それから私は天邪鬼なところがあるので、あまりに周りの評価が高かったりすると、穿った見かたをしてしまったり。「言うほど良いかなぁ?」なんて知ったようなことを言ってみたくなったりするちょっと面倒くさい人間である。
でもこのLPはそんなこと関係なく、そして文句なくカッコ良かった。1曲目の「ザッツ・オール・アイ・ニード」でいきなり爽やかなポップ・ソングで度肝を抜かれたけれど、2曲目以降はマジックさん流のカッコよいブルースが聴ける。この人のブルースってあっているかわからないけれども、しっかりブルースしてるんだけど泥臭くなりすぎず、どっしりとしてるんだけどスリリングな感じ。マジックさんは早くに亡くなったということで、勝手に悲壮感漂う重めのブルースをイメージしていたんだけれど、決してそんなことはなく、逆に軽快な雰囲気のブルースに近いんじゃないかと思った。
特に私はA面2曲目の「アイ・ニード・ユー・ソー・バッド」と3曲目の「アイ・フィール・ソー・グッド」の流れが鳥肌が立つほど好きで、こうなってくると1曲目の爽やかポップ・ソングも好きになってくる。B面もブルースの定番曲である「スウィート・ホーム・シカゴ」や、「オーティス・ラッシュ」も演っていた「マイ・ラブ・ウィル・ネバー・ダイ」とか耳に馴染み深い曲も収録されているし、全体的に捨て曲なしの実に聴き応えのあるLPだ。これは確かに早くに亡くなられたことが惜しまれるのも納得ですな。
最後にLP名についてどうでもよい疑問を1つ。「ウエスト・サイド・ソウル」ってなんで「ソウル」なのだろうか。「ウエスト・サイド・ブルース」で良い気がするのだが。がっつりブルースしてるんだし。ソウルの要素も含まれているのだろうか。まあ、聴くのにはどうでもよい話です。

死してなお
聴くもの魅了
青(ブルース)魔法(マジック)

季語はブルース。

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