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古いオランダのレース(変わった編み方)

 上の写真のドイリーは

 『Alte Holländische Häkelmuster
(古いオランダのクロッシェ図案)』 (Rosenheimer, 1984)

という本に載っていたデザインを、自分で編んでみたものです。
 タイトルからわかるとおり、この本は現代のデザイナーの作品集ではありません。昔から伝わる古いレース編みの作品を記録し、その編み方を解説した本なのです。
 小型ですがハードカバーのかっちりした造りで、いかにも「伝統文化」という雰囲気。写真は禁欲的な白黒で、日本の手芸本によくある「カンタン・おしゃれ・かわいい」という世界とは対照的です。ドイツ語の本ですが、オランダ語の原書から翻訳されたのだそうです。

Viereckiges Deckchen (四角のドイリー)

 このデザイン、レース編みに詳しい方は「どっかで見たことある……」と思われるかもしれません。
 2011年に文化出版局から出た『アンティーククロッシェより 50のモチーフと22の作品集』という本の中に、これとよく似たアンティークレースが載っています。初めは同じだと思っていました。でも実際に編みながら編図を見比べると、かなりいろいろ違っていることがわかりました。
 たとえば上の写真で、模様を構成している小さな四角形。「うね編み?」みたいですが、そうではないのです。
 「うね編み」は、前段のステッチの頭にある2本の糸のうち、つねに奥の1本だけをすくって往復編みすることでできる編地です(往復しなければ「すじ編み」になる)。ところが上の作品では、つねに手前の1本だけをすくって編むよう指示されているのです。
 ドイツ語の指示に目を疑ったのですが、確かに「手前の(vorderen)」と書いてある。そのとおりにすると、「うね」のないざっくりした感じの編地になりました。
 本の写真だけ見て「うね編み」だと思いこんでいたので、実際編むまでは違いに気づかなかったのです。人間の目っていい加減ですねえ。この編み方は、ここで初めて知りました。
 上の写真の作品では、周囲の四角にピンクの糸を使ってみました。これは本の指示にはないことです。ピンクの四角は、一つ編むごとに糸を切るのではなく、全部つなげて編んでいます。ピンクの背後に、ベージュの鎖を水平に渡してあります。
 (でもやっぱり、1色で編んだほうがよかったかな)
 文化出版局の本『アンティーククロッシェより 50のモチーフと22の作品集』は、フランス北西部・ノルマンディーで購入されたアンティークレースが元になっているそうです。ヨーロッパのどこかで誰かが考えたデザインが、少しずつ変化しながら各地へ広まっていったのでしょう。そしてついには日本にも到達したわけです。最初に編んだのはどんな人だったのか? わからないからワクワクするのです。

 このパターンは Viereckiges Deckchen (四角のドイリー)という名前で Ravelry に登録しました。 自分の作品としては、Traditional Square with Pink と名付けました。
 

 


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