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年月経ってから響く言葉

"書き続けてください"

中学の卒業アルバムの寄せ書きのページ。
色々書いてもらった中の一つです。

そう書いてくれた同級生の彼の印象は、
地味とか、大人しいとか。
声は小さめだし、いわゆる
"陰キャ"といったほうが説明は早いでしょう。

彼が、村上春樹氏の
海辺のカフカを手にしているのが
けっこう印象的でした。

私はその頃、
映画化で話題だったノルウェイの森を
読んでいたからかもしれません。


また彼は、ギターがとても上手でした。
3年生の文化祭のときは、
今だと、"陽キャ"と言われるグループと
ステージで演奏していました。

Tシャツやジーンズの陽キャに混じって、
一人学ランにニット帽という彼の格好。

なんだかそれが異様、
といったら、とても失礼なのですが。
まあ、正直そんな印象もあって、
記憶に残っています。


ちょっと目を背けたくなる思い出

中学3年生の私は選択Aという授業で、
国語を選んでいました。
(選択Aが得意科目、
選択Bが苦手科目、だったような)
(Bではもちろん数学)

その頃、いわゆる「厨二病」を拗らせていた私。

村上龍氏の「69」に
触発された作品を書いていました。
(これも映画化で話題だったと思います)

作品は、製本テープも配布され、表紙も作り。
キッチリした形で仕上げられたものでした。

しかも、それらは、
文化祭の展示品で並べられたのです。

今考えると、なんて恐ろしいことか!

JANコードを手書きで書いて、
意味深な数字を羅列するなど、
今思い出すと苦笑いばかりするものです。


二次創作モドキみたいなのを
校内におっぴろげていた
という事実に気付いた数年後…

それでも当時は、
芥川賞とか、直木賞の言葉に触発されていて。

オマージュ、という
綺麗事を添えて、色々と物語を書いていました。

もちろん、一次創作も書いていましたが。
書いてて印象に残っているのは、
この二次創作モドキです。(あー恥ずかしい!)

一定期間、並べられたあとは、
授業で製作したものなので、当然、

先生の評価がついて戻ってきます。

「なんか、尾張さんのこれは、
中学生が書いたみたいじゃないね。
大人びているよねぇ」

そりゃあ、そうです。
触発されている作品が作品なのだから!

きっと先生は、「(中)学生らしいものを」と
言いたかったのかもしれない、など。
ようやく数年後に思い返し、気づくのです。

(当時の国語担当の女性の先生に、キラキラっと
憧れを抱いていた私は「大人びてるって〜!」と
ルンルンなのでした…わぁ……涙)

返却されたあとも、仲のいい友達の間では
回し読みが続いていました。
恥ずかしながら、友達たちの中では
なかなか面白いと評判でした。

そういうこともあって、私のその頃の夢は

「芥川賞を受賞する!有名になる!」

まだあの文集持ってる同級生、います…?
なにとぞ、なにとぞ、

焚き火の燃料にでもしてくださいませ。


楽しんでくれていたのなら何よりです

回し読みしていたグループの何人かは
手紙で感想をくれたりした子もいました。
(女子学生、
手紙書いたり回すの好きな傾向ありますね)

そして、月日が経って卒業式。
テンションも上がってか、
普段は話さなかった同級生にも声をかけて
寄せ書きをお願いしたりして。

もちろん、
同じクラスの彼にも書いてもらいました。

それで、当時はその一言を見て、

「サラッとシンプルに書くって、何かすごっ!」
「先生か…!?」

まだまだ、まだまだ子どもだった私は
そんな浅ーい感想を浮かべたのです。

あの頃から倍以上の年齢を重ねた私は、

海辺のカフカを愛読する彼でも
楽しめた創作ができてたのかも!?


なーんて。
一人で「ははっ」と笑い、
アルバムを閉じ、また奥にしまい込みました。


賞を獲れるように!
なんて、もう今は目指していません。

しかし、彼の寄せ書きのあの一言は、
少し迷走していた私が、
今一度姿勢を正せるものでした。

とにかく何でもいい。
どんな形でもいい。

何かは、常に書いていきたいです。

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