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私を構成する9枚 - 2022年版

どうも、ここではお久しぶりですね。öh...!です。


記事は作りたいと思って開設したnoteですが、なかなか熱を持って取り上げたい話題がなくて更新できませんでした。
まぁ軽い記事も定期的に書こうともこれから考えてはいるものの、やっぱり最初は本気で書きたい話題が欲しいと思いまして。。


そんな中、自分Twitterを開設してから丁度1年が経つんですよね(執筆時点)。

.…早い。これはその時に考えた9枚ですが、この時よりは色んなジャンルを知るようになり能動的に音楽を掘るようになった今の視点から見ると大分変わったな..…となったので、この9枚を更新する必要を感じたついでに記事も書こうと思いました。



今の9枚をいきなりネタバレするのも嫌だったので、ヘッダーに設定したのは1年前のやつということで.…(笑)

「構成する」の自分なりの定義

人によっては色んな選び方があると思うんです。「この盤をきっかけにこのジャンルにのめり込むようになった」とかもその1つ。前回はそうやって選んでたのですが、きっかけもどきじゃいけないなと思いました。
「構成する」で個人的にもうひとつ大切なのはそのアルバムに何度も戻れるかどうかだと思います。

自分もそうですが、たまーにどのアルバム、どのジャンルを聴いたらいいか分からない時があるんですよね。
「これを聴きたいけどめちゃくちゃ聴いてるし名盤だってこと十分分かってるしな~」とか「まだそこまで聴いてない盤あるけど、最初聴いた時も微妙だったしなんか無駄足に終わりそう」とか。
そんな時に「やっぱり自分はこれが好きなんだわ」そんな本来の自分を再確認できるような自分の好みの指標となったり、何度でも温かく出迎えてくれるような作品を今回選んだつもりです。

このタグをやってる方は分かると思いますが選ぶのがマジで難しい笑。自分のこれまでの音楽史を振り返らないといけないですし、自分の好みを自覚しないといけない。そして9枚に収める必要がある。
今回自分にとって決定版となるような選出はできましたが、選んだ9枚が全てではないということは最初に言っておきたいと思います。Songwhipを使用した試聴リンクも付けるので、アルバムが気になった方は是非。ではでは..  


追記)大分本気で書いてるからか文量がかなり多めになることに気づきました。ご注意ください。



Selected Ambient Works 85-92 / Aphex Twin

Play
Genre : IDM, Ambient Techno
Turning Point:"Xtal"

「音を楽しむ」ということ

まず最初に来たのは、孤高の天才Richard D. JamesのメインプロジェクトAphex Twinによる90年代UKテクノシーンを震撼させたデビューアルバム。今の視点で振り返ってみても自分の血肉になってることは間違いなく断言できるし、ここで取り上げる中では1番影響が大きかった作品。そして音楽にのめり込むようになったのもこのタイミング


このアルバムを知った経緯はなっがいので短くまとめると、まず母のiPhoneからデザインに惹かれApple製品が好きになった僕は洗練されたデザインと大容量が魅力的だったiPodを好きになり、そのプロモーションビデオを見てたら「Moby」というアーティストに出くわし、そこから歌の無い音楽がもっと聴きたいってなります。そしてwikiでテクノアーティストをアルファベット順に見ていったら1番有名そうだったのがAphex Twinだったというわけです。
つぎはぎで申し訳ないですがこれで納得して欲しい(笑)

それで、実を言うと初めて音楽の原体験をしたのが「Richard D. James Album」
当時14歳にとっては制御出来ない子供のように暴れ回る緻密にプログラミングされたドリルンベースには衝撃で、「音を楽しむ」という聴き方はここからだったかなと思いましたが、何故これを選んだかというと、まずアンビエントを好きになるきっかけだったんですよね。
この作品は「ベットルームテクノ」の先駆けとなった作品でもあり、ベットで作られたという名前の通り、どの曲もチープな機材で作られ、テープで録音されてるからか録音環境は整ったものでは無いということは一聴すればよく分かる内容です。でもそのおかげか、ただアンビエントしてるだけでなくどの曲も唯一無二の音像。なんというか子供時代を回想してるようなノスタルジーな感覚、そして胎内にいる時のような空間に温かく包み込まれる安心感。この感覚はBrian Enoが作り出したアンビエントにはないし、ニューエイジ的でもない。リチャードにしか出来ない音世界だな~って思うんです。
そして自分はここからアンビエントだけじゃなく、シューゲイザーだったりもっと言うならSmooth Soulだったりと、「包み込まれる感覚」とか癒しを音楽に求め始めたんじゃないかなって思ったりもします。


あとは曲構成とか素材の組み立て方がミニマルなんですよね。よく出来た建造物をじっくり鑑賞してるような感覚。
どの曲も反復しながら丁寧に組み立てていき、ほぐれるように崩壊していくので、シンプルな構成で作られた曲でも味わい深くなる。その説得力が凄い。思えば、ここからミニマル・ミュージックを好きになったと言えるし、テクノという括りではあるんですけれど、例えばTr.2「Tha」プログレ的な展開だったり、Tr.10,11サイケな陶酔感だったりと他ジャンルの要素も複数兼ね備えてるという色んな解釈ができる作品なので、今挙げたジャンルやその他のジャンルの入口になってるかもしれない。
重要な事としてこのミニマルな感覚に気持ちよさを感じてから、色んな音楽を素材単位まで深く聴くようになったんじゃないかなと思います。

でもこの時の衝撃が大きかったからか、歌が入ってるものを逆に聴けなくなり、しばらくIDMしか聴けない身体になってしまいます。それを打破するのはまだ先の話...…


Rhythm Nation 1814 / Janet Jackson

Play
Genre : New Jack Swing, Dance-Pop
Turning Point : "Come Back To Me"

「アルバム単位」という概念

そんな音楽の原体験から数年前に遡ると出てくるのは「King of Pop」ことMichael Jacksonの妹Janetが、前作「Control」に引き続き、80's後半から90'sのSoulの代表作を次々と生み出すことになる最高プロデューサーJam & Lewisとタッグを組んで制作された傑作4作目。
兄マイケルの「Thriller」がContemporary R&Bの代表作に対して、こっちはその派生ジャンルであるNew Jack Swing (簡単に言うならヒップホップやファンクをミックスして生まれた跳ねたビートが特徴のR&B) を代表するような作品。

ここでひとつの疑問。多分普通なら間口の広いマイケルを先に知ることになるんだけど、どうしてJanetを先に知ったかというと、親が既にCDを持ってたからというありふれた理由にはなるけど、でも親がかけてたものを聴いてたと言うよりも自主的にかけてたかもしれない。


自主的にかけてた理由は後述するとして、最初はあまり好きじゃなかったんですよね。その時はまだ小中学生だったのであまりバリバリに攻めたビートはうるさいと感じてしまいましたし、20年前なんて物凄く大昔の感覚があったので、自分が生まれてない頃の親のCDを聴くことにある種の恐怖感もあった。あと「なんでマイケルじゃないの?」という名前を聞かないアーティストに対しての壁もありましたし。
でも、繰り返し車でかかってる環境の中で何となくこのアルバムは全体でひとつのショーになってるという事が分かってから徐々にこの作品の持つ力に気づき始めます。



実際このアルバムは政治的なメッセージをコンセプトにしてるけど、サウンド面でもダンスポップの快楽が途切れぬままシームレスに繋がってる内容ですし、細かく見ても表題曲のようなメッセージ、サウンド共に攻めた曲だけでなく、「Miss You Much」や「Escapade」とかの80'sのエバーグリーンなメロディーに包まれた多幸感溢れるミドルテンポ、何度聴いても新しい発見ができる練りに練られたフックが満載のNJS時代の空気感をポップに切り取った「Alright」や、霧がかったサウンドプロダクションとJanetの官能的なボーカルに恍惚としてしまうバラード曲(#17-19)まで全方位隙がなく(各曲の個性あるサウンドプロダクションも含め)バラエティー豊かな内容が1つの線で繋がってて、聴いた後不思議な余韻が残り、また聴き返してしまう強度が強すぎるので、自分もいつの間にか手に取って聴いてしまう事が多かったのかなと思います。


色々語りましたが、1番に言いたいことはこれがプログレとかのロックアルバムではなくてR&Bでコンセプトアルバムだったということかな。母親が海外出身なのもあってどちらかと言うとR&Bに親しみを感じてたので、これがもしロックだったら音楽を好きになるまで少し遠回しすることになったのかなと

この作品を本気で好きになるにはまだ少し時間がかかりましたが、何となくここからアルバムで聴くことの楽しさを経験し、まだ音楽の原体験をする前でしたが無意識の内にアルバム単位で音楽を楽しむようになります。そして、80'sの音だったり踊れるサウンド、R&Bを好きになる原点もここかなと思います。


The Bends / Radiohead

Play
Genre : Alternative Rock, Grunge
Turning Point : "Planet Telex"

ロックの目覚め

90年代のロックシーンを席巻してたグランジやブリットポップを吸収しつつ、その方法論を解体、大胆に構築しギターロックの完成形を提示して90'sオルタナの氷山の一角へと上り詰めたついでに、前作にあった屈辱を晴らすという壮大な汚名返上話もセットでついてくる、みんな大好きRadioheadの2作目。


.…こう書いて、過去の自分に「これええよ」送ったとしても拒絶しそうなくらい、IDMしか聴けない身体に改造されてた自分でしたが、Radioheadの名は(今思えば)意外な経路で知ることになります。それがCDのライナーノーツ

自分は小さい頃から取扱説明書を読むのが好きで、初めて洋楽のCDを買った時も(この時買ったのは「Richard D. James Album」)会話形式の解説が面白かったんですよね。しかも、この時インターネットにあまり触れることができなかった自分にとっては同じ系統のアーティストを知ることができたのも収穫が大きくて、その関係でSquarepusherやAutechreなどの、Aphex Twinを中心にIDMの中でも特に最先端の音を鳴らしていたコーンウォール一派を知ることが出来て聴く幅が広がったので「CDはできるだけ国内盤で買おう!」と決めたんです。
その流れでAphex Twinの5作目「Drukqs」を購入した際にレディオヘッドの名がライナーにあったんです。まぁこの時はスルーでしたが、Autechreのアルバムを買った時も「また出てきた!」となり、気になり始めます。

そこからどういう経緯でこうなったかは忘れましたが、同じタイミングに知り合いからRadioheadの3作目と4作目を借りることになりました。

Int Ok Computer;
Int Kid A;




結果
「OK COMPUTER」→?????

「Kid A」→........Wow



Return 0;

「Kid A」にはめちゃくちゃ衝撃でした。でもそれはディスコグラフィーを順に聴いていった時のロックを捨てたという思わぬ過程に対してではありませんでした。歌物が聴けるようになってたこと、そして感動してしまったことに衝撃を受けたんです。実際今作はTom YorkがAutechreやAphex Twinを代表するIDMシーンに大きく接近して作られたので難なく聴けた訳です。Tr8「Idioteque」とか初めて聴いた時なんかは長年の呪縛が解けたような感覚でしたし。
でもその後にオケコンを聴いた時は、殺伐とした暗すぎる雰囲気に付いてこれず全然理解できなかったので突き落とされた感覚でして、歌物を好きになるにはどうしたらいいのか分からなくなりました。(今ではオケコンもめちゃくちゃ好きなアルバム)

でも、すぐにその時が訪れます。2作目を初めて聴いた日のことはまだ鮮明に覚えている。高2の晴れた日にチャリで朝通学する際に気になってた2作目をYoutubeから音源をスマホに保存してたのを耳に入れ1曲目を流した瞬間、世界が変わったなと感じたのと同時に僕の中でロックにある破壊衝動とか、鳴るべき音が今だというタイミングでギターが鳴らされた時のあの何とも言えないカタルシスを初めて感じました。

これ以降通学中のお供となるほど、テープが擦り切れるという表現が相応しいくらい、繰り返し聴いたんですが、このアルバムも全体の緩急が完璧すぎるんですよね。最後ダークに着地するのも何とも言えない余韻を生んでて揺さぶられるし、48分というランタイムもいい。
そして各曲に個性と実験性があって聴きやすいんだけど、「若さ特有のヒリヒリした感情」が全体を支配しているという所が当時の自分に1番響いた所。「My Iron Lung」の歌詞の中には「..…If You're Frightened, You Can Be  Frightened.…」(もし怯えるなら、怯えてもいい)とあって、この作品の世界観を象徴する一文かなと思うんですけれど、それがなんか自分の気持ちを全て理解してくれているような存在だったんです。だから暗い感触でも好きになれた。



まとめるなら、ここから歌物とかオルタナ全般を聴くようになったといっていいでしょう。今の好みはR&Bに偏ってるけど、久しぶりに聴くと「オルタナききてぇ...!」と戻される、まさに好みの軸足となってるそんな作品
そしてこれのおかげで、今まで敬遠してた「あるもの」を好きになる準備がやっと整います…


名前をつけてやる / スピッツ

Play
Genre : Jungle Pop, Shoegazer
Turning Point : 「鈴虫を飼う」

UKロック+日本語の奥深さ

前述で述べた「あるもの」とは邦楽のこと。そう、親が海外出身なのもあり、小さい時から洋楽ばかり接してきたからか邦楽への関心は全くと言っていいほどないというか思いっきり苦手でした

話は戻り、「The Bends」の衝撃の余韻が覚めない頃、どういうきっかけかは忘れましたが、同じクラスにいたN君と音楽の話になり、スピッツを借りることになります。
なんでスピッツにしたかというと、まぁ有名だったというのもありましたが、中学の時にも「スピッツいいよね~」と言ってた方がいたというのもあって、どうして90年代の邦楽バンドが自分と同じ年の若い人をも惹き付けてしまうのか、その理由を知りたかったんです。しかも「チェリー」ぐらいしか知らなかった僕にとっては、アルバムもたくさん出してることにも驚いて俄然気になる一方。

でも、実はスピッツは一回挫折した事があって、中3の時に既に、彼らの入門に最適解かつ邦楽の名盤としても名高い「ハチミツ」を聞いてたけれど、「なんでチェリー入ってないの?」という不満と、とにかくサウンドが明るすぎるポップなものだったので思わず避けてしまった過去があるんですよね。その時IDMバリバリだった自分が欲しかったのは音楽的に尖ってるものだったので、求めるものが全く違かったわけです。
なので、「入門にいいよー」と借りた、歌詞とサウンド共に分かりやすい「スーベニア」は序盤でリタイア。でも、ドリルンベースを通過したからなのか「スピッツのドラマーはめちゃくちゃ上手い」という事が分かります。そう、まだこの時はサウンドを中心に聴いていたんです。

その時の反省も踏まえて、次は「初期のアルバムを借りたい」とお願いします。.…まぁ実際そう言ったかは忘れましたが、初期なら自分の知らないスピッツを見ることができるだろうと思ったんです。
そして借りた2作目はとても驚いたのを今でもよく覚えてます。「ゴリゴリに攻めたサウンドに日本語?!」明らかに僕の苦手と感じてた要素はそこにはありませんでした。


まずサウンドが91年当時を賑わせていたシューゲイザーとかブリットポップ等のUKロックシーンを総括しつつ、日本の原風景を漂わせるスピッツの持つ温かいメロディーが高濃度で融合した唯一無二の音風景で、アグレッシブで攻撃的という点では似た性質をもった「The Bends」を経過した自分にとっては親しみやすかったのと、特に2作目は、メンバーも「ライド歌謡」を目指して作ったと後に明らかにしているように、シューゲイザーという「SAW 85-92」から好きになった包み込まれるサウンドが中心だったのも高ポイント。
特にこのアルバムで好きなのはTr.4「鈴虫を飼う」。包み込まれるギターサウンドに学生の日常風景が見えてくるような生活感溢れる歌詞で、歌謡の良さをじわじわと徐々に染み込むような形で初めて体感した隠れ名曲。人気のあるTr.6「プール」を抑えてアルバムで1番好きな曲にどうしても挙げてしまう。

そして1番衝撃だったのが歌詞全っ然分かんないんですよね、何言ってるか(笑)。でも、それがとても新しくさらに惹き込まれていきます。
事実、初期の草野さんはストレートに言えることをあえて関係の無い別の単語に幾つか並べ、聴き手に全体のイメージを想起させるというサウンドコラージュ的な作詞方法をしているから、1つの文であっても聴き手によって色んな解釈やイメージができるんですよね。それがスピッツの1つの大きな魅力なんですけれど、これまで読み解くような仕方で歌詞を楽しんだ事が無かった自分にとっては新たな音楽の楽しみ方でした。



ここから歌詞の楽しみ方や日本語という奥深さを知り、同時期にミスチルとかRADWIMPSも実はよく聴いていたんですけれども、邦楽というかつて自分の好みの遠くにあったものに本格的に手を伸ばし始めるのはスピッツの2ndの存在あってこそ。この流れで高校卒業してからは、レンタルショップで邦楽を頻繁に借りるようになり、海外嗜好の攻撃的なグランジサウンドが中心となった椎名林檎の「勝訴ストリップ」を始めに、くるり、米津玄師、、、前の自分なら避けるであろうメジャーなアーティストも聴き始めます。




この時期になると邦楽だけでなく洋楽の名盤にも関心がいき始め、色々借りてパソコンにインポートする日が続きますが、どれも一昔前。音楽に関して周りの同年代との話が合わないというギャップも高校辺りから意識し始めましたが、そろそろ深刻に捉え始めます。幸い専門校に通ってた時に周りから色々音楽を教えてもらいましたが、何だかしっくり来ない時も(教えて貰ったこと自体は感謝はしてます)
そんな時、金銭面を理由に手を出してなかったサブスクリプションを始めてから、この悩みに一筋の光が差し始めます。


Note On A Conditional Form / The 1975

Play
Genre : Art Pop, Electronic 
Turning Point : "Frail State Of Mind"


現行シーンを追うきっかけ

急にここに来て書く手が止まってしまった。

何せ、今を代表するロックバンド。「Part of the Band」、「Happiness」とバンドが新たな時代へと突入したことを高らかに宣言したようなワクワクする先行曲を発表した後、来月には待望の新作を控えているし、先月のサマソニでも熱狂の渦に巻き込んだのも記憶に新しい今最も注目されているアーティストだ。
僕がそんなバンドについて書いた文章が誤解を生むものだったらどうしようと思った。なんというか....…恐れ多くなっちゃうのだ。でも、そのぐらい好きになってしまったThe 1975は実は最初は好きではなかった。

きっかけはサブスクを始めた2年前の6月に遡る。多くの音楽と触れ、楽しんでいた中「The 1975」という文字に出会ったのだが、最初はそこまで情報を把握せずに1stを初めて聴いた。普通だったら、10年代のシンセポップの新機軸となった2ndか、「10年代の総括」とも言える傑作3rdを入門にするはずなんだけど、この時Twitterもやる前だったので「このバンド知ってるの周りで僕ぐらいじゃね?」とか恥ずかしながら正直思ってた。


あと意味が分からないことに「初めてのアーティストは1stから聴く」みたいな自分が設定した幾つかの謎のルールに従っていた。「美味しいものは最後に残す」的な発想だからなのか、この時の音楽の聴き方は「名盤は最後に聴く」という面倒臭い奴だったのだ。



さぁ、情報をそこまで得ない状態でThe 1975の1stを聴いたらどうなるか。


これである。実際同時期にOne Directionがブームだったのもあって、そこまで大きなバンドだとは思わなかったというか、自分に関係ないバンドだと思ったのだ。


この頃の自分の音楽の聴き方の一つに、「好き嫌いを増やさない為、また先入観で選ばない為にアルバムをランダムで選んで聴く」というのをやってた。1stも実は同じような仕方で選ばれて聴いてた。その1ヶ月後、次の日に聴くものを選んでた時に「NOACF」が選ばれた。出会いは突然である。


最初収録曲を見た時は衝撃だった。「22曲80分?!」このバンドは何なんだ..…
なんか急に気になり始めたのと同時に、短期間の間に彼らの4作の作品の内2作もランダムで選ばれたという滅多にない現象も起きたからなのか、「このアーティストを聴け〜!」と天から言われているように感じ始めた。自分としても「これを克服しないと次に進めない気がする」とそんな風に感じた。丁度次の日は日の出を見に海に出かける日だった。。


..…コロナ禍の時期ではあったが、今思うとあれは人生で最高の瞬間だったと思う。
時間はまだ真夜中、出かける車の中で耳に「NOACF」をそっと流し始める。グレタさんの演説と裏でかかるアンビエントに違和感を感じ、心が揺らぎ始める「The 1975」、同じバンドとは思えない変化に驚いた「People」、人生のドラマチックな部分を切り取ったような壮大なオーケストラがとにかく美しい「The End (Musuc for Cars)」エレクトロニカ、電子音、声のループが耳中を幸せいっぱいに駆け回るUKガラージ「Frail State Of Mind」の時点であっという間に多幸感に包まれていた。浜辺を歩きながら聴いた「The Birthday Party」は一生忘れられない素晴らしい体験。
....…これ以上は言葉に出来なさそうなのでやめておこう。出かける日にアルバムを聴くという選択は人生の中でとった選択の中でもトップクラスにいい選択だったというのは間違いなく断言出来る。


とりあえず言いたいことは今活躍してるバンドを好きになれて本当に良かったという事だ。タイトルにあるようにここから現行シーンや新譜を追うきっかけになったし、自分も分かりやすくて踊れるポップなサウンドが好きなんだということも再確認できた。
「じゃあJanet Jacksonの時に最後に書いたのは何だったの?」となるが、これを聴く前までポップではないものを聴くことが多かったから、分かりやすいものが好きということを忘れてたのだ。

さらに言うなら、22曲80分の間にガラージ等のUKエレクトロニックシーンを中心に、ハードコアパンク、カントリー、フォーク、ハウス、色んなジャンルが次々と飛び出してくるから、そのジャンルの入り口ともなってるかもしれない。
実際UKガラージなんかは現在進行形でそう。人によっては懐かしいサウンドかもしれないけれど、僕はこの作品で初めて知ったからなのかとても新鮮に聴こえる。この後にBurial「Untrue」を聴いてハマる流れに。。
今作はそういった新鮮味を失ってると思われたジャンルを、今のシーンの最前線に居るThe 1975のフィルタを通すことで新たな解釈、視点で見ることが出来るというのは素晴らしい所だなぁと思った。


そんな多要素な面があるのに、全体的にはアンビエントという穏やかな空気で統一されてるし、自己の精神世界、周囲の人間関係というテーマもサウンドと深く絡み合い相互作用を生み出してる。
自分が昔から好きな要素が作品全体の中心部分だったことがここまで惹き込まれた最大の理由だと思う


~少し休憩~


ここまでの5枚に共通したのは音楽リスナーになる前の「自分の音楽の土台を築いてくれた」という側面が大きかった作品です。

ここからの4枚は音楽リスナーになってから出会ったもので「自分の音楽の幅をさらに広げてくれた」きっかけとなっています。
出会ってそれほど時間が経ってないものもあるので、上手く魅力が伝えられないかもしれないということを最初に言っておきます。


~~


The Stranger / Billy Joel

Play
Genre : Singer-Songwriter, Piano Rock
Turning Point : "She's Always Woman"

歌の持つ真の力

自分は最初シンガーソングライターの聴き方がイマイチよく分かってなかった。なんというか「普通だよね.…?」みたいな印象しか出てこなかった。
もちろんSSWでなくても歌の良さというものは色んな音楽の中に潜り込んでるが、それはあくまでも音楽を構成する一要素としか見てなかった。どうしてもサウンドに「味付け」みたいなものが無いと聴くポイントが無くなってしまうと思ってたのだ。でも、これはそれを否定するものになった。

きっかけは昨年の年末。聴きたい名盤をまとめて聴いて年末感を味わいたい!と思い、色々ディグってた時にふと見つけた一曲がTr.7の「She's Always Woman」だった。
今思うと、有名な3曲目の方が取っ付きやすいから最初に聴くはずなんだけど、なんでこの曲を選んだかは覚えてない。でも、それを選んで聴くことにした。



.…何故だか気がついたら涙が出てたのだ。曲の中でベースとなってるのはアコギとピアノと声だけ。歌詞もこの時分からなかった。でも、自分でも信じられないくらいにボロボロ泣いているんです。
そのぐらいどこを切り取ってもメロディーが素晴らしいのと、ジョエルのボーカルも優しく響くんだけど芯があって心に迫ってくる。



この時シンガーソングライターというジャンルを認識したのと同時にこれが究極の音楽の形なんだと思いました。音楽に余計な装飾は要らない。歌詞が分からなくても声とギターだけでも心を物凄く揺さぶる事ができる。初めて音楽の良さとか力を味わった瞬間でした。
これ以降、メロディーの良さと声の良さを追求したシンプルな音楽も聴けるようになり、音楽の究極の形を体現したようなジャンルSSWを積極的に追うようになります。そして音楽の本質的な良さを味わったおかげか、ディグる時にも音楽の質の高さを以前よりも判断しやすくなりました。

もちろんアルバムを飾ってるのはTr.7のような切実なラブソングだけではない。Tr.2「Just the Way You Are」のドリーミーな要素、Tr.6,8の楽しい瞬間。プログレ的に展開するTr.4「Scenes from an Italian Restaurant」や、ゴスペルで一連の物語を壮大に締めくくるラスト「Everybody Has a Dream」色んな要素があるけど、全体から見えてくるのは「都会の哀愁」だったり、歌という普遍的なものの良さだ。

そんな人生の始まりから終わりを見ているような気分にならせてくれる完璧なアルバム。SSWというジャンルの中ではもちろん、70年代においては決して外せない大名盤だ。


Obscura / Gorguts

Play
Genre : Technical Death Metal, Avant-Garde Metal
Turning Point : "Nostalgia"

音楽という「広大な海」の中に突き落とされた瞬間

人はときたま分からないものに物凄く惹かれることがある。素晴らしいことに音楽はそんなものも数多くある。
でも、これは僕が音楽リスナーになってから今まで出会った中で最も衝撃を受けた一枚だ。それも裏切られるような仕方で(ありきたりな表現にはなるが、)頭を鈍器で殴られた感覚をもって。

アバンギャルドデスメタルの中においては今なお頂点に君臨するこの作品はカナダのデスメタルバンドの大御所Gorgutsの3作目で、98年当時の世界に何回も考察しがいのある魅力に満ちた大きな謎を与えた。
もともと作品自体は93年末にほとんど完成してたもの。でも、レコード会社には何本かテープは送ったのに対し反応0だったらしく、レーベルも98年までリリースを見送ったという話から、この作品が如何にデスメタルという枠から大きくはみ出た先進的すぎる内容だということがよく分かる。


自分はそもそもメタル自体に興味が無かった。簡単に言うなら好みとは正反対の場所にあるジャンルだと思って敬遠してたのだ。そんな時、このリストがこのアルバムに出会わせてくれた。



これはRYM(Rate Your Music)という国外では最大のユーザーによる音楽データベース及びコミュニティの中にある、実験的で前衛的だけど必聴なアルバムを500枚特集したリストで、サブスクにないノイズミュージックから有名どころではRadioheadの「Kid A」まで、ジャンル限定せずにどれもリスナーの耳を確実に拡張させる可能性を持ったまさしく決定版的な内容。


このリストにある中のいくつかは既に聴いていてどれも自分の耳を拡張してくれた作品だったので、このリストに対しては強い期待とか信頼があった。そしてディグりもこの時マンネリ化しつつあって自分を変えてくれる作品を見つけるべく徹底的にこのリストを網羅しようとしてた時に早くも自分の理想に出会ってしまった。



その内容はまさしく「大量の不協和音」。奇怪なギターのフレーズが左右の空間をカオティックに埋め尽くし、ドラムも洪水のように押し寄せる。ベースも地獄のような唸り声を上げてるかのようで、ボーカルも奈落の底に突き落とすような絶望に満ちたデスボイスが絶えず鳴り響く。曲も常に安定しない変拍子、コード進行も既定の概念を超えているというリスナーを思いっきり突き放している内容。
でも、この作品の凄いところはただ「複雑ありき」の中身のないものではなく、それらバラバラに見える要素がミクロ単位から細かく構築されてて全体が1つの生き物のように動いてることだ。


細かく見ていくとギターのフレーズはある一定のパターンで繰り返されてるし、メロディーも印象的な方法で複数回使われてて曲を読み解くヒントになってる。ドラムも決してインプロ的などっかいっちゃったプレイでもなく曲全体をしっかりと土台から支えてることが分かる。最小単位から構築されたものを繋ぎ合わせマクロ視点から見ても、静と動が急速なスピードで見事に押し引き合ってることがよく分かる。なので体感時間はかなりあっという間。こんなカオスな内容を実現した演奏やサウンドプロダクションも超一流。
Gorgutsの中心メンバーであるLuc Lemayは小さい時から現代音楽やクラシックの素養もあり、特にこの3作目はその才能が遺憾無く発揮されててデスメタルの様式にそれらが見事に落とし込まれてるというのにも納得。なので混沌としていながらもかなり中身の詰まった濃い内容で、聴いた後はもちろん疲れるが麻薬のような中毒性が物凄く、この謎を追求すべくまた戻ってしまうという不思議な魅力に溢れている。

これより前も異常な音に接してきたが、自分はここから世界中にある様々な音楽、特にアンダーグラウンドにある「異常な音楽」をもっと掘りたいという気持ちがとても強くなったんだと思う。人によってはなかなかとっつきずらいが、デスメタルが好きな方だけではなく、音楽を広く聴きたいと思う方にも一回は是非聴いて欲しい必聴の一枚だ。

.…ここまで思い返してみると色々乗り越えた自分だが、恐ろしいことにこのデスメタルより苦手なものがあと2つあった。。。





参考文献↓(このアルバムを詳細に取り上げてる記事はほとんど無かったので本当に感謝です!)

Gorgutsについても詳しく書いてある記事↓


このアルバムについての概要、この手のジャンルをもっと掘り下げたい方に↓





Voodoo / D'Angelo

Play
Genre : Neo Soul, Smooth Soul
Turning Point : "Spanish Joint"

ソウル愛に溢れた数多くの引用

名盤という理由で最初聴いた時、これはもう一生分かり合えないんじゃないかと思ってた。

Twitterを初めてからソウルの魅力を知り、そこからたどったネオソウルだとMaxwellの1stやErykah Baduの1stはめちゃくちゃ最高だった。でも、革命作とも言われるこれだけは時間がかかった。メロディーやメロウな所に安直に接続せずリズムを軸にゆっくり進んでいくのが退屈で本当に分からなかった笑。でも、今では自分の音楽史に外せない一枚となった。きっかけはこの作品の奥深さだった。


まず官能的なボーカルスタイルからも分かるように、D'Angeloはプリンス愛にあふれてる。実際これの制作時にもPrinceの各作品を毎回分析していたという。
特に顕著なのはこのアルバムの中でも取っ付きやすい「Untitled(How Does It Feel)」だろう。Princeだとピーク直前に出たアルバム「Controversy」に収録されてる隠れ名バラード「Do Me, Baby」にあたるかも。
既にPrinceは「1999」から好きになってたから、このボーカルはまず作品の苦手を打ち消す第1歩に。




さらに、この作品はプリンスだけではない。
1曲目「Playa Playa」はOhio Playerの「Players Ballin'」、10曲目「Feel Like Makin' Love」はRoberta Flackの同名の曲、5曲目「Sent it On」はKool & the Gangの1stの「Sea of Tranquillity」から引用という風に、ソウルが好きな方にとっては宝探しをしているようなリスペクトあるオマージュだったり影響を数多く堪能できる。




自分はまだソウルに関してはまだ詳しくないけど、このR&Bの過去の先人が残したものから数多く引用してる所に気づいてから、アルバムへの難解さが徐々に消えていきました。自分の好きな物が実は苦手なものに繋がってたことに驚いたのと同時に嬉しい発見だったんですよね。

ソウルと関連付けて作品を紐解くと、今作「Voodoo」は、Marvin Gayeの再到来とも言える70's Smooth Soulのリバイバルを見事に果たした前作「Brown Suger」をさらに推し進めつつ発展的にしたもので、楽曲の展開もよりジャズ的アプローチになり、セッションをそのまま落とし込んだような質感やリズムのズレによって生み出されるオーガニックで豊かな味わいが魅力となった内容で、リバイバルの枠を超えた、ここでしか聴けない独特で芳醇なサウンドになっているんですよね


この時点でも既にソウルは大好きだったのですがここから本格的にソウルへの関心が深まり始めたと思います。


さらに苦手克服のために「Voodoo」のバックを調べてた時に、全体のサウンドを作り上げたThe Soulquariansが同じく携わってるCommonのメジャーデビューアルバム「Like Water For Chocolate」の中の一曲にたどり着いてそれがめちゃくちゃ良かった!



この時は実はまだヒップホップは苦手。なんか暗くて淡々と続く感じがちょっと自分には無理と感じたというのが理由。


これを見つけた時はまだ「Voodoo」の難解さが少し残ってたけど、程よくポップでリズムの楽しさが詰まった芳醇な仕上がりに惹かれたんですよね。だからこの時点で既に「Voodoo」を好きになってたのかもしれない。
だから苦手だったヒップホップをこじ開けるきっかけにもなった。


最後にこの作品は難解なものとしてよく知られてるけど、苦手だった僕が言えるのは「リズムの革新性」とか「メロディーがない」とか気にせずにまずはじっくり身体を委ねるのが苦手を克服する一番の近道かもしれないということ。引用だったり背景を調べて作品への理解を深めるのもいいかもしれない。
いずれ、この作品の苦手と感じる要素が、香ばしく漂う中毒性を含んだ要素である事にだんだん気づいてくるはず。

そしてこの作品は、自分にとって別の苦手なものを克服するきっかけともなった。それが最後に紹介する一枚とも関連してくる。


「Voodoo」の理解を深める上で参考となった文献↓



Electric Ladyland / The Jimi Hendrix Experience

Play
Genre : Blues Rock, Psychedelic Rock
Turning Point : "Crosstown Traffic"

全ての音楽を好きになれるかもという希望

きっかけはこの記事の7枚目まで書いた段階だった。今この文章を書いている時から僅か2日3日前の話だ。「最後の一枚が決まらない.…」悲痛な叫びが微かだが確かに聞こえてきた。


候補は色々あった。Vaporwaveという音楽や概念そのものを愛するきっかけになったChuck Person「Chuck Person's Eccojams Vol.1」、最近の邦楽やJ-POPへの関心を寄せるきっかけとなった宇多田ヒカル「Deep River」がその最有力候補だった。でも、何か決定的なものが足りなかった。

そんなある日、「Voodoo」の記事を書くために聴き込んだり背景を調べ始めた時、「Voodoo」の制作拠点がJimi Hendrixのエレクトリック・レディ・スタジオであることを知った。丁度このアルバムが制作されたところでもある。
この事実は今まで知っていたが、今回は響き方が違かった。僕に無意識で避けてる苦手なものを直視するよう現実を突きつけられたのだ。僕がずっと避けてきたもの、それは「ブルース」だった。




ブルースへの苦手と感じ始めたのは2年前、このニュースに「You Can't Always Get What You Want」が出てきた時だ。
我ながら物騒なきっかけだな~と思ったけど、この時に初めて「The Rolling Stones聴く抜群のタイミングだ!」と思い前述した曲が収録されている「Let It Bleed」を聴いたがダメだった。途中で拍子が変わりドライブ感が増していく酩酊感たっぷりの「Midnight Rambler」はその時は最高だと思った。でも、他の曲は今の肌には合わないというか「古くてついていけない.…」と思ったのだ。そしてかつて好きだった「Midnight~」も聴かなくなっていった..…


それから事ある度にブルースへの再挑戦をした。1年後「Derek and the Dominos」「Stickey Finger」を同時に聴いた日には克服できたと思った。でも、実際には違かった。ブルースを聴いてる時は最高となるけど、聴かない時はそんな感覚すら忘れ、苦手なままだった。
この理由はここからもう一年後、つまりこの記事を書いている最中に判明することになる。


そして今、僕は「Electric Ladyland」と対峙している。
僕は思った「そういえば一番最初に触れたブルースのアルバムはジミヘンの1stだった」と。この1年前に久しぶりに聴き返したけどネームバリュー通り期待を裏切らなかった。あのジミヘンやぞ?今回も大丈夫なはずだ。しかもRYMではブルースロック縛りのジャンルではオールタイムベスト1位。「これでダメだったらもう終わりだ。」そう思いながら2枚組というボリュームを前に聴き始めた。


RYMのチャート(オールタイムブルースロックベスト)↓





はい、最高。「Crosstown Traffic」から頭爆破した状態のままいつの間にか終わっていました~
90年代のオルタナみたいなソリッドさとふくよかな感触両方持ってるギターサウンドは60年代においてはかなり先進的で彼にしか出せないことを改めて実感したし、どの曲も1st, 2ndにあった一般的な楽曲の型を大きく抜け出し宇宙的なスケールに。プレイヤーの演奏も束縛から解き放たれたように自由自由自由だ。そう、ブルースは自由なのだ!


しかも、すっかりだいちゅきになった「Voodoo」もジミヘンにも影響も受けて制作されたのもあってか、似た要素も幾つかあるのが個人的に結構大きなポイントだった。自由な演奏に対して全体に漂う密室感、十数人にしか入れないナイトクラブでやってるようなジャムの雰囲気と熱気(Tr.4「Voodoo Chile」、Tr.11「1983…」が筆頭)、逆再生された会話、サイケデリックなアレンジの仕方、「Voodoo」を好きになった自分にとっては好きな要素ばかりだった。


ここからブルースへの苦手が克服に向けて動き出しただけでなく、そのジャンルの影響がまだ色濃かった60年代やそれ以前のロックだったり、恥ずかしながら実は未だに真の良さが分かってないかもしれないビートルズに再挑戦するきっかけを与えてくれたことは間違いない。
だが、それよりも重要なことはアルバムを繰り返し聴くことの大切さを身をもって強く実感したことだ。

最近こんな記事を読んだ(Gorgutsについての貴重な記事も手がけたs.h.i.さんの記事)。内容はタイトル通りではあるけど、アルバムを繰り返し聴くことの大切さも書いてあった。今までの僕は1回で分かったような顔をしていた。でも、実際には分かってなかったのだ。


思えば、ブルースを克服しようとした時に聴いたものも1回で鑑賞をすませていた。「克服できたと思った」と書いたけど、苦手なものを好きになるためにはまずブルースがいいと思える回路を作らないといけない。その回路を作る為には繰り返し聴いて慣れないといけなかった。
頭では分かってたけど、こんなにも強く実感したのは生まれて初めてだった。月並みな表現だが、まるで思いっきりビンタされたような感覚だった。この記事を読んだこともあってか、このアルバムは自分のターニングポイントとして強く印象に残った。

苦手なものでも果敢に挑戦し、広く音楽を聴こうとする姿勢、もしかしたら自分が音楽リスナーになったのはここからかもしれない。
もちろん今も苦手なものは沢山ある。でもこの成功体験が、広く能動的に音楽を聴くよう自分を前へと突き動かしている。









[+α] Playlist (Summer Soul Classics)

Apple Music 
Spotify
Turning Point : "Rosanna" TOTO


今回「私を構成する9枚」なのでプレイリストは入らないはずだが、これだけは今の自分の音楽史においては絶対に切り離せないので、最後にどうしても紹介したかった。それはMA!さん手がける「Summer Soul Classics」だ。

「Twitterでソウルの魅力を知った」と「Voodoo」の時に書いたけど、その理由がまさにこれ。
Twitter初めて間もない頃にまた海行く日があって、その時に丁度知って気になってたので帰りにかけたけど、選曲も全体の流れも本当に素晴らしいプレイリスト。
それまでは聴くアルバムも方向性が定まってなくてR&B自体にも見向きもしなかったけど、これを聴いて以降、一気に50'sの古いソウルまで聴きたくなるほど、本格的に目が開けてしまった。

そこからソウルの聴き方も分かり、こういう甘くて心地よい音像を求めるようになってしまったということでディグる際の大きな基準になってるし、ここからネオソウルも掘り始め、自分の一番欲しかった音をしてるMaxwell「Maxwell's Urban Hang Suite」に辿り着いたし、D'Angeloに再挑戦するきっかけも与えてくれたので、これが無かったら「構成する~」からは最低2枚は減るかもしれない。
そういう意味でも今の自分に強い影響を与えて続けているプレイリストです。マジでお勧め。


(最近はこのプレイリストにも入ってるChaka Chanの「What Cha' Gonna Do for Me」にハマってます)




終わりに

「私を構成する9枚」最終結果


ということで、いかがでしたでしょうか。
僕としては記事を書き終えたことにとても安堵しています(笑)

今回選んだものは真剣に選んだけど、数ヶ月だったり数日たって「やっぱりこれだったな.…」とか「これ入れ忘れたな.…」とか十分に可能性はあるんですよね。でも、こうやって残しておくことは自分の音楽聴く上での指針になってくるし、途中で違うと思っても1つの貴重な音楽リスナーの記録になってくると思うので、修正せずに残すことにしました。
数年後に見返した時に「この頃と比べて大分変わったな…」とか「全然変わってないやん!」みたいなことが楽しくできたらなと思っています。だから今回は決定版ではなく2022年版。

「私を構成する9枚」。ありふれたタグではあるけど、あんまり選盤に対する背景だったり理由を見ないんですよね。
見てみたいと思うのは僕だけでしょうか。みんなのも是非見てみたいです。




ふぅーーーーう書くの疲れたわ。書き終わったので何か自分にご褒美をあげたいのと、この記事のために見る余裕が無かったTwitterを久しぶりに本気で追わないと(笑)。noteはこれからも定期でやりたいけど、せっかくなので、またゆるーーーく過ごしたい!!と思います。

文体もころころ変わるし、考察も色々ツッコまれそうで不安しかないし、拙い長い文章にもかからわず、ここまで読んでくれた方には感謝しかありません。本当にありがとうございます!!
この記事が何かのきっかけになれば嬉しい限りです。最後に「構成する9枚」をまとめたプレイリストを載せるので、是非ご活用ください。

今回はこの辺で。それでは、See You!


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