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ゲンちゃんの鉄道写真〜ファインダーから伝わったもの〜

久しぶりの友達から連絡があった。
彼女の息子さん(ここでは仮に、ゲンちゃんとしておこう)が、とあるウェブサイトに「WEB上の写真展」として高校生活3年間で撮った鉄道写真をアップしたとのことだった。

幼いころのゲンちゃんは、ママ大好きなきらきらした瞳ではにかんだ笑顔のかわいい男の子だった。たくさん一緒に遊んだけれど、彼の成長とともに会う機会が徐々に減っていき、最後にあったのはもう6、7年前だろうか。

ゲンちゃんは成長するにつれて、言葉で自分の気持ちや考えを伝えるのがちょっと苦手な男の子になったと聞いていた。
ときおり、一緒に遊んだ頃の写真を眺めるたびに、お正月に年賀状を見るたびに、いま彼はどんな高校生活をおくり、どんな青年になっているのだろうかと、なつかしい気持ちとともに今の彼にも思いをはせた。

鉄道が好きだったゲンちゃん。小学生の時に鉄道写真を撮る高校生のお兄ちゃんに出会ったのがきっかけで、彼も写真に興味を持つようになったのだとか。

そんなゲンちゃんの写真を見ようと、わくわくしながらサイトを開いた。
サイトのいちばん初めの目立つところに電車の写真。その横にはゲンちゃんの名前があった。
そして、クリック。

そこには、
高校3年間の彼の鉄道と心の旅が20枚余りの写真で綴られていた。

1枚目の写真は線路の近くで数人の子供が電車が来るのを待っている姿が。
電車が近づいてくるのをワクワクして待つ。
高校生になったいまも、彼はそんな思いで電車を待っているのかな。

そして

濃霧の中を静かに慎重に走っている電車。
田植え前の水をはった水田を鏡にして走る電車。
線路わきの黄色い花のむこうから、少し恥ずかし気にのぞきこむ電車。
土砂降りのなかじっと耐えながら必死で走っている一両の電車。
雪が舞い散る荒涼としたなかを 寒さをこらえ無言で走る電車。
満開の桜を眺めながら、春のやさしさを楽しむ電車。
青空と青々とした川の流れをまたぐ鉄橋をかっこよく走る電車。
夕日に照らされながら、すこし哀愁をおびて走る電車。
操車場で車体を洗う作業員さんと水遊びを楽しむ電車。

私が知らない彼の時間。
彼はこんな時間を過ごしていたのか。

土砂降りのなか、雪のなか、嵐のような風雨のなか、ちょっと小躍りしたくなるような小春日和のなか、まとわりつく汗と日差しのなか、ゲンちゃんはその時を息を凝らして待ってシャッターを切り続けたんだと思うと、じわっとなってぽろっと涙がこぼれた。

ゲンちゃんはファインダーをのぞいて、その時その時を写真にした。
私はその写真を見て、ファインダーを遡り、ゲンちゃんのその時の汗や凍えるような寒さや想いを感じた。

あぁ、ゲンちゃん。
口では多くは語ろうとしなくても、ゲンちゃんの写真はたくさんのキミの想いを伝えてくれているよ。
ゲンちゃんは写真を通して想いを伝える人になってたんだね。

あと少しで高校の卒業式。
新たな道を進もうとするゲンちゃんの 
これからの人生に幸多かれと心から思う。

ゲンちゃん
卒業おめでとう!





















































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