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DESIGN : dot to dot today

少し久しぶりのnoteインタビュー。
今年2月に大阪中之島美術館(NAKKA) が開館し、館内にミュージアムショップdot to dot todayが誕生しました。

ミュージアムショップ「dot to dot today」には厳選されたプロダクトをはじめ、大阪に縁のある作家やデザイナーとのコラボレーションアイテムなど様々なオリジナルグッズが取り揃えられています。
そんな「dot to dot today」のロゴ、店舗ツールをOUWN・石黒が担当。「新しい出会い、生まれる発見により、あなたの今日が潤いますように」というコンセプトのもと、365日、毎日変わるロゴマークが楽しめる場所になっています。

人や街が繋がる場所に

石黒 : OUWNは今回、ロゴをメインにショップカードや包装紙などをデザインさせてもらいました。ショップのコンセプトにも少し携わらせてもらいながら、ロゴの立ち位置などを考えて進めていきました。

石黒 :「dot to dot today」のブランディングをしているのが大阪にある8otto(オットーデザインラボ株式会社、以下otto)という事務所で、ottoのボスと自分が仲が良くて。ottoがミュージアムショップの運営をすることになり、全体のデザインやトンマナをOUWNでお願いしたいと話を受けました。

ー 以前にインターンで来ていた中田さんの事務所ですね!
「dot to dot today」という名称は、元々決まっていたのでしょうか?

石黒 : そうそう!以前から交流がある会社なんです。
ショップの名称は、最初は「dot to dot」でした。ottoの方から根幹であるコンセプトを聞き、このショップでは大阪の伝統工芸品や現代作家さんのアイテムを置いて、このショップで人や街を繋げたい = 点と点が繋がる場所にしたいっていう話があった。なので「dot to dot」という名前にしたいって話はもらっていました。でももう少し考えた時に、その日のご縁や出会いを大事にしたいという想いから「today」っていう言葉を入れてもいいんじゃないかと。それでこういう言葉で行きたいって話をもらいました。

ー 美術館に来たついでだけでなく、このためだけに来たくなるような。

石黒 : そうです。ここにまた来たくなるような、おしゃれなショップとして完結したい。そこから、このコンセプトを基にどんなロゴにしたらいいか、その他の細かいコンセプトの面で肉付きを一緒にしていった感じかな。

毎日変わる、365種類のロゴ

ロゴはなんと365種類(!)という、汎用性が求められるロゴでは珍しい、ユニークなデザインです。

石黒 : これは紆余曲折ありましたね(笑)。
最初はミュージアムショップの名前を覚えてもらうことが大事だと聞いていたので、可読性を重視した案を多く作ってました。「dot to dot today」という言葉通り、点や線で表現したデザインをいくつか提案しましたが、中でも奇抜なものではなく可読性のあるデザインで進めていました。
だけど個人的にも違和感があり、奇抜な方向性がしっくりくるなと考え直した。なのでしっかりと意図を説明し、コンセプトなどを話している中でottoの方の考えも変わり、「ミュージアムショップだから、やっぱりもっと振り切らないとダメかも」と。

逆に振り切るとしたらどうしたらいいのかを考えた時、名前ってあまり重要ではないのかもと気づきました。ミュージアムショップって結局美術館に付随するもので、中之島美術館が立っているわけだから。
ショップの名前を立たせることよりも、もっとインスピレーションで攻めることが必要だと思いました。「なんだっけ、あの点と線のミュージアムショップ」って覚えてもらえたり、「中之島美術館にある、ロゴが可愛いショップ」って思い出してもらえた方がきっと成功で。
逆の思考で思い出すことができたら、そっちの方が近道なんじゃないかなと思ったんです。ミュージアムショップといえば、点と線のお店!(=dot to dot today)というイメージです。なので言葉ではなく、点と線を印象付ける方向にしました。

ー 確かに。名前というよりも「あそこの美術館のショップ」って思ってることの方が多いですもんね。
ロゴを365個作ろうっていうのはすぐに思ったんですか?

石黒 : はい。自分で提案しておきながら、作るの辛いだろうな〜とは思ったけど(笑)todayって言葉から、その日を感じられるものにしたいなと思ったので提案しました。そこが重要になるコンセプトだったので、365個作る意味はあると思いました。
ロゴの構成としては「dot to dot today」の文字をバラバラにして再構築しています。なので全てパーツ数は変わらず、どこにくっついているかの違いですね。

ー 365個となると、どのように作っていくのでしょうか?

石黒 : パターン的には50個くらいあって、円の中を塗りつぶしたり空けたままにしたり。なので似ているものもありますが、365種類違うものになっています。何か1つにこだわると飽きてしまったりするから、わざと偏ったバランスにしてみたり、合わせすぎないというのも意識したかもしれません。

ー これだけ数を作るとなると、自分の癖だったり、デザインの偏りが出てきたりということはありましたか?

石黒 : それはありました!けど、さすがに365個作ったら偏りもなくなりましたね。最初に偏り尽くしたら、必然的に逆側に行くしかなくなるので(笑)。
最初はやっぱりデザイナーあるあるで、バランスのとれた美しいものが多かった。そこからどんどん崩していって、崩したものの中でまた新しいものが生まれたりする。「これってどうなんだろう?」って思うようなもの、自分がこれを良しとするかどうかの線引きの点では挑戦的でもありましたね。
例えば円っぽくなってるけど形が歪で、もっと綺麗にした方が良いんじゃないか、とか。そういうものをあえて入れ込んでみたり。何かを想像させる力
があると思ったので、そのノイズ感は今回大事にしたところです。

ー 店舗の案内やメインに使うものなど、これがスタンダードなロゴ、というものはありますか?

石黒 : 今で言うと、ホームページのメインに使っていたり、領収書の裏に入れているものは1つあります。ですが基本的にそれを打ち出そうというよりは、決まったものを固定で入れなくちゃいけないから1つ選んでいる、というくらいです。

石黒 : なので正直どれを選んでも良くて、次の制作物だったり今後別の機会で出てくるときには、できるだけ使っていないロゴを使おうと思ってます。
ポストカードの裏面にもそれぞれ違うロゴを入れていて、あまり固定していないですね。

ー モノによってロゴを変えられるのは面白いですね。ロゴって汎用性が求められるけど、「何にでも合うシンプルなロゴ」じゃなく、たくさんあって合わせられるロゴって新しい。

石黒 : そうですよね。このロゴは揃うことでの良さだったり、違うものがあることでの良さを感じられるものだと思います。最近はよく多様性って言葉が使われるけど、そういう言葉が一番近くて、多様だから全体を通して良いというか。1つのロゴじゃなく、全部で1つのロゴ。
あとはこのショップのロゴ部分を立たせたいから、「ミュージアムショップ」の部分はスタンダードな文字にしました。最初はここも同じようにデザインしていたんですが、「ミュージアムショップ」はどこにでもあるものだから、そこもデザインにしてしまうと違うのかなと。「dot to dot today」のコンセプトが生きるように。

ー 365種類あるロゴは、どこで見られますか?

石黒 : 店頭に置いてあるショップカードにロゴが入っていて、それが日替わりになっています。ぜひその日の縁で見てもらえたらと思います。今後はスクリーンに映したりとか、毎日の変化が見えるものを作りたいなと思っています。

「Dot」繋がりの展示は、偶然で必然的

ー 今回は代官山にある蔦屋書店でも「dot to dot today」を提げた展示をしていましたね。

石黒 : はい。ちょうど蔦屋書店さんからBOOK BOXっていうコーナーで展示をしませんか?って声をかけてもらい、当初はOUWNで前に作ったアートブック「字表と勿れ DELUSION TO HEDI SLIMANE」を展示しないかと言ってもらいました。

: 字表と勿れ DELUSION TO HEDI SLIMANE

最初はそれで進めようと思っていたんですが、展示の時期が2月で、ちょうど「dot to dot today」がオープンするタイミング。
更に僕が以前に蔦屋書店さんでやらせてもらった展示が「Dot trip」というものでした。

: 2018年「Dot Trip」展示風景

雑誌ブレーンの企画「感じるブックジャケット」制作・発売に伴い、代官山蔦屋書店のBOOK BOXにて「Dot Trip Exhibition by Atsushi Ishiguro」を開催。 旅をコンセプトに、 新しい感覚を開かせる実際の旅と、読書による思考の旅、さらに「Dot trip Exhibition」というデザインの旅と、さまざまな旅の繋がりを表現した。(2018)

石黒 : 「dot」繋がりもあるし、「Dot trip」と「dot to dot today」のコンセプトには通ずるものがありました。「dot to dot today」は大阪のアイテムを集めたショップなので、それを東京で見せるのも面白いんじゃないかなと。
それで、自分から蔦屋書店さんに提案し直しました。

ー 前回の展示が「Dot trip」だったので、最初は「dot to dot today」という名前も合わせたのかと思いました。

石黒 : それは本当にたまたまだったんです。「dot to dot today」の名前も僕が決めたものじゃないので、偶然で。やっぱりこれは、なるようになってたんですよね。

ー 蔦屋書店さんでの展示では、「字表と勿れ DELUSION TO HEDI SLIMANE」のグラフィックを持ってきていますよね。それはなぜ?

石黒 : それは、完全に「dot to dot today」の展示になってしまうと、自分の展示ではなくなってしまうからです。元々OUWN・石黒の展示をしてほしいっていう話がベースにあったから、趣旨が変わっちゃうのは違うかなと。座組としては僕自身が立った上で、最近手がけたロゴと、そのポップアップショップっていう流れにしないといけない。なので「dot to dot today」だけじゃなくて、作品のグラフィックを展示の中に入れました。
そうすることで自分の展示にもなりつつ、「dot to dot today」の東京でのポップアップショップにもなるかなと思いました。

変化と成長の9年目

ー 今回のデザインは、OUWNのソリッドで洗練された雰囲気に加えて、最近の石黒さんの挑戦的な部分というか、新しさが融合しているような気がします。

石黒 : それはもしかしたら、賞にちゃんと出そうとしている今の気持ちとリンクしているのかも。今まではクライアントワークをしっかりアウトプットしようっていう思考だったんですが、1~2年前からちゃんとアワードに出そうと思って、ノイズ感とか先進性のあるデザインっていうのを意識しています。最近は特に、ちょっとざわつく感じを意識していて、今までやったことのない技法を使っています。今回はクライアントワークですが、そういった遊びの部分も一緒にできるものだったので楽しかったです。
実績が増えて信頼関係ができて、クライアントさんとの関係性も変化してきた。徐々に自分を認めてもらえるようになって、やりたいことが通るようになったり。書体選びもアイデアも、より尖ったデザインができるようになってきてるのかもしれないです。

ー 今までがあるからこその信頼関係ですね。
「dot to dot today」は「新しい出会い、生まれる発見により、あなたの今日が潤いますように」というコンセプト。石黒さんが日常の中で新しい発見や出会いがあるのはどんな時?

石黒 : 自分は人付き合いはそんなに得意じゃないけど、人は嫌いじゃないから、人の感情に触れたときです。人とご飯を食べている時にアイデアが生まれることが多いですね。「dot to dot today」の担当をしていたottoの方と話していた時も、たくさんの発見がありました。先方が「振り切ったロゴにしたい」と決めなければ最終的にここまではいかなかったですし、人の縁は重要ですよね。

最近の新しい発見で言うと、デザインの崩し方が少し成長したかなって感じることがありました。感覚的な話になるんですが、崩し方って典型的なものがあると思っていて。「面白いから」とか「新しいから」みたいな適当な崩し方ではなく、理屈のある崩し方をすると良いデザインになる。一見ちょっと変に感じたとしても、理屈があり説明できる崩し方をすると、精度が上がるなってことに気づきました。

ー それは前からやっていたことではないのでしょうか?

石黒 : 前は崩し度が足りなかったです。前よりももっと意味のある崩し方をできるようになって、学んできたなって感じがします。フォントのディテールがこうだからこうしようとか、自分の中に要素が増えてきて。フォントの話、空間の話、今の時代のデザインの話とか、知識が増えたんだと思います。見た目だけでなくちゃんと理由も言えるようになってきたから、まだまだ伸びしろあるなと。 OUWNは今年9年目で、来年は10年目を迎えます。個人的には大殺界も今年までだし、来年は盛大にパーティーしたい(笑)。まだまだ成長し続けます!

CL : MUSEUM SHOP dot to dot today / @dottodot.today
AD+D : ATSUSHI ISHIGURO(OUWN) / @ai_ouwn

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聞き手 ・ 執筆 : 星成美


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