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DESIGN : 日本酒・三好イヤーボトル【HANA 2020-2025】 後編

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前回の記事では、日本酒「三好」の誕生から「三好 冬」、「三好 BLUE」と歴史を振り返りながらお話を伺いました。今回はいよいよ4月からスタートする「HANA 2020-2025」について詳しく聞いていきます!

「HANA」の育て方、2021年の味

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感染症対策のため、Zoomにてインタビュー。
(左上)三好さん、(左下)村上さん、(右下)OUWN・石黒

石黒 : 普段から「三好」に関しては動くスピードが早いのですが、「HANA」は普通のクリエイティブとは全く違うスピード感で、多分OUWN史上最も早い。最初の会話から3ヶ月くらいでもうここまで出来たのがすごいです。

三好 : 僕自身、話を聞いてすごくいいなと思ったのですぐ動きました。
「HANA」のベースになってるお酒は、「三好 GREEN」です。普通よくあるのは、2020年のお酒をずっと寝かせていってビンテージにしていく方法。
だけどこれはそうではなく、2020年に作ったお酒と、5年間その年に作ったお酒を混ぜて作ります。これは、根本にはこの時の思いがあるよっていうことをちゃんと残したかったから。2020年に感じたことを残しながら、新たな年の味を作って花を咲かせていく、未来にみんなで花開こうよっていう思いでお酒を造りました。

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三好 : 今年(2021)に関しては、精白を変えたGREENをより綺麗なお米で作ってるので、その感じを出せたらなと。味のイメージは、思った以上に綺麗にまとまったかな。石黒さんには飲んでもらって、「メロンっぽい」って言ってもらいましたね。村上さんにはまだ焦らして送ってないんですけど(笑)

ー その年に合わせるお酒は、毎年三好さんが「こういうお酒にしよう」と決めてから作っていくイメージですか?

三好 : そうですね。私の中で決めてるのは、その年に表現したいことをやりたいということ。2020年のお酒は味が変わらないような状況に置いてるんですけど、少しずつ変化していきます。なので毎年味を見ながら、それをベースとして今できる私の技術の良い部分を出せていけたらなと思っています。

村上 : それはもうアーティストやん!(笑)
ちなみに、最初の2020+2021は、5年後まで取っておけるんですか?

三好 : 私はただの製造業者です(笑)。
お酒、取っておけますよ!味が変化しない保証はないけれど、日本酒は賞味期限がないのでそこは大丈夫。

初めて未来を感じられたもの

石黒 : 三好さん的に、5年でなんとなくのストーリーがあるのか、途中でちょっと違うことをやってやろうと思ってるのか、イヤーボトルの5年計画をどう考えてるのかっていうのは気になる。

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三好 : 花開かせる、というイメージのままに味を開かせていくっていうことは考えてないんです。
GREENやBLACKなど他の日本酒を造る際には、あくまでベースの味が変わらないことが根本にある。もちろん毎年の食の流れみたいなものは感じ取って、その年に合わせて少しだけ変えたりはするのですが、大きく変化させないように造るんです。

だけど「HANA」に関しては、それを考えないでやっていきたいって思っています。味を完全に固定するというよりも、味が色々あったほうが面白いんじゃないかなって。いつもは目の前のことや、「今」を見ていたと思うけど、初めて造りに関して未来を感じられたように思います。私としてはすごく不思議な感じだし、ワクワクしてる。

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村上 : 未来のインスピレーション次第ってことですね。

三好 : その方が、「成長」っていう部分では面白いんじゃないかなって。その時思ったことと、その時できる技術で作れたらいいなと思ってます。

村上 : 今の三好さんが想像できるものを来年作ったら面白くないですもんね。

石黒 : 今のお話が聞けてよかったです。
自分はラベルを作った時は、最初のものが徐々に融合して調和をして、最後は丸に近いような、まろやかになっていくみたいなことを考えていた。
でも、調和は調和でも、単純にまとまっていくことではなく、進化や変化・チャレンジを重ねることで、どんどん花開いていって調和していく方が大事だと思いました。2020年のお酒に対しての進化、というものをラベルに込めていたので、今の話を聞いて、中身とラベルの相性がさらに良くなったんじゃないかなって思います。

互いの「スゴイ」ところ

石黒 : HANAのデザインを見せつつ「年をまたいでつながっていく」の話をして、そのあと村上さんがコンセプトとなる言葉を作ってくれた。あれはどうやって作ったんですか?
いつも僕が作ったラベルと、三好さんの想いを汲んでガシッとパッケージしてくれてるなって思うんです。

【HANA 2020-2025】
日の丸のようにも見える、朱色の蕾(つぼみ)が、
人々の想い・行動で、次第に色豊かに花ひらいていく様子。

自分も含め、今を生きる多くの人に、
そうあってほしいという願いを込めました。

日を追うごとに
何かと未来への希望が持てにくくある世の中で、
年を経ることの豊かさ・期待などを
日本酒の持つ味わい、香りで表現したいと思います。

年を経るごとに、より豊かになっていくイヤーボトル。
酒の席にこのボトルがあることで
いっ時でも笑みのHANAを咲かせればと思います。

村上 : それはもう、細胞レベルで石黒さんと三好さんのことが好きなんですよ(笑)。
なので石黒さんはこんな気持ちで作ったんだろうなとか、三好さんの制作工程の気持ちを考えつつ、視点の輪をぐるぐるとまわします。僕自身、日本酒好きの一人でもあるし、一方でコロナに怯える一人でもある中、どういったメッセージを纏えば国内外のユーザーに「HANA」を掴んでもらえるかを考えましたね。
さっきの三好さんじゃないですけど、インスピレーションですよね。

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石黒 : アーティストじゃないですか(笑)。

三好 : 村上さんのスゴイところは、自分が適当に言ったことの3倍くらい良いものにして返してくれるんですよね。素晴らしいです。

石黒 : 男女問わず届くし、お酒好きな人にも届く文章ですよね。すごい良いなーって毎度思います。最終的に村上さんのコピーと、世に出すためのアプローチ、最後のさじ加減をしっかりしてくれるから、安心してデザインできるんですよね。

村上 : そんなこと言ってもらえて光栄です!
三好さんが瓶の中身を造っていて、外側のアイコニックな部分を石黒さんが作っていて。僕は表面化しづらいポジションだから、何か良い関わり方ができればなっていう模索はずっとしてたんですよね。なので、今みたいなことを言ってもらえるとすごく嬉しい。
僕も2人だから安心して考えられるし、考えるのも苦じゃなくて、生みの楽しみがある。自分にとってはライフワークになりつつあるなって感じています。

アイコンの赤を変えた理由

三好 : そういえばラベルデザインの色は、最初のイメージの日本的な赤から、オレンジっぽい赤に変更になりましたよね。石黒さん的にこれでいこうと思ったポイントってどんなところですか?

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(左)最初のデザイン、(右)校正後、完成版のデザイン

石黒 : つないでいくっていうのは割と伝統的なイメージで、日本っぽいワードだと感じてたから、純和風なものを想像して「日本の赤」で進めてたんです。でも校正の時に、ちょっと蛍光っぽい赤が出てきた。最初は思ったのと違う色になっちゃったから調整しようと思っていました。

でも作業中もパソコンの横に置いて、ずっとそのラベルを見ていたら、考えが変わったんですよね。
自分はデザイン目線で見て何が評価されるかを考えたとき、これからの5年で日本的な赤ラベルをしっかり見せたら、ある程度の人には評価されるけど、インパクトには残らないように感じた。いい意味の違和感とか、華やかさっていうところだと、もしかしたらこのストレートな赤ってよりは、ちょっと明るいオレンジ寄りの赤が合ってるんじゃないかなって。

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石黒 : そして次に考えたのは、僕ら3人のこと。
狙い通りに収まるっていうことよりも、新しい挑戦っていうのを考えたときに、明るい色の方がハマりいいなって思ったので、この3人のことを考えたらこっちかもしれないって感じたんです。
なんとなく、前の赤い色がちょっと古く見えちゃったんですよね。紡ぐっていうのはいいんだけど、重いような気がして。新しい一歩というところで、もっとポップでポジティブな感じになりたいなって。偶然がハッとする機会を与えてくれました。

三好 : これをボトルに貼ったとき、ワクワクしたんです。他にあるようでないような色だし、未来を感じる。

石黒 : 「繋いでいくんです」っていう重い感じではなくて、駆け上がっていくイメージで、この赤に決めました。

5年後、想像する未来とは

ー 最後に、5年後にどうなっていたい、どうあってほしいなど、お酒に限らず思うことがあればお聞きしたいです。

三好 : それはもう、未来はお花でいっぱいですよ!
そういう気持ちでやってます。自分も花咲かせたいし、みんなが未来を、先を見れるものにしていけたらなって思っています。

石黒 : 個人的には、「HANA」のおかげで5年間楽しみが続くなって思います。5年の中で、この「HANA」だけじゃなく他のお酒も走ると思うんですよね。なのでそっちも楽しみです。
例えば2020+2023のものが出たタイミングで他のものも作ったら、そのお酒とも絡むのか、それとも全く違うアプローチでやるのか、とか。「HANA」があることで新たな道が生まれると思うので、その楽しさがあると思っています。

村上 : 5年経つと42歳になってるので、未知の領域ですよね(笑)。
「プロジェクトというよりもライフワーク」って先ほども言いましたけど、また別の花を咲かせるプロジェクトが5年の中で始まるかもしれないし、3人で考える時間が少なくとも5年以上できた、ということが僕は単純に嬉しいです。
あとは、子どもがお酒を飲めるまでこれを続けていけたら嬉しいですね!

三好 : 体が動くうちは頑張りますよ!(笑)

石黒 : 届ける人もきっと増えていくから、未来が楽しみですね。

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三好 イヤーボトル【MIYOSHI HANA '20-'21】
発売時期 : 2021年4月12日
容量・価格:720㎖ 2,400 円 (⼩売価格・税抜)
◯ 詳細はOUWNのSNSでも随時お知らせします。

CL : ABUNOTSURU

SAKE BREWERIES : RYUTAROU MIYOSHI / @miyoshi_abunotsuru
DR : FUMITAKA MURAKAMI / @fumi_sake
AD+D : ATSUSHI ISHIGURO(OUWN) / @ai_ouwn

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聞き手 ・ 執筆 : 星成美

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