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ジャーナリズムの重要性と、日本の人口推計に見える衝撃の未来

日頃ニュースを受け身で聞いてしまう私。
調べていくと違和感を覚えることありますよね。

いかに情報と向き合うかを考えてたとき、先日から大きなヒントになったことがあります。

日本とデンマーク両国のジャーナリストでもあるニールセン北村さんから学んだ「ジャーナリズム」河合雅司さんの「未来の年表」から、情報を正しく捉える大切さと日本の人口減少から推測される未来について紹介します。

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1. デンマークのジャーナリズムとは

日本のWikipediaでは、ニュース・出来事・事件・事故などを取材し、記事・番組・本を作成して広く公表・伝達する行為であり、言論活動のひとつ。

ですが、日本ではあらゆる発信者から、恣意的な情報から重要な情報まで、分別なくニュースが目に飛び込んできます。言論の自由といえばそうなのかもしれませんが、

デンマークで興味深いのは、大学に通ってジャーナリズムを学ばないと、ジャーナリストにはなれないということ。

北村さんによると本来ジャーナリズムとは、

・対象に関係なく出来るだけ広く客観的な情報を集め、批判的に評価し、わかり易く広めること。
・全ての領域の支配者と責任者(立法,司法,行政,民間等)が規範を侵していないか監視すること。
・情報の信頼性を確保するため、自身と外部の政治的、経済的、関心的なものと一線を画して行動し、自由かつ責任を持って仕事を遂行することが不可欠。メディアが独自に策定した倫理規定や法律にのみ制限を受ける。
市民を啓蒙し、社会や私生活において責任を持って行動できる基盤を与えること。

「記事を高く売る方法ではなく、いま一番何を知らせるべきかの倫理観を学ぶ」

※北村さんの講義より抜粋して掲載(デンマークジャーナリスト連盟ウェブサイト等)

崇高な責務として、やるべきこと・してはいけないことを学び、ジャーナリストになっていく。

日本とデンマーク両国で、ジャーナリストとして活動される北村さんだからこそのメッセージ。


2. どんな報道がされ、議論されるか

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例えば日本であまり報道されない事例として、地球温暖化のことを教えていただきました。

上の図は、米国海洋大気庁NOAAが開発したScience On a Sphereのウェブサイトから。データはNASAなどと協力して集めているそうです。

抜粋すると、
過去30年間に熱帯の境界線は平均緯度が10度移動した。青い線は1980年~1984年の熱帯境界線、赤い線は2008年~2012年の境界線である。
熱帯気候に近づくと、干ばつや大気循環に影響が出たり、オゾン層が薄くなったり、伝染病が拡大したりと、深刻な影響が懸念される。

熱帯の境界線が移動しているという研究結果。
日本の最北端は約45度、最南端が約20度なのでイメージで国土の半分くらい気候帯が変わる勢い!

日本の台風被害が増えるのも、こうしたエビデンスのある話なのではないかと。

デンマークでは、北極圏の氷床融解が深刻なので、温暖化が危機的な状況と提起され、どのように対応していくべきか、教育の現場でもしっかり議論されるそう。

すでにロラン島では海に沈むことが想定されたエリアが計画されていたり、逆に守るエリアへ堤防をつくるための税金が創設されたりと、いち早く対応がされてます。

例えばデンマークの中学生。こんな課題を家族で議論せよ、とホームワークも出るそうです。

例)エネルギー
多くの国は海外からのエネルギー供給に頼っています。それなのに、自国内でのエネルギー生産の可能性の研究に消極的なのはなぜか?
例)地方自治
デンマークは小さい国なのに、なぜ5つのリージョンと98の基礎自治体が必要なのか?

大人も聞かれてドキッとする、答えのない問い。
ジャーナリズムも教育も、社会全体で何をすべきか考える機会を作っています。

みずほ情報総研の調査によると、日本は温暖化の認識は進んでいますが、自分事として行動の変容まで繋がっているかと言われると、依然厳しい状況であると言えそうです。


3. 最初の1歩は情報リテラシー

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では情報と向き合っていくために注意すべき点。教わったうちの2点を紹介します。

①情報ソースを知ること

情報ソースは、原典、文書、経験談など様々な形で存在する。全ての情報源は、特定のアクション、人の考え、ソースが作られた時間の結果。
つまり価値を見出すかどうかは自分で判断しなければならない。


それを踏まえて、情報には段階がある。

◼︎一次情報(本人がソース)
 例)和歌山県の田舎に生まれて、小学校は4人のクラスメイトで過ごした。

◼︎二次情報(人から聞いた情報)
 例)和歌山県の田舎に生まれて、小学校は4人のクラスメイトで過ごした。とkaminakaさんが言っていた。

◼︎三次情報(情報ソースが不確か)
 例)和歌山県の田舎では、小学校は4人のクラスメイトで過ごすらしい。

私が今書いているのは「二次情報」になります。
まずは基礎として、どの段階の情報か把握するのは大切ですね!

②批判的に物事を見ること

感情や主観に流されずに物ごとを判断すること。クリティカルシンキングといわれる思考法。

北村さんから教わったソースに対する7つの姿勢
1. 情報ソースのタイプは?
 (記録、手紙、指示書、法律など)
2. 誰が、なぜ、それを書いたのか?
 動機とその事実関係は?
3. いつの情報か?
 ある事象が起こってすぐか、時間が経ってか?
4. 一次情報か二次情報か?
5. 作者が経験したのか、間接的に知ったのか?
6. 誰に向けて書かれたのか?
7. 他の情報源は同じ事象をどう評価してるか?

こうした日々の意識は、私たちもできることで。
都市経営プロフェッショナルスクールも、筋の良い案件かそうでないか見極めるために、失敗事例を過去に学び、情報を読み解く訓練を積みます。本質を見極める目は、どの分野にも重要ですね。

では、将来の人口推計からどんなことが読み解けるか、見ていきたいと思います。


4. 未来の年表が教えてくれること

同じくジャーナリストである河合さんの書籍。
あらゆる機関の情報を丁寧に集め、客観的に分析されています。例えば、

【参考文献の"一部"紹介】
社人研「日本の将来人口推計」
(※国立社会保障・人口問題研究所)
国土交通省「国土のグランドデザイン2050」
国土交通省「首都圏白書」
総務省「住民基本台帳移動報告書」
総務省「国勢調査」
総務省「統計トピックス」
総務省「就業構造基本調査」
総務省「住宅・土地統計調査」
文部科学省「学校基本調査」
内閣府「高齢社会白書」
内閣府「地域の経済」
家計経済研究所「在宅介護のお金と〜調査」
厚生労働省「厚生労働白書」
厚生労働省「人口動態調査」
厚生労働省「国民生活基礎調査」
厚生労働省「社会保障の費用に係る将来推計」
環境省「バーチャルウォーター」
農林水産省「食料需給見通し」
東京都「輸血状況調査」
東京都「2020に向けた実行プラン」
日本私立学校振興・共済事業団「志願動向」
などなど…

膨大な分野毎のデータを横断的に見ていくことで、将来像を立体的に見せてくれます。

記憶に新しい2015年の「一億総活躍社会
50年後も1億人を維持し「名目 GDP600 兆円」「希望出生率 1.8」「介護離職ゼロ」を掲げ、

少子高齢化は進むけど、充実した社会をつくる!
そんな政策でしたが…残念ながら統計は、もっと残酷で無機質な日本の未来を予測しています。


5. 絶滅に向かっている国?

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※令和元年 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の資料より抜粋

社人研によると、西暦3000年の人口は約2,000人と、なんと日本は自ら消滅していきます。こちら詳しいデータで見ると1,000人に見えますが…
加速度的に減少していくことが予想されている。

もちろん。あと数年先からも目に見える形で
「出生率の低下」「高齢者の増加」「勤労世代の激減」に加えて「人口減少」で"超"過酷な状況
を迎えていくことは確定済です。

世界最速の高齢化で、日本は未知の世界に突入していくなか、どんなことが起こるのか。
今回は年表のごく一部をピックアップします。

2024年 団塊世代がすべて75歳以上

2015年比で約390万人の人口減少
・3人に1人が65歳以上、6人に1人が75歳以上
 (75歳以上になると医療費・介護費は急増)
・社会保障費給付費がGDP成長を大きく上回る
・老老介護・ダブルケアで勤労世代の生活硬直化


2042年 65歳以上の高齢者数がピーク

自治体の約半数は消滅の危機(2040年)
・団塊ジュニア世代も65歳以上(2040年)
・高齢者が3,935万2千人とピークを迎える
・就職氷河期世代が老いて独居高齢者の増加
 (以降の世代を支える人口が少なく生活保護費
  など増加が懸念)

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※内閣府高齢者白書より

2050年 団塊ジュニア世代がすべて75歳以上

・人口のボリュームゾーンが軒並み高齢者に
・6割の地域で人口が半数以下、うち1/3無居住化
・一方で世界人口は100億人突破して食糧争奪戦
 1億人程に減った日本も巻き込まれ国防の危機も
・高度経済成長期以降のインフラも維持困難に

国土交通省も異次元の高齢化、国家存亡の危機とも明記しています。


6. 残された時間は少ない

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2042年まであと約20年。2000年になった頃を思えば、もう直ぐそこに迫っています。

今後は痛みを伴いつつ、大胆な社会システムの転換を余儀なくされます。
ヒントはあれど答えを見つけていくのは私たち。学校にも役所にも正解はありません。

そのために市民を導き、一人ひとり責任を持って行動する土台をつくるための「ジャーナリズム」そして教育が、日本にとっても不可欠です。

書籍には課題だけではなく、10の処方箋といったたくさんのアイデアも掲載されてますので、是非ご覧ください!

最後にこの機会をいただき、私も川崎市エリアの未来について推計を考えてみたいと思います。
以下は、関心ありましたら是非!


付録:川崎市の将来はどんな感じ?

実は川崎市、人口推計では凄く恵まれています

他の政令市と比較した場合(2018年時点)
・自然増加比率1位(33年連続)
・自然増加数1位(2年連続)
・人口増加比率1位(5年連続)
・平均年齢が最も低い
(15〜64歳人口割合1位、65歳以上割合最下位)

カワサキをカイセキより

次の図から過去から人口が増加し続けていて2030年まで増加することも推測されてます。コロナの流入鈍化で、下方修正はあるかもですが。

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上図:2020人口動態 下図:2017将来推計

また、同じく河合さんの書籍である「未来の地図帳」でも政令市のうち、川崎市は2035年で高齢化率が最も低く、2045年では25歳〜39歳女性の減少率も一番低いと指摘されています。

図5からも若者の流入が圧倒的に多く、図7で横浜市に流出しているものの、東京23区からはむしろ転入超過になってたりします。(2020人口動態)

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ただ、川崎市の恵まれた環境は、下図のように圧倒的に人が転入する東京圏。首都を補完する形で成り立っていることも明らかです。

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第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」 に関する検証会の概要資料より


付録まとめ:川崎市の将来は安心なのか

すると、しばらく安泰じゃないか!と思うかもしれませんが、こんなデータも見られます。
年単位ですが、市内各所に高齢化してるエリア、人口が減少してるエリアが点在します。

上図の赤は、65歳以上割合が22%以上のエリア
下図の赤は、対前年比で人口が減少したエリア

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実際に平均年齢が低い都市といえど、扶助費もこの10年で2倍に迫る勢いで増加中です。

当然ですが駅近は開発されて若い人口が増え、離れて不便なエリアは一部で高齢化・人口減少と、鉄道路線と連動している傾向があるようです。

パーソントリップ調査でも、東京圏は鉄道で大量に人が移動しており、ものごとを行政区で考えること自体、もはや馴染まないかもしれません。

川崎市の鉄道

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上図:市内の鉄道 下図:東京都市圏パーソントリップ調査

ただしコロナ禍で都心への転入はやや減ったけど転入超過は続き、少し郊外への需要が現れたことが木下さんの記事で良く分かります。

確かに鉄道利用者が減少して、私の周りも通勤より住まい重視の需要が高まっています。今後は、この辺りの変化を捉えていくことも重要ですね。

こうして見ていくと、東京圏との位置関係により人は今後も増えることが予想されますが、すでに川崎市もエリアによって差が開いていることが分かります。日本の縮図的な現象かもしれません。

結論としては、川崎市も今の状況に甘んじてはいけないということ。

すでに縮退社会への兆しが見えているので、人口のピークとなる2030年を前に、すぐにでも

・人口増加ばかりを想定した都市開発の再考
・脱炭素かつ縮退を想定した社会へのシフト
・駅から離れた地域資源の再評価と新たな構築

当たり前でも、このあたりを認識して実践できるのか。今がターニングポイントと感じています。

まず大切だと思うのは、答えがないことを恐れず
利権や組織に囚われず、本当に必要なことへアプローチできるよう、対話とチャレンジを繰り返せる土台をつくり、人と社会が成長していくこと

今回はここまでとなりますが、次回以降は、こういった課題に対する取組など、取材したことを紹介していきたいと思っています。

今回もありがとうございました!

都市経営プロフェッショナルスクール同期のまことさんは、さらに川崎市の財政からも人口動態の詳細へ切り込んでますので、こちらも是非に(^^)


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