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都市経営を成功に導く「PPPエージェント」の正体

公民連携手法のPPP(Public Private Partnership)の「エージェント型」により圧倒的な成果を出した紫波町のオガールプロジェクト。

この「エージェント」の存在なくして、今の紫波町はなかったでしょう。
今回「公民連携の教科書」と、オガールを牽引した岡崎 正信さんのお話から、エージェントって何なのか、どんな役割を果たすのか紹介します。

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エージェントって

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一言では
民間と市場性のある開発をしていく行政の代理人

アメリカではまちの再生手法として、PPPによるエージェントモデルは一般的に用いられてます。

日本がバブル最盛期のころ
レーガノミックスなど背景にあるアメリカでは、公共予算が大幅にカットされ、地方財政は苦しい状況でした。

そんな状況を打破するためにPPPが発展し、1990年代には様々な地域に広がっていきました。

例えば、チャタヌーガ市。

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大気汚染などで衰退するまちを、ボトリング工場のあったコカコーラなどが協力し、リバーフロント開発や、中心市街地の再生などで、環境と経済を両立するまちへ変えていきます

1996年には「持続可能な開発をする街」として表彰され、今や「特に住み良い都市のひとつ」と呼ばれるまでに。
この再生のカギとなったのは、官の規制と、民の市場性を繋いだPPPエージェント組織の存在にあります。

なぜ、官民の間に入るの?ということでアメリカが、PPPエージェントを採用する理由は

①官民における価値観・スピードの相違
・官は予算編成に議会承認など時間を要する
・民はスピード感ある開発が求められる
両者の価値観を調整する役割が必要となる。

②行政の割り切り
集客や賑わいをもたらすことは行政に出来ないと割り切って、行政ができると勘違いしてない。

③事業実施のプロを雇用
事業成功のためにその道のプロを雇う。ただし、成果を出せない場合は解雇されるという緊張感のある関係性。

行政の立場に安住せず、行政と地域が良くなるように時に厳しくコントロールしていく役割を担うもの。野球選手のトレーナーのような存在。

アメリカも日本と似たところあるんですね。

ちなみにエージェントといっても形はさまざま。
岡崎さんは先のチャタヌーガ市と、ノースマイアミ市のPPPを掛け合わせ、日本版PPPとして、その手法を取り入れました。

PPPを改めて

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※図は岡崎さんの資料より編集して抜粋。

よく聞くPFIとは全く違う概念。ざっくりは、
PFIは、本来民間の経営ノウハウを活かすはずが、行政が市場に合わない発注をすることも。

PPPは、エージェントが民間との対話を通じて、金融機関の厳しいチェックを受けながら、市場に合わせた事業を行政に提案していきます。

紫波町でのPPPとは

具体的にはどんな特徴があったのか。
かなり簡略してますが、PPPの体系としてはこんな感じ。(詳細はこちらから

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個人的に興味深いのは「デザイン会議」(かなり凄いメンバー!)
まちの開発で、無秩序になりがちなデザインをコントロールする組織。

ノースマイアミ市でのPPPエージェント、フランク・シュニッドマンや岡崎さんによると、

エージェントが行うマネジメント以外に
必要な5つの職能として
①プロデューサー、②建築家、③ランドスケープデザイナー、④グラフィックデザイナー、⑤金融のプロフェッショナルが挙げられる。

この能力を集結させたのが、デザイン会議になっているのですね。

さらにエージェントの経営センスにも注目。
オガールプラザでは「バレーボールの練習専用体育館」「ホテル」を作っています。
通常、誰でも使える体育館にしがちです。ただ、それでは数多ある体育館に埋もれてしまう。

そこで圧倒的に尖りのある体育館にすることで、一定のシェアを確保する。
ピンホールマーケティングと呼ばれる手法を取りました。

さらに作って終わりでなく、稼働率をしっかり確保する経営が重要です。
バレー人材の育成などに取り組むNPOアウルズ紫波スポーツアカデミーの設立で、100人を超える幼児から社会人が、体育館を活用したり、

男子バレー日本代表:龍神NIPPONも合宿に使われたそうです。
ごく普通の体育館だったら、こんな活用はなかったでしょう。

紫波町のPPPエージェントの実力が随所に垣間見えます。

エージェントに求められる資質

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こうした成果を出すエージェント。どのような人間である必要があるのか。実践者の岡崎さんが挙げられたのは、素養、知識、成長過程の3点

素養
まず備わっている能力として重要な点

幼少期からお金に触れ、金銭の価値観や投資的な視点がある
行政の性質を理解している(予算や事業など)
③勉強ばかりでなく、しっかり遊んで世間の潮流を理解している
自分に投資して成長している
貯蓄ができる
約束を守れる(時間や期限)

知識
特定の分野に偏らず、バランスの良い知識が必要です。

政治、行政、経済、法律、金融、財務、エネルギーに食から遊びまで。

成長過程
素養や知識だけでは机上の空論になる。何より実践が重要ということで

①事業構築の経験
 逆算開発やニッチ分野で事業を実戦した経験
②経営判断の経験
 大きな失敗をしない経営
 失敗は必ずあるので、損切りする判断&改善した経験
③経済圏をつくる経験
 地域内にお金を循環させるスモールエリアを構築した経験

実際に、いくつもの危機を乗り越えてきた方から見た資質ということで、大変重みがありますね。
私は投資的な感覚がすごく大切な気がします。

今後の流れ

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国内でも、様々な地域でこうしたPPPが始まりつつあります。岡崎さん曰く、コンサル業界も大きく変わってくるだろうと。

今後、コンサルタント企業名での受注スキームは淘汰され、エージェントの市場ができあがり、そうした人材の交流が盛んになる。

そう予測されています。
今後、こうした優秀なエージェントと手を結べるような自治体、そうでない自治体とで、大きな差が開いていくのかもしれません。

自治体もエージェントに任せればよいのかというと、そうではありません。
縦割り組織の壁を超え、スピード感ある組織づくりや、トップの覚悟が重要です。

考察

誰もがエージェントになれるわけではありません。ただ、実践者が語る本質を知ることは、
エージェントたる人物を見分ける力
都市を経営していくための必要な知識

の獲得に繋がります。そのなかで自分がどんなポジションで戦っていくのか、どんな人達と手を組んでいくべきなのか。考える力を得る一歩になると感じています。

ちなみに、現在進行中のPPP案件は、盛岡バスセンタープロジェクト
人と地域をつなぐ結節点として、2022年3月の開業を目指しています。

まさに公民連携のプロセスを垣間見ることができます。楽しみですね。


今回も、お付き合いいただき、ありがとうございました!


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