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行政予算ゼロを実現する「おもちゃ美術館」のポテンシャル

和歌山の山間部、小〜中学校の同級生は4人でした。9年間クラス替えなし、少人数教育の先駆けで育った私。

まだ廃校にはなってませんが、増え続ける廃校、自分の学校がなくなるって、寂しいですよね。
今回は「廃校活用」のお話。

紹介するのは、
東京都新宿区四谷にある東京おもちゃ美術館
廃校になった小学校をリノベーションして運営されています。

都市経営プロフェッショナルスクールで館長の多田さんから伺ったお話がとってもステキだったのでシェアさせていただきます。

実際に行ってみると、木製のおもちゃで溢れる、なんとも不思議な空間。
親が子供のように・子供と楽しんでいることが、とても印象的でした。

廃校の現状

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近年は、公共施設の老朽化が深刻ですが、小学校や高校などすべて含め、学校は平成14年〜29年度で7,583校が廃校になっています。

現存する廃校は6,580校で、
うち活用されてるのは4,905校。74.5%
活用されていないものは1,675校。25.5%
以外と活用されてるんだなという印象でした。

ただ、こうした公共施設の老朽化、苦しい財政事情をボディブローのように圧迫します。
公共施設を未来に向けてどうするべきなのか、まさに今問われています。

おもちゃ美術館って?

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おもちゃ美術館を運営するのは、NPO法人芸術と遊びの創造協会。

「親子で遊ぶ、文化を伝える、世代を繋ぐ美術館」として、東京おもちゃ美術館が四谷にオープンしたのは2008年。
2年前に10周年を迎えましたが、年間なんと14万人が来場するそう。

「人間が初めて出会うアートはおもちゃである」という哲学のもと、おもちゃ美術館は全国にも展開されています。地域ごとにそのコンセプトは全く異なります。

例えば山口県長門市では
ゆりかごから墓場まで、暮らしに木を取り入れることを目指す「ウッドスタート宣言」のもと、道の駅の一部に「長門おもちゃ美術館」が誕生

特徴なのは、隣接する港にあった廃船を木育キッズ船にリノベして、なんとクルーズできます。
この地域だからこそできる、おもちゃ、道の駅、船のコラボですね。当初の予想を上回る人気で1日8便も運行してるそう。

運営の裏側

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気になるのは運営の裏側。指定管理料とかガッツリ入ってるパターンではと思う方もいるかもですが、実は非常に堅実な経営

東京おもちゃ美術館は、行政の補助を受けず、その稼ぎで新宿区に家賃を払っています。そのノウハウを少し紹介します。

もともと撤去される予定であった「元四谷第4小学校」、区民が撤去しないよう区役所にお願いしたところ。。
行政では維持できないので、自分たちで管理して欲しいとの回答。

2年間の準備期間から住民が廃校の活用を企画。
当時、中野にあったおもちゃ美術館を誘致することを決意します。

でも学校を改装するために1億円の費用が。
もちろん館長を含め、自分たちで資金を準備しなければいけない。

知恵を出し合った結果、
これまで培ったネットワークで全国からのファンドレイジング、銀行融資、理事自らの寄付で、本当に1億円を調達してしまいます。

そして改装後の運営が、とても興味深いです。
まず、「ボランティア募集します」という手法はとっていません。特徴的なその運営とは。

①おもちゃ学芸員
スタッフは「おもちゃ学芸員」という有料講座を受けて資格を取った人
最初20人を募集したら180人が応募。
10期まで実施されるという人気ぶり。
ボランティアスタッフ=「価値ある名誉」なんですね。
2020年となった今、10代〜80代まで総勢330人が登録されています。

②一口館長
一口3,000円からの寄付制度で、1万円以上で名前入りの積み木が掲示されます。寄付することで税控除にもなる。
この「一口館長」、美術館オープン前に1000万円を超える金額が500人以上から集まるという、すごい期待値。

地域とファンが支え、産業が育つ美術館

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地域住民、そして全国のおもちゃ美術館に共感するファンの「想いと行動」がブランド力を高めていることが、よく分かります。

その想いに応えようとする行政に頼らない経営努力があるからこそ、生み出される価値だと感じます。

さらに世界第2位といわれる森林大国である日本。
おもちゃ美術館は、日本の林業を育てるため、地元工務店に美術館の施工を発注したり
国産の木製おもちゃブランド「KItoTEto(キトテト)」を立ち上げたりと、日本の森から新しい産業を育てる取組も進めています。

気持ちのどこかにある「公共施設は行政が維持すべき」というイメージ。
この固定概念がなくなるよう、皆さんとシェアできるといいなと思います。

これからの行政職員に向けて

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公共施設や、それに関わる行政職員をたくさん見てきた多田館長が、これからの公務員に求める資質として、

地元に対して熱量のあること。そして民間プレイヤーと関わる力を持ち、組織を超えて繋ぐ力のある職員。

おもちゃ美術館は林業と子どもが関わるそうで。
行政だと林業と子ども関係の部署という、普段は全く関わらないような部署がまたがります。
そうした部署と取組を進めてきた方だからこそ、感じるものがあるのだと思います。

熱意のない、組織の中で与えられた仕事しか担当ではありません。という職員は、熱意ある民間プレイヤーから、その姿勢が透けて見えることでしょう。
そして最後に伺ったこれからの公務員像とは

リクルートグループのように一人ひとりが成長し、NPOを立ち上げられるくらい外に出ていける職員が増えてほしい。

このスクールを通して感じることですが、
公と民がお互い得意とする分野で「共」を支える「公民の境目が限りなく分からない まち」をデザインしていけないかと思っているところです。

「リクルートのような公務員」私のなかで、とても響く言葉でした。
今週もありがとうございました!


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