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#4 フィリピンのガイドさんたち(1)

棚田ツアーのガイドさん

フィリピンの首都マニラから高速バスで9時間くらい行ったところにバナウェという町がある。山の斜面に美しい棚田が広がっていて世界遺産にも登録されているという。この棚田のハイキングツアーで案内をしてくれたガイドさんのことを紹介したい。

バナウェの中心から棚田近くまではツアー会社のマイクロバスで向かった。バスを降りた後は、ガイドさんが案内してくれて山道を歩いた。この日のハイキングツアーの参加者は私とアメリカから来たご夫婦、合わせて3人だけだった。

バナウェの棚田

ガイドさんは小柄な男性で、地元の人だと言っていた。ガイドとしてほぼ毎日山を歩いていて、長い時は数日間泊まりがけでガイドをすることもあるそうだ。確かに、棚田の凸凹道も安定した足取りですたすた歩いていて相当山道に慣れている感じがした。英語はめちゃめちゃ流暢で、アメリカ人夫婦ともスムーズに会話していた。棚田を歩きながら、棚田の仕組みについて、フィリピンのことについて色々と教えてくれて、時折冗談も言ったりする人だったので、とっても楽しい時間だった。

棚田の中にはこんな風に通路があって歩くことができる

ガイドさんは軽快な足取りでどんどん歩いていく。最初は私もおしゃべりしながら余裕でついていったが、急な斜面の上り下りを続けるうちにだんだんと疲れてきた。足もプルプルしてきてなかなか思うようについていけなくなってきた。棚田は遠くから見たらとっても綺麗だし、棚田の中を歩くのもとっても気持ちがよかったのだが、急斜面に作られた階段は段差が高く登ったり降りたりするのが地味に辛い。

この階段が見た目より急で登るのが大変

そういえばすっかり忘れていたが、ここに来る前にマニラで数日間歩き回っていて足が疲労しているはずだし、何より昨晩は夜行バスで酔ってしまい一晩中トイレにこもっていたんだった。

だんだんと生まれたばかりの子鹿のようになっていく私を心配してガイドさんは歩くペースを落としてくれ、時々休憩も入れてくれて、なんとか最後まで歩ききった。ガイドさんや他の参加者の人たちを私のペースに合わせさせてしまって大変申し訳なかったが、正直とても助かった。

ツアー終了後、これから仲間と一緒に飲みに行くが一緒に行かないかとガイドさんに誘われた。地元の人と話してみたいという好奇心もあり行くことにした。待ち合わせ場所に行くと待っていたのは先ほどのガイドさんだけだった。あれ?仲間と一緒ってさっき言ってなかったっけ?英語聞き間違えた?とちょっと不思議に思ったが、2人でもいいかと思って一緒に飲みに行った。お酒が進み、お喋りも弾んだ。ガイドさんは結婚していて子どももいるのだが数年前に離婚したのだそう。離婚後は妻と子どもとは別居していて、一人暮らしをしていてとても寂しい、と話していた。ガイドとしてとても優秀な一方で、私生活では大変なこともあるんだなとか思いながら私は話を聞いていた。

そんな話をしていると、ガイドさんは私をじっと見て「キミ、綺麗だよね」と言い出した。なんだかおかしな雰囲気になってきた。おっと、これってナンパ?さっきの「寂しい」ってそういうアピールだったの??え、私を飲みに誘ったのってそういうこと???

私はにっこり笑って「ありがとうございます」と言い、頭の中ではどうやってこの場から脱出するかという策を必死に練った。

そんな時、さっき一緒に棚田ツアーに参加していたアメリカ人夫婦がその店にやってきた。なんというタイミング!
そのご夫婦曰く、バナウェには夕飯が食べられるような店は2軒しかなく、そのうちの1つが閉まっていてこの店しか選択肢がなかったのだという。バナウェはそれくらいちっちゃな町なのだが、その時の私はバナウェの小ささに心から感謝した。そのおかげで救世主が現れたのだから!

そのご夫婦が来てくれたことでガイドさんの注意をいい感じに逸らすことができた。次の日は朝が早いのでもう帰ると言ったら、ガイドさんは私をトライシクル(サイドカー付きバイク)にのっけてホテルまで送ってくれた(明らかな飲酒運転で先程とは別の意味でハラハラした笑)。穏便に脱出に成功した。

翌日の早朝4時くらい。ホテルを出て高速バス乗り場へ歩いた。早起きは大の苦手なのだが、次の目的地に行くためのバスがこの時間しかなかったのだ。

街灯もなく真っ暗な道。足元が見えずちょっと危険だなと思いながら歩いていて、ふと空を見上げると、満天の星空。その中を流れる真っ白な天の川。こんなのテレビとか写真でしか見たことない。きれい。

昨日はなんか色々あったけど、まあ、いっか。空を見上げながらバス停へ歩いた。

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