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苦しいのなら人間をやめる

「人間をやめる」

この言葉からは、ネガティブな印象を受ける方がほとんどかと思います。しかしこの言葉の意図するところは、決して「ぶっ飛んで生きろ」とか、「社会的倫理に逆らって生きろ」とか、「命を終わらせろ」などということではありません。自分の中の「人間らしさ」に気づき、冷静に観察して、止めるという意です。私は、この人間をやめる生き方が、次世代に求められる生き方であると真剣に考えています。

昨今、SNSや本屋の自己啓発本コーナーには、次のような言葉が散見されます。「やりたくないことをしていては人生もったいない」「人生は一度きりだ」「自分らしい生き方をしよう」「あなたは自由だ、なりたい自分になろう」「本当のあなたが見つかる」などなど…。これらは、受け手によっては「呪いの言葉」となりえます。特段理由はないけど、自分の現状に迷いを感じている人や、精神的に弱っている人にとって、無意味に焦燥感を与え、冷静さを失わせます。

そもそも、何のためにより良い人生を送るのか、そしてより良い人生とは一体何なのか、という前提条件は一人ひとり違うのに、少しばかり地位と名声のある人が、「生き方間違ってますよ」と言いだし、その理由を「だってあなたは現状に苦しんでるでしょう?」として、オチは「私の金言を聴いて行動すれば人生変わりますよ、本買ってください」であるならば、それはカルト宗教と何ら変わりはありません。

「良い悪い」という価値基準は、その基準が適応される領域、尺度によって変わります。資本主義の領域においては、資本をいかに持つかが「良い」ことであり、功利主義の領域においては、利の最大化が「良い」ことであり、はたまたインスタ女子の領域ではとにかく映えることが「良い」ことです。地球にとっては人間が滅亡することが良いことかもしれません。

「良い人生とはなにか」と言う問いに対して明確な答えを出すことは確かに難しいですが、世界規模で共通している価値基準を一つ挙げるとすると、どうやら「苦しみを取り除く」ことが、私たち人間が重要視している生き方のようです。これは世界宗教であるキリスト教、イスラム教、仏教に共通した考え方です。例えばキリスト教には原罪と救済の考え方がありますし、仏教は元々苦の滅尽に至る道を教える宗教です。現時点で、この考え方に世界中の人々が共感しているのであれば、それは人間の目指すべき生き方の最適解に近いのではないかと思います。

要するに「良い人生」とは「本当の自分を生きる人生」でも「やりたいことができている人生」でもなく、人生の中で受ける「苦しみの総量」を減らすことにあり、そういう生き方が、これからの世の中で求められているのだと思います。それを私は「人間をやめる」という方法で叶えられると思うのです。

「人間をやめる」ことの最大の利は、あらゆる「苦」を滅尽できることです。お金、人間関係、いじめ、美醜、老化、病気など、おおよそのの苦しみの原因は「人間であること」に収束しているように思います。その根源を断つことで、諸々の苦しみから解放できると考えています。

人の”生き方”は人それぞれですので、これが正しいとか悪いとかいうものではなく、”選択肢の一つとしてあるのでは”ということです。人間でありながら人間を脱する「脱・人類」の生き方を、私は実践していきたいと思います。

ここまで書いてきましたが、お気づきの方は「人間をやめる」とは「仏教」のこと、とくに初期仏教の考え方だとお想いになるでしょう。無常や縁起の理法によって促される自己価値基準の解体、苦を観察し滅尽を目指すという意味において、 9割9分はその通りなのですが、僅かに私自身の解釈を加えていきたいと思います。巷の大乗仏教ベースの自己啓発本のような、粗雑でコラージュ的な内容にならないよう、心掛けていきたいと思います。

基本的には、自分自身の「人間をやめる生き方」の整理・実践のために書きます。粗方整理が済めば、閉鎖しようと思っています。もう1つは、この「人間をやめる」生き方、考え方で、少しでも救われる方がいれば、ネット上でまとめてもいいかなという気がしたからです。またこれを機に、仏教の魅力に気づく方が増えれば、同志が増えて嬉しい限りです。

もちろん考え方が合わない方もいるでしょうから、それはそれでよいのです。このページからすぐに離れて、貴重な時間を割かないようにしてください。

私が是非読んでほしいなと思う方は、「生き方」という、人生で一番考えなくてはいけない命題に答えを出せていない方です。迷いの中にある方です。自分は確かにこの人生を生きているのに、何を指針として進めばよいのか、何を信条として生きていけばよいのか、未だ見定められていない方。ニーチェの言葉?釈迦の言葉?成功者の哲学?孔子の論語?利己的?利他的?功利主義?いったいどう生きればよいのかわからない方へ。本屋に溢れかえっている自己啓発書に手を伸ばし、お金を浪費する前に、ぜひご一読頂けたら幸いです。

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