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ゲームを作るということは、家を作りながら人を家に招くようなものだ

自己紹介の記事の次は何を書こうか……と、かなり悩んだ末に、
「とりあえず初回だし仕方ないなあゲームのこと書くかぁー(嫌なのかw)」
という感じになりました。ということで書いていこうと思います。


【ゲームを作るということは、家を作りながら人を家に招くようなものだ】

これは自分の言葉ではありません。
数年前、Naughty Dogの偉い人?(お名前忘れました)のインタビューで、ゲーム制作についてこのような内容のことを話されていて、当時はあまり話題にならなかったんですが、個人的に
「あーーーそれ!わかる!」
「なんて的確な例えなんだ!」

となったので一般の方にもコンシューマーゲームを作る感覚をちょっとでも共有できれば!と思い、ゲーム制作を家造りに例えて書いてみることにしました。
何もないところから家を作って、そこで暮らしながら、最終的にお客様にその家を公開して売る、みたいなイメージで書いております。


日々、こういうことを感じて開発者はゲームを作っている!というのを少しでも分かっていただければありがたいです。

※ゲーム開発関係者からすると「うちの会社は違う!」とか、「この表現って間違っている!」なんてことがあるかもしれませんが、あくまで自分主観のイメージなのでご容赦くさだい。本当に間違っていた場合は喜んで訂正しますが、それ以外の場合は、たとえ間違ってからってなんなんですか?と思うことにします(笑)


■企画・設計

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・どんな家を作るのか?
・その家は売れるのか?

みたいなことをまずは少人数で話して決めます。

このとき職人(プログラマ)は、ほとんどおらず、いたとしても良い土地(エンジンや開発ツール)を探したり、土地を見つけてそこを整地したり、水道引く準備などをしたりなどしてます。
デザイナーは、「こんな家とかどう?」みたいなイメージを描いたりします。

プロデューサーは、不動産屋(会社)や親会社と交渉して土地代や建築費や期間などから予算を割り出したりします。

開発メンバーは、まだ家の影も形もないので、プログラマに
「とりあえずテント用意したのしばらくはここで寝てください」
と言われます(笑)
ここから家ができるまでテント生活(仮の開発環境)が続きます。

家(ゲーム)を作る素材もいきなりは用意ができないので、色々と借り物を使って準備をすることが多く、トイレも借り物の簡易トイレだし、風呂はわざわざ銭湯とかを利用するのが続きます。


■土台作成(開発初期)

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まずはゲームの土台となる部分を作ります。
とはいえ、土台を作ったところでどんな家(ゲーム)なのかは設計図にしか書いていないので、正直作っているメンバーもあまりイメージできません。少なくとも作っているメンバー自身がイメージできるように設計図にのっとって一旦作ってみます。

ようやく土台ができると、なんどなく土地と建物の比率だとか、1Fの間取りがわかるので
「多分こんな家(ゲーム)になるのかなあ」
と思ったりしながら作ります。
初めて作ったものが少しだけ形になるので、
「ちょっとできた(キャラ動いたとか)」
という、なんでもないようなことが幸せだったと思う時期です。しかし、こんなほんわかした雰囲気はずっとは続かないので、二度とは戻れない夜でもあります(笑)


■骨組み作り(試作段階)

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家造りの環境(開発環境)が整ったら、いよいよ骨組み的なものを作ってきます。骨組みを作るにあたってメンバーも少し増え、ようやくイメージが少しずつ形になっていくのでとても楽しい時期でもあります。

骨組み作りを進めていくと、メンバーのスキルやチームメンバーが最終型のイメージをどれくらいハッキリしているかで骨組みの形は変わりますし、実際作ってみると

「あれ?最初にイメージしてた北欧風の家にならなくない?」
「置く家具のイメージなんか違うな」
「設計図通りに作ったけど、これだと廊下狭すぎじゃない?」

とかになり、必ずといっていいほど最初に想像したものと、どこかしら違うものができます。
この時点では、どんなゲームも可能性は感じるものの、実際は大体面白くないのが現実です。

開発メンバーは最終形に近づけたいので、一旦作ったのものを壊しては作り直すことになります。

「せっかく何日もかけてつくったのに……」
「でもいい家(ゲーム)を作るには仕方ない」
「せっかく作ったのによいものができないなら意味ないし」
「その柱抜くと2F全部作り直しなんだけど……やるしかないのか!」


等々の感情が入り乱れ、アンビバレントな感情をもったまま試行錯誤を繰り返します。

ようやく骨組みができると、この家(ゲーム)のイメージが少し鮮明になっていきます。

骨組みができてくると、ここあたりで不動産屋や親会社のお偉いさん(お金の権限もってる人)が、視察にきます。
試行錯誤を繰り返しまくった上にやっと作った骨組みですが、建設現場はみんなが暮らすテントや仮設トイレや、木くずやくず鉄などが散乱している状態です。
このままとっちらかった状態だと悪い印象になり建設費を出してくれないので

「なんかすごくいい骨組みな感じ」
「企画書に書いてあったようなイメージの家になりそう感」


というのが感じられるよう、とりあえずドアだけは先に作ってみたり、特徴的な家具を目立つように配置したり、散乱している資材をメッチャ片付けたりします。(デバッグ)

それをお偉いさんがみて、余程のスケジュールの遅れやマイナスイメージがなければ「大分できてきたね」「このまま作り続けていいよ」とか言われます。

本予算が下りるので、ここまで作った家が更地に戻されるリスクが減ります。以後、大手を振って家を作れるので、この日は大体みんなで飲みに行きます(笑)


■本格的な施工(本制作)

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いよいよ家造り(ゲーム)も本番です。
メンバーも急激に増え、チームメンバーだけじゃなく外部の人もどんどん増えていきます。

作業が急に細分化されていき、管理するものが急激に増えます。
外壁を作る人、家具を作る人、ネット回線ひく準備している人、床を作る人、作ったものを配置している人、耐震構造チェックしたり、ライフラインを整備している人などが入り乱れて1個の家を作ります。

本格的な施工に入ると試作段階とは違って、不動産屋や親会社がかなり定期的に進捗を見に来ます。
最初はあまりにイメージできてなかったものがイメージできるようになったことで

「これって本当に北欧風になるの?」
「最初のイメージとちょっと違ってない?」
「蛇口はこっちの方がよくない?」
「ここの社のシステムキッチン使って大丈夫?」


とか急に色々言い始めたりします(決して悪気はありません)

お偉いさんたちの言うことも、当たらずとも遠からずの場合があり……この時期になると大人数で作ることで多くの意志も入るし、決定することが膨大なので、少しずつ思ったようなものにならなくなっていったりします。

そうです、魂は細部に(勝手に)宿ってしまうのです!

また大半の場合、最終的なイメージを実現しようとすると予算が無くなることが多く

「ここのままじゃ完成しないよね」
「トイレ2個とか作る予算ないでしょ」
「今から窓増やすんですか?」


など一旦混乱しがちな時期に入ります。(必要な混乱であり必ず乗り越えなければならないものですが)
混乱しているにも関わらず人に見せる機会はどんどん増え、家を作りながら、定期的にホームパーティーを開かないといけない状況になります。

ホームパーティーの日はわかっているんですが、家を作り続けないといけません。ただ、家を作っている人たちはそこで暮らしてしまっている状態なので、日々の生活により部屋がめちゃくちゃな状態になっています。それを片付けては飾り付けしたり、あたらしくできた部分が目立つようにデイスプレイしたりと、追い込まれた状態になります。

そんな状況の中、いざお偉いさんがパーティーに来ると、だいたいの場合は昨日まで問題なく開いていた玄関のドアが開かなかったりするなどトラブルに見舞われます。(業界あるある)

また完成が近づくと一般のお客さんにも作り中の家を宣伝したりしないといけなくなります。急にお客さんに作り途中の家を見せるとなるとハードルが上がって見せる部分は製品相当の作り込みが必要になり、家の一部だけが部分的に完成しているいびつな状態になります。

しばらくはホームパーティーを開催し終わったら、なるべく早く後片付けをして、生活をしながら次のホームパーティーに向けて準備するような状況が続きます。

このように混乱しながらホームパーティーや外部への露出を繰り返すことで精神は擦り減っていきますが、徐々に最終形もハッキリしてくるし、作れない部分に優先順位をつけたり、あきらめたりすることでカチッとした最終形をもう一度見据えていきます。


■最終施工(開発末期)

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いよいよ家も完成してきて、実際に作った家で生活してみることになります。しかし、実際ほぼ完成した家に住んでみると色々な問題がでてきます。

「照明のスイッチ、左右逆の方がよくない?」
「コンセント足りなくてメッチャ不便」
「ネットつながらない」
「お風呂の水が止まらない」
「貼っても貼っても壁紙がはがれてくる」
「朝起きたら急に家のドアが開かなくなってた」


などスーパー色々な問題が出てきます。

そんな状態にも関わらず外部の販売会社とかの人を家にちょくちょく招いたりします。ある日、急に
「明日、販売会社の人がくるらしいから家みれる?」
とか言われたりしますが、その時にかぎって
「昨日から、全然電気つかないんですけど……明日までになんとかします!」とかになったりします(業界あるある)
また外部への宣伝も加速するため、開発以外の仕事が増えたりもします。
βテストなんてやろうものなら、家に住んでる状態でお客さんをどんどん家に招待するような異常な状態になります(笑)

最終フェーズでは、家のゴミやいけてない部分をひたすら修正したり、決められた期限までに完成させるプレッシャーと戦いながら「自由」とはほど遠い生活を強いられます。


■完成

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全ての不具合を取りきり、やっとお客さんに届けてOKな状態になり完成となります。

ただ、開発者的には完成という気持ちはあまりなく
「ほぼほぼ程度完成したものが期限がきたので終わった」
「まだまだ作り込みたいけど一応完成したのでもう諦める」

という感覚が強い気がします。
開発者のクオリティーを無限に上げたいという欲望は尽きることがないのです。


■まとめ

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このように家(ゲーム)は、多くの人数でパラレルに作りながら、途中何度もホームパーティーを繰り返したり、お客さんに作りかけの家を露出したりしながら作っていきます。

まさに

【ゲームを作るということは、家を作りながら人を家に招くようなものだ】

ということです。
作りながら、そこに暮らしながら、ホームパーティーをするようなもんなのです。

これでもわかりにくいという方に、もっとわかりやすい別の例えとして言うと、

「あつまれどうぶつの森」の100倍の広さの1つの島を、100人で作りながら、定期的に島に人を招いて高評価を得る

みたいな感じかと思います。

なかなか大変そうですよね?

でも達成できたら、みんなの力で作り上げれたら、意外と楽しかったりします。

しかも、それでお客さんに喜んでもらって、その人の人生の時間を少しでも豊かにできたとしたら?

それってシンプルに、すごいことなんじゃないかといつも思っています。

だからゲーム制作は、すごく大変でもやめられないのかもしれません!

よろしければサポートを宜しくお願いします。頂きましたサポートは今後の創作活動に使わさせていただきます。決してビール代にはしませんのでご安心ください(笑)