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まるでお家のような仕事場 | スタッフインタビュー #01

介護現場で、ひとりの生き様に最期まで伴走し、生きるということを問い続ける櫻想(侍)(おうそう・さむらい、以下、櫻想)では、利用者の方だけでなく、ともに働く人とも、全力で向き合い、「どう生きていきたいのか?」ということを問いながら、働き方をつくり続けています。

今回は、「櫻想は、私にとってのお家です(笑)」と話すスタッフのはるかさんも交えて、櫻想とはどんな会社なのか?櫻想で働くとはどういうことなのか?ということについて話をお聞きしました。


話者プロフィール

はるかさん
介護の専門学校を卒業後、老人保健施設に就職すし、一般的な介護業務に従事する。
第一子出産後、櫻想を紹介され、アットホームな雰囲気で子連れ出勤できるところと、今までと違った考え方で介護をしていく新しい介護の世界に魅力を感じ入社。
何があっても辞めない、辞めろと言われても出社することを会社代表と上司に突如として決意表明し、今に至る。

櫻井さん
看護学生を経て医療業界から介護の世界へ。介護福祉士として、多種多様な現場を経験する。利用者も職員も自分らしくいられる場所を見つけられるといいなと願いながら、職務に従事する。

諸橋さん
関東を中心に、新規事業立ち上げの書類整備から、介護職員、営業、管理業務等、介護医療現場のすべての業務に従事した経験を持つ。2021年5月より株式会社櫻想の代表取締役・訪問介護事業所侍の管理者を務める。

侍の仲間とともに、高齢者を中心に、障害や病気等の要因で生活に困窮している方々の生活全般における支援に日夜取り組んでいる。

みんなの自宅のような事務所

夏休みさえも、自分の家にいるよりも櫻想の事務所にいる時間のほうが長かったというはるかさんは、「櫻想について悪いことを言えと言われても、なにもないです(笑)」と笑います。

はるかさん 家にこもってばかりいるのも息が詰まってしまうので、仕事が休みでもよく事務所にこどもたちを連れてきて、ここで時間を過ごしています。
でも何がすごいって、私が休みなのに事務所にいても、他のスタッフのみんなも気にしないし、「なんでここにいるの?」とは聞かれないんです(笑)

正社員よりも、事務所にいる日数は多いかもしれないというはるかさん。お昼だけ食べに、事務所へ来ることもあったり、仕事が終わってもしばらく事務所でこどもたちと過ごしてから帰ることも多いといいます。

櫻想の事務所は、介護で使う備品が置いてあるのはもちろん、テレビがあったり、子ども用のおもちゃがあったり、ビーズクッションが置いてあったりと、のんびり過ごせるリビングのような空間になっています。

櫻想では、こども連れでの出勤を受け入れており、保護者が仕事をしている間は、事務所にいる諸橋さんや櫻井さん、他のスタッフがこどもたちを気にかけたり、介護の現場にこどもたちがついていくこともあります。

はるかさん こどもも事務所に来るのが好きなので、今日は仕事がないというと落ち込むんです。
こどもたちが大きくなって、小学校に通うようになったら、事務所に帰ってきてもらって、ここで宿題とかやってほしいですね(笑)

もともと専門学校を卒業後、関東地方で介護の職に就いていたはるかさん。第一子出産後に仕事を辞めて市原に引っ越しましたが、ちょうどはるかさんが引っ越しをした時期は、コロナ禍の真っ只中。

こどもを保育園に預けることにためらいがある一方で、ずっと家にいるのも辛いと感じていました。そんなとき、こども連れでも働けるという櫻想の話を聞いて、求人に応募したんだそうです。

はるかさんの隣で、慣れた様子でさりげなくこどものお世話をする櫻井さん。

年代や役割を問わず、みんながあたりまえにいる場

はるかさんは、妊娠中でずっと家にいないといけなかった時期に、マタニティーブルーのような状態になってしまい、なんだかわからないけど涙が出てしまうこともあるほど、しんどいこともあったんだとか。そういった経緯もあり、仕事もせず、ずっと家にいるよりも、こどもがいても働ける櫻想の環境がありがたいといいます。

はるかさん 赤ちゃんとふたりきりで家にいるだけだと、下手したら1日しゃべらない日もありました。旦那は朝も早いし、帰ってくるのも遅いので、話すのはスーパーの人と挨拶するときくらい。

今までは、1人で気軽に出かけられていたのも、赤ちゃんを連れていくとなると大変だし、家にこもってばかりになってしまうのが辛いなと感じていたこともあって…私はやっぱり、できるだけ働ける方がいいなと思っていました。

息子さんを産んで5ヶ月後には仕事に復帰したというはるかさん。ですが、事務所へ顔を出したのは、なんと出産の5日後!短時間ではありましたが、生まれたばかりのこどもの顔を見せようと事務所に立ち寄ったそうです。

入れ替わり立ち替わり、いろんなスタッフに見守られながら過ごすこどもたちの姿があたりまえにある事務所。誰かのお家にお邪魔しているような気分になります。

櫻井さん はるかさんは、出産してすぐに赤ちゃんの顔を見せに来たあとも、1ヶ月もしないうちに、ちょこちょこ事務所へ遊びに来るようになりました(笑) 
産休中は、保険などの関係で給料は基本的には払えないんですが、ただただ遊びにきてましたね。

諸橋さん 産後の復帰に向けた研修などを受けるために、一時的に給料を出すことは法律上も可能なので、そういった手続きを取って研修をしたことはありました(笑)

手当や法律のことなどは調べればわかることとはいえ、産休中の仕事など一般的ではない取り組みを実践するためには、手続きなど、ある程度の手間がかかります。そうした手間を乗り越えてでも、スタッフの希望と向き合って制度や環境を整えていくところに、櫻想のらしさが現れているように感じました。

諸橋さん  産休育休をちゃんと取れない会社が多いから、産休育休を取ってもらうための補助が増えたり、法律が厳しくなったりしていますが、だからこそ、そもそも休みを取らずにできるだけ働きたい人にとっては、融通が利かない制度なんですよね。

望んでいる休みを取れないという問題への対策が進んだ結果なので、しかたない部分もあるとは思うんですが、働きたいと願う本人の希望と逆行してしまいかねない現状は、寂しいというか、もっとうまくいかないものかなと思っています。

こどもを職場に連れてきてまで働きたいかというスタッフの希望や、保育園の利用有無、こどもの年齢などによっても状況は変わりますが、こどもが近くにいても働けるという選択肢があることが大切なのではないかと、諸橋さんはいいます。

諸橋さん 介護施設での慰問のようなイベントはあっても、日常的に介護とこどもが交わるような場を実際につくっている人たちは、あんまりいないと思います。でも、やってみると見えてくるものはあるんですよね。

イベントとかじゃなく、あたりまえにこどもがいる空間。家族じゃないんだけど、そういったコミュニティは、やっぱり必要なんじゃないかと感じています。

実際、こどもたちが利用者さんの元へ行くと、普段は表情の変わらない方が笑顔を見せたり、「来たの?」とこどもたちに声を掛けたり、面倒をみようとしたり、自然と交流が生まれるんだそうです。

諸橋さん なんだかんだひとりでいるのは寂しい。結局、こどもも大人も本質は変わらないってことなんじゃないかと思います。

櫻井さん  本質はそうなんだなって、思いますよね。
社会に出て働いてたりすると、大人だからといって、理性とか、制限とかでそういった気持ちをちょっと抑えますが、認知症があったりする利用者の方たちは、あんまりそういう蓋もないので、こどもたちと素直につながっているのかもしれません。

こどもを輪の中心にして、スタッフの間でも自然とコミュニケーションが生まれていました。

スタッフの意思と向き合いたい

同じようにこどもを持つ親だからといって、「こうしたい」という目標が同じわけではない。だからこそ、スタッフ1人ずつを「普通」という基準に合わせるのではなく、1人ずつを見て、どうしたいのか、 どこを目的にするのか、何が必要なのかということに、ちゃんと向き合いたいと櫻井さんは話します。

櫻井さん 櫻想は、ここに関わってる人たちが、自分というものを出せる場所でありたいと思っています。話を聞いてくれる人や、一緒に真面目に話をできる人がいる環境があること。そういったことが大事なんだと思っています。

諸橋さん 会社や仕事って、生き方の話とイコールなんだと思います。基本、仕事は苦痛なものだという話もありますが、人生の中の長い時間を使うのだからこそ、できるだけ楽しい場所になってほしい。 
僕の仕事は、スタッフそれぞれのライフステージの変化も聞き取って、予測を立てながら個々に対応をすること。「ここでいいな」と働いているスタッフに思ってもらえたらいいですね。

はるかさん ここでじゃなくて、ここ「が」いいです(笑)

みんなでおやつタイムをしているときの一枚。この日は、部屋の奥ではるかさんの娘さんも遊んでいました。

はるかさんと櫻井さん、諸橋さんの「中学生になったら反抗期になるから、こどもたちはもう事務所へは来ないかも?」「いや、家出先がこの事務所かも(笑)」という話を聞きながら、こどもたちにとっても、自宅や保育園、学校など以外に、気楽に立ち寄ることができる居場所があることは、とても心強いことなのではと感じました。

また、そういった年齢や役割にとらわれず、こどもたちも含めてごちゃまぜに日常に交じり合う場は、働いているスタッフにとっても、ひとりで生活しながら、櫻想の介護を受けて暮らす利用者の方にとっても得難いものなのかもしれません。

次回は、介護の現状と比較しながら、櫻想での介護現場での取り組みを教えていただき、櫻想のとらえている介護とはどのようなものなのかをお聞きします。

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