介護現場で、ひとりの生き様に最期まで伴走し、生きるということを問い続ける櫻想(侍)(おうそう・さむらい、以下、櫻想)では、利用者の方だけでなく、ともに働く人とも、全力で向き合い、「どう生きていきたいのか?」ということを問いながら、働き方をつくり続けています。
今回は、「櫻想は、私にとってのお家です(笑)」と話すスタッフのはるかさんも交えて、櫻想とはどんな会社なのか?櫻想で働くとはどういうことなのか?ということについて話をお聞きしました。
話者プロフィール
みんなの自宅のような事務所
夏休みさえも、自分の家にいるよりも櫻想の事務所にいる時間のほうが長かったというはるかさんは、「櫻想について悪いことを言えと言われても、なにもないです(笑)」と笑います。
正社員よりも、事務所にいる日数は多いかもしれないというはるかさん。お昼だけ食べに、事務所へ来ることもあったり、仕事が終わってもしばらく事務所でこどもたちと過ごしてから帰ることも多いといいます。
櫻想では、こども連れでの出勤を受け入れており、保護者が仕事をしている間は、事務所にいる諸橋さんや櫻井さん、他のスタッフがこどもたちを気にかけたり、介護の現場にこどもたちがついていくこともあります。
もともと専門学校を卒業後、関東地方で介護の職に就いていたはるかさん。第一子出産後に仕事を辞めて市原に引っ越しましたが、ちょうどはるかさんが引っ越しをした時期は、コロナ禍の真っ只中。
こどもを保育園に預けることにためらいがある一方で、ずっと家にいるのも辛いと感じていました。そんなとき、こども連れでも働けるという櫻想の話を聞いて、求人に応募したんだそうです。
年代や役割を問わず、みんながあたりまえにいる場
はるかさんは、妊娠中でずっと家にいないといけなかった時期に、マタニティーブルーのような状態になってしまい、なんだかわからないけど涙が出てしまうこともあるほど、しんどいこともあったんだとか。そういった経緯もあり、仕事もせず、ずっと家にいるよりも、こどもがいても働ける櫻想の環境がありがたいといいます。
息子さんを産んで5ヶ月後には仕事に復帰したというはるかさん。ですが、事務所へ顔を出したのは、なんと出産の5日後!短時間ではありましたが、生まれたばかりのこどもの顔を見せようと事務所に立ち寄ったそうです。
手当や法律のことなどは調べればわかることとはいえ、産休中の仕事など一般的ではない取り組みを実践するためには、手続きなど、ある程度の手間がかかります。そうした手間を乗り越えてでも、スタッフの希望と向き合って制度や環境を整えていくところに、櫻想のらしさが現れているように感じました。
こどもを職場に連れてきてまで働きたいかというスタッフの希望や、保育園の利用有無、こどもの年齢などによっても状況は変わりますが、こどもが近くにいても働けるという選択肢があることが大切なのではないかと、諸橋さんはいいます。
実際、こどもたちが利用者さんの元へ行くと、普段は表情の変わらない方が笑顔を見せたり、「来たの?」とこどもたちに声を掛けたり、面倒をみようとしたり、自然と交流が生まれるんだそうです。
スタッフの意思と向き合いたい
同じようにこどもを持つ親だからといって、「こうしたい」という目標が同じわけではない。だからこそ、スタッフ1人ずつを「普通」という基準に合わせるのではなく、1人ずつを見て、どうしたいのか、 どこを目的にするのか、何が必要なのかということに、ちゃんと向き合いたいと櫻井さんは話します。
はるかさんと櫻井さん、諸橋さんの「中学生になったら反抗期になるから、こどもたちはもう事務所へは来ないかも?」「いや、家出先がこの事務所かも(笑)」という話を聞きながら、こどもたちにとっても、自宅や保育園、学校など以外に、気楽に立ち寄ることができる居場所があることは、とても心強いことなのではと感じました。
また、そういった年齢や役割にとらわれず、こどもたちも含めてごちゃまぜに日常に交じり合う場は、働いているスタッフにとっても、ひとりで生活しながら、櫻想の介護を受けて暮らす利用者の方にとっても得難いものなのかもしれません。
次回は、介護の現状と比較しながら、櫻想での介護現場での取り組みを教えていただき、櫻想のとらえている介護とはどのようなものなのかをお聞きします。