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僕はおまえが、すきゾ!(42)

「そうかー、お前達、付き合ってるのかー!」
優作が喜んで言った。
「何だよ、何だよ、一言も俺に言わないでよー」
フッと優しい目になった優作は僕をジッと細い目で見つめていた。
古賀さんが言った。彼女は今、どうしてるの?と。古賀さんは、僕が彼女にした事を知らない。
「僕があんな事をしたから、だから僕はその罪で、殺されるんだ・・・」
「何言ってるんだよ、宏人」と優作は僕の肩
に肩を寄せて、言った。
「彼女に何をしたの?」古賀さんは厳しい声で僕を詰問した。
僕は彼女をはけ口にしたんだ。日々の苛々を彼女にぶつけただけなのだ。段々と、僕は自分がやった事がどれだけの悪行かと思い始めた。彼女は妊娠しているかも知れない。だけども、それを誰にも言えず、姿を消したのだ。
「僕は、彼女を利用しただけなんだ・・・」
「利用?利用って何だよ」
「利用しただけなんだ!」
僕は今にも発狂しそうな勢いで、叫んだ。
その時、僕の腹に古賀さんの足が飛んだ。古賀さんの足が僕の腹に入った。僕はその場にせき込んで沈んだ。
優作は古賀さんを呆然として見ていた。
「武田さん!油科ちゃんに一体何したのよ!」
僕はその場に崩れたまま、古賀さんから目を逸らして言った。
「彼女、妊娠してるかも知れない・・・」
古賀さんはその一言で、全てを悟ったようだった。
「彼女に電話しなさいよ」
古賀さんは、怒りを鎮めるような低い声で、しかし強い口調で言った。
そして古賀さんは、テーブルに置いてある僕のケータイを手に取り、僕に投げつけた。
「最後に連絡取ったのいつなの?」
僕は黙っていた。あの夜から彼女とは、連絡を取っていなかった。
大丈夫大丈夫、きっと大丈夫と三回大丈夫と唱えて、目を開けた。
僕の視界はぼやけていた。涙で目の前が見えないのだ。僕は何をやってるんだろう。そして、彼らに何をやらせているんだろう。自分が情けなくなった。
僕はうろたえながらも、油科さんの携帯番号をタップした。
どんな事を言われるのか、怖かった。
長いコール音の間中、僕の頭の中で、笑い合っている優作と僕の声が響いていた。
 
 

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