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不安は一生つきまとう

縁あって、母校でお話をさせていただくことになりました。

いまの大学生とは2回り以上歳が離れているので、もはや親子ぐらいの隔たりがあります。そんな彼らにとって有益な話ができるかどうかは分かりませんが、お役目なのでがんばります。

私が伝えたいことはほぼこのnoteに書いていて、ゲームチェンジは何度も訪れるということ、何事も永遠には続かないということ、そして不安がなくなることはないということです。

Webデザイナーなんかいなかった

大学生時代、たまたまマルチメディア論のゼミに入り、そこで初めてパソコンを触る機会に恵まれました。

マルチメディア(英語:multimedia)とは、複数の種類の情報をひとまとめにして扱うメディアのことである。一般的には映像(動画)や音楽など動的コンテンツを含むイメージで捉えられることが多い。複合媒体と訳す。主に1990年代から盛んに商業化され、21世紀に入ってからは様々な機器やサービスで欠かせない機能となっている。

マルチメディア(Wikipedia)

1995年8月24日にWindows95が発売され、一般人がパソコンを触れるようになり始めた時代。ちょうどタイミングよくパソコン室が学部内にできて、そこがゼミの活動拠点になりました。

Microsoft Windows 95(マイクロソフト ウィンドウズ 95)は、マイクロソフトがWindows 3.1の後継として、1995年に発売したオペレーティングシステム (OS) である。インターネットが一般に広まりはじめた時期に、業務用だけでなく、一般家庭にも急速な普及を見せた画期的なOSで、パソコンを爆発的に普及させる原動力となった。

Microsoft Windows 95(Wikipedia)

ゼミの課題として初めて自分のWebサイトを作るという体験をして、共通の趣味嗜好を持つ人たちと繋がる楽しさを知り、一気にインターネットにのめりこみました。それからというもの、Webサイトを作るために毎日パソコン室に通うようになり、夜中まで籠って制作するという生活を卒業まで続けました。

しかし、Web制作とはまったく関係がない業種を選んで就職しました。当時はWebデザイナーという職業はおろか、企業のWebサイトを作る企業などほぼ存在していなかったため、選択肢にすら入っていなかったのです。

今でも思います。もしあの頃の私に先見の明があったら、Webサイトを作ることが仕事になると気付けていたら、Web系の会社に就職したり起業したりしていたら、今頃は大成功していたかもしれないと。

あれから20数年たった今、企業がWebサイトを持つのは当たり前になり、Webデザイナーという仕事は花形となり、多くの人たちがWebデザイナーを目指す時代になったのは、皆さんもご存知のとおりです。

20年経てば世界は一変する。それが社会に出て学んだ最大の教訓です。

未来を予測することは簡単ではありませんが、ゲームチェンジの波に乗りたければ「すでに起こった未来」を見逃さないようにすることが重要です。

新卒で就職した会社がなくなった

1998年に大学を卒業した私は、CDが最も売れていた時代に音楽業界に就職しました。当時はカラオケブームも相まってミリオンセラーが続出、バブル崩壊後で就職難の時代ではありましたが、音楽産業はまだまだ好調でした。

下のグラフを見ると、ちょうどパッケージビジネスのピークに就職していたことが分かります。入社した翌年ぐらいから少しずつ売上が低迷していき、会社は拠点の集約やシステムの刷新などで、経費削減に努めていきます。

音楽CD・音楽配信の売上動向をさぐる(2020年公開版) より引用

しかし2000年代に音楽配信の時代が訪れ、スマートフォンの普及により定額のストリーミングサービスが主流になり、パッケージソフト市場はさらに縮小。会社は5期連続の赤字決算で債務超過に転落し、2018年に主力事業を他社へ譲渡し特別清算を申請して解散しました。

1998年に絶頂期を迎えた会社が、20年後にはなくなった。この経験から、たとえ今は勢いがある業界だとしても、10年後・20年後はどうなっているか分からないぞと、一歩引いて考えるようになりました。

20年で隆盛する業界もあれば、衰退する業界もあるのです。

いつまでも不安は消えない

「会社員」「個人事業主」「経営者」と経験してきましたが、立場や働き方は変われど、常に何かしらの不安を抱えながら日々を過ごしています。

大学生の頃、自分が勉強していることが将来何の役に立つのかが分からず、このまま大学に通うことに何の意味があるのだろうか?という、漠然とした不安を感じていました。

就職活動をしていた頃は、自分はこれからどうなっていくのか?社会に出てうまくやっていけるのか?そもそも就職できるのか?など、内定が決まるまで常に不安が付きまといっていました。

いざ就職すると、自分があまりにも仕事ができないことに対して絶望し、また失敗して先輩や上司に怒られるんじゃないか?このまま今の仕事を続けていてよいのか?と、不安から来るストレスに苛まれるようになります。

転職を決意して仕事を辞めたときは、勉強期間と称して1年間ぐらい無職の時期があり、あまりにも社会との接点がなくなってしまったために、このまま転職できずに引きこもりになってしまうんじゃないか?という不安を抱えていました。

そこから転職を経て独立してみると、自由な働き方などと呑気なことを言っている場合ではなく、仕事がなくなるんじゃないか?今月の給料が払えないんじゃないか?と、結局のところ常に不安な日々を送っています。

どのような状況になったとしても、質が変わるだけで根本的に不安が無くなることはないのです。

不安と上手に付き合う方法を身に付けよう

人が不安を感じるとき、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる脳の領域が活性化しています。特に、何もしていないときやぼんやりしているときに、DMNが活発に活動しています。

DMNの活動が過剰になると、今考えてもどうしようもないことを、とりとめもなく考えてしまいます。そして「過去への後悔」や「未来への不安」といった雑念に囚われているとき、脳はエネルギーの80%を消費しています。

人間の脳は、何もしていないとおのずと不安になるものなのです。時間を持て余している学生や無職、そしてゆとりのあるお金持ちが不安に取り憑かれるのは、何もしなくて良い時間が長いことが原因なのかもしれません。

不安症の方はDMNが過活動状態にあると言われています。クヨクヨ考えることの堂々巡りをしてしまう反芻思考が強ければ強いほど、DMN内の神経活動は活発になります。逆に考えると、DMNの活動を意図的に減弱させることができれば、不安は軽減されます。

過去の記憶をベースに活動するDMNに対して、現在の状況を元に活動するのが、セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)です。そして、DMNとCENの切り替えを担っているのが、セイリエンス・ネットワーク(SN)です。

例えば、マインドフルネスなどの瞑想に取り組むことで、CENとSNの結びつきが強くなり、DMNの過剰活動が低下するという研究結果があります。

私にとってはマインドフルネスが不安と上手に付き合うための方法ですが、ヨガでもウォーキングでも編み物でも、今ここに集中できる方法であれば何でも良いと思います。

不安を払拭しようとあがくのではなく、そもそも人間は不安を感じるものなのだと開き直って、自分に合った不安との上手な付き合いかたを探してみることをおすすめします。

20代の学生には響かないかもしれませんが、生きる意味より死なない工夫を見つけたほうが、生きるのがずっと楽になりますよ。

では。


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