見出し画像

素晴らしいアイデアを生み出す

私たちの会社は、「デジタルクリエイティブ=つくる」ことに軸足を置いています。クリエイティブな仕事は、発散と収束の繰り返しです。

発散では複数のアイデアを出し、収束で優れたアイデアを選択したのちに、成果物として実装します。Webサイト制作・動画編集・デジタルものづくり・ワークショップなど、クリエイティブの形態が変わっても、基本的な考え方は同じです。

発散と収束

無から有を生み出す類の仕事では、アイデアはどのように生まれるか?という仕組みを知っておくと便利です。今回はアイデアの生み出し方について書いてみます。

まずはアイデアの源泉を満たす

まず、アイデアの定義をおさらいしてみます。

アメリカ合衆国の実業家ジェームズ・ウェブ・ヤングが著した「アイデアのつくり方」という書籍によると、アイデア作成の基礎となる原理は下記のように定義されています。

・アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
・既存の要素を新しい組み合わせに導く才能は、物事の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい

アイデアのつくり方

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせで、その源泉は私たちの頭の中にある記憶です。日常的に情報をインプットする習慣がある人は、頭のデータベースに潤沢なストックがあるため、アイデアを生み出しやすい状態にあります。

アイデアが浮かばないときは、まずアイデアの源泉となる情報を集めるところから始めます。突飛なアイデアを生み出したい場合は、できるだけかけ離れたジャンルの情報を収集することが有効です。

寝かせて熟成させる

十分な情報を収集できたら、それらを組み合わせていきます。ただし、すぐに組み合わせようとするのではなく、一旦寝かせます。寝かせることによって、次の2つの効果を得ることができます。

無意識に情報が取捨選択される

過去の投稿でも書きましたが、私たちの脳には情報の取捨選択を自動的に行ってくれるという性質があります。顕在意識で具体的な問いを立てると、その意思を潜在意識が受け継ぎ、無意識下で答えを探してアンテナを張り続けます。

つまり、アイデアを求めている状態で日常を過ごしていると、関連しそうな情報を脳が優先的に選択してくれるのです。

成功哲学の第一人者であるナポレオン・ヒルの著書に「思考は現実化する」があります。自己啓発の文脈で書かれた本ですが、脳科学の視点で読むと印象が変わってきます。

なりたい自分の姿を具体的に描いて寝かせる(=潜在意識に定着させる)ことによって、必要な情報を自動選択してくれるという、脳の特性を活かす方法と捉えると、なるほど理に適っています。

「セレンディピティ」「引き寄せの法則」「ポジティブ・シンキング」なども、同じような解釈ができそうです。

自動的に記憶が結合される

私たちの脳は、何もしていないときでも活発に活動しています。ぼんやりしているとき、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる脳の領域が活性化します。DMNが脳の中に散らばる記憶の断片を無意識のうちにつなぎ合わせて、ひらめきを生み出してくれます。

お風呂に入ったりやシャワーを浴びているときに、良いアイデアをひらめいた…といった話を耳にしたことはないでしょうか?古代ギリシャの学者アルキメデスは、湯船に浸かったときに金の質量を測るアイデアを思いついたと伝えられています。

また、中国・北宋時代の欧陽脩は、良い考えの生まれやすい状況のことを「三上(さんじょう)」という言葉で表現しています。

  • 馬上(乗り物に乗っているとき)

  • 枕上(布団に横になっているとき)

  • 厠上(トイレにいるとき)

これらの逸話も、リラックスした状態でDMNが活性化したことで、ひらめきが生まれたと考えられます。

雑念が多いと良いアイデアは生まれない

DMNは「心がさまよっているときに働く回路」でもあります。ぼんやりしているときに、さまざまな雑念や思考が沸いてきて止まらなくなるといった経験はないでしょうか?

DMNの活動が過剰になると、今考えてもどうしようもないことを、とりとめもなく考えてしまいます。そして、DMNは脳のエネルギーの80%を消費していると言われています。

「過去への後悔」や「未来への不安」といった雑念に囚われているとき、脳はエネルギーの大部分を浪費しているのです。このような不毛な状態のことを、マインドワンダリング(心ここにあらず)と呼びます。

過去の記憶をベースに活動するDMNに対して、現在の状況を元に活動するのが、セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)です。そして、DMNとCENの切り替えを担っているのが、セイリエンス・ネットワーク(SN)です。

マインドフルネスなどの瞑想に取り組むことで、CENとSNの結びつきが強くなり、DMNの過剰活動が低下するという研究結果があります。そして、瞑想に継続的に取り組むことによって、マインドワンダリングな状態から解放されて、ひらめきが生まれやすい脳の状態を作ることができます。

脳のリソースをアイデア出しにフル活用できるように、日頃から脳をチューニングしていくことが重要です。体を鍛えるのと同じように、脳も意識的に鍛えることができるのです。

無意識にしつこく考え続ける

今回は脳の性質を利用して、一人でアイデアを出す方法を書きました。

ロジカルにアイデアを出したい場合や、短時間でアイデアを出さなければならない場合は、アイデア創出フレームワークを活用すると良いでしょう。

いずれにしても、素晴らしいアイデアは振って沸いたように生まれるものではありません。良いアイデアに巡り合うために必要なのは、適切なインプットと、適度な熟成期間、そしてしつこく考え続ける根気です。

世界を変えるようなイノベーティブなアイデアも、誰かがしつこく考え続けた末に生まれたものなのです。

では。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?