【ニュース往来】地震の順番 東北ー熊本ー小田原

▼2016年4月14日から起きている「熊本地震」は、熊本地方、阿蘇地方、大分と、三つの地域で同時多発した地震らしい。近代以降の日本では誰も経験したことのない地震である。しかし、なにも予測できないわけではなさそうだ。

▼時間軸を近代以前までさかのぼってみると、九州で地震が起きた後、中央構造線断層帯に沿って、四国、近畿と地震が連鎖したことがあった。また、2016年4月16日付の朝日で、磯田道史氏(歴史学者、国際日本文化研究センター准教授)のインタビューが印象に残った。

〈歴史学者として見ますと、現在の地震の発生状況は、17世紀前半に類似している印象を受けます。まず、東北で慶長三陸地震(1611年)が起きて、津波が三陸を襲いました。その8年後と14年後に、熊本で二つの断層地震が発生。それから小田原地震(1633年)、という順番で大地震が起きました。今回は東日本大震災から5年後に熊本に地震が起きました。断言はできませんが、類似性は指摘できると思います。(中略)17世紀前半の例では、東北震災後に、まず熊本、その次に小田原を中心とした関東の都市直下型地震でした。今回の熊本地震は、「西国」の出来事として見過ごさずに、家具の固定や建物の補強など関東でも警戒が必要です。〉

磯田氏はこの比較を通して、日本列島の地震には〈メカニズムや順番に何らかの法則があるのかもしれません〉と語っている。この法則が正しければ、東北、熊本の次は、数年から十数年後、小田原で大きな地震があるということだ。

▼「震度7の地震は日本列島のどこでも起きうる」ことが、今回の「熊本地震」で可視化された。「どこでも」には、もちろん四国も、近畿も、小田原も含まれる。磯田氏と同じ紙面に載った大木聖子氏(慶応大学環境情報学部准教授)の指摘も興味深かった。

〈防災意識について調べた私たちの研究では、地震予測地図を示すことは個人の具体的な防災対策には直結していませんでした。自分の住む地域が地震のリスクが高いことを意味する「真っ赤」になっている地図を見た人たちは恐怖心を抱きますが、家具の転倒防止や家の耐震補強、もっと簡単な備蓄といった防災行動について、しようと考えることすらしていませんでした。/リスクを伝えれば人々の防災対策につながる、という考え方は限界にきています。〉

どうすれば、貴重で衝撃的なデータを、「考える」こと、そして「動く」ことに繋げられるのだろうか。決定的な役割を果たすのは、おそらく「メディア=媒介」だろう。「ニュースとは何か」を決める力を、メディアは――とくに新聞は持っている。今回の熊本地震によって社会の意識が変わりつつあるとすれば、これまでの防災観を変えるためにも、新聞の「編集力」を発揮するまたとないチャンスである。

(2016年4月16日 更新)

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