ケーキナイフと虚言症

 
どうぶつが細胞のために嘘をつくこと、愛おしがれるの、カミサマだけかもしれないけど、それならわたしそうなりたかった、妄言、甘い囁きが身体のど真ん中をとおったあの瞬間にしんじゃえればしあわせだったのかな、って、ひとりきりになるたび思う。
はだかになっても女の子の身体にはナイフを隠しておくだけのちいさなポケットがついている、手渡したら、心臓をひと突きしてくれるかしら、最後まで、間違うきみが見てみたいの。刺してほしかったのはきみにつくられたかわいい方の心臓で、わたしというどうぶつの心臓じゃないと、ていねいに指摘したい、ごめんねって整った口元だけでぺらぺらに謝るきみを、いいよって笑ってゆるしてあげたい、そうやって、カミサマになりたい。
きみに信仰してもらえない、なんの意味もないカミサマになりたい。

ほんの一瞬も弔ってもらえない、細胞たち、わたしはあなたたちのために嘘をつけないので、あなたたちよりも大切なもののためにいつだって本当のことだけを声に出してしまうので、そんなわたしのためにあなたたちは簡単に毎日ころされてしまう。それならせめて、その瞬間まではうつくしく飾ってあげたかった。
丸い爪にマニキュアを塗りながら、ごめんね、謝ったその言葉が、あのときのきみよりも軽くて、薄くて、
あぁ、わたしも、どうぶつだって、気づいてしまって、泣いてもいいかもって思ったの。







生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。