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メアちゃんはそんなに青くない

 
教室は世界のくせにグッピーの水槽よりもずっとちいさい

感情の8割恋と反抗にすり替えられちゃう赤いセイシュン
  
500円あれば佐々木は過去になるメアちゃんは走るのが速い

恋なんてわからないからもう全部花占いに決めてもらおう 
  
カラフルな広告紙に落ちていくかつて前髪だったものたち
 
校則といっしょに破ったスカートの切れ端でぬぐうミルクティー甘い



 
ツイッターのタイムラインにメアちゃんがいいねしたくだらない犬の画像が流れてる、見たことのあるカニンヘンダックス、佐々木の家の、確かゆきって名前だったな。
 
ねぇメアちゃん、1ヶ月と少し前、テーブルに肘をついてすごい勢いでポテト食べながらそれこそ犬が吠えるみたいに文句言ってたときの光景を、あたしはずっと覚えている。もう知らない、嫌いだって、SNSのなにもかもブロックしてすっきりしたみたいな顔で佐々木との恋を終わらせたんじゃなかったの、3秒後にはふたつ隣のクラスの背が高いこと以外なんにも知らない男の話してたメアちゃんの、色素の抜けた髪のくるんと丸まった毛先とか、口角が下がったって整ったままのくちびるとか、そういうの、いつまでたっても鬱陶しく思い出せるのに、ばかで楽観的な(ほめ言葉だよ)メアちゃんの頭にはきっともう残っていない。
切りすぎた前髪とかファミレスの新メニューとか先生にバレないカラコンとか、本当はそういうもののほうがよっぽど大事なくせに恋ばかり繰り返して、それでもすり減っていかないメアちゃんのつやつやのローファーのヒールを見るたびお腹がすくようなもう何にも食べたくないような気持ちになる、けど、恋と空腹と生理と反抗と、数種類しか生まれないように遺伝子を変えられたわたしたちの胸はそれぞれに勝手に膨らんだり膨らまなかったりして美しくなるんであって、誰ひとりとしてクローンじゃない。
 
あーやっぱもう、トマトの入ったハンバーガーしか信用できない。メアちゃんは、トマトもピクルスもレタスも嫌い。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。