ミューズ・イン・ザ・サラダボウル


朝 光らないで
シリアルをすくうスプーン 光らないで
流し見のテレビで快晴を伝えるひと 光らないで
鍵を閉めたか不安になって頭に思い浮かぶ
アパートの古いドアノブ 光らないで 光らないで


君がサラダからきゅうりをよけるみたいにわたしを影にするすべてを生活からよけたとき、太陽はわたしだけを愛してくれるだろうか、
画家になった初恋のひとはでたらめな神話の女神ばかり描いてる、太陽をたまごみたいに抱いて眠るような、でたらめに美しい女神ばかり、
太陽を描くクレヨンの色、あのひとは迷わなかったんだろうな、だからわたしは優柔不断なまま大人になってしまった、
よけられたきゅうりはわたしのサラダの調和を乱している、転校初日のことを思い出す、隣の席の女の子の瞳が怖かった、ちょうどこのサラダのトマトみたいな、わたしたちは完成していたのに、の瞳に見えた。


水 光らないで
くしぎりのトマトの果肉 光らないで
最後まで見たことない映画で死ぬひと 光らないで 
戸棚に仕舞ったか不安になって心臓を鈍く鳴らす
ぎんいろの包丁の横顔 光らないで 光らないで









生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。