堕天使はリップクリームのなかで眠る

 

くちびるのいろをおしえてあげようか、
 
 
心臓がみっつあって、上手に鼓動をわけられたらいいのに、と思う。ひとつでは日付変更線をこえられないような気分になる、とき、大抵のことがうまくいかない。
こい、と、口をゆっくりうごかすあいだ脳をあやつっているだれかを想像してください、その姿が、虹色のさかなだったときにだけ、わたしのことを恋人と呼んでください、わたしも、そのさかなをうつくしいと思えるあいだだけ、恋以外のすべてを傷つけることにするから。
 
うつくしいものとそうでないものの境界線をあなたの心臓の中にみつける、美醜は善悪で、善悪は生命だともうあの薄汚れた夜に決めてしまったので、それは、いのちまであずけてしまうってことで、だからねむってしまったそのやわらかな頬に口づける前、くちびるを、愛と、魔除けと、ほんの少しのごめんなさいで飾っている。
 
そのいろをおしえてあげようか、と、言ってほしい、鏡にも写真にもただしくうつらないいろに名前をつけてほしい、そうして、ちゃんとそれが、うつくしいものの部屋でたおれているって、そう言ってほしい。






生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。