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エロスとタナトスとタコスとティラミス

 
生と死を重ねてつくるティラミスのいちばん苦いところをすくう
 
しにたいと呟く夜のスーパーで手に取る赤の半額シール
 
洗いもの溜めておけない包丁のひかりがあんまりおそろしいから
 
この星で切実なのは皿を洗う音をバックにうたう歌だけ
 
たまごやき焦がした夜は眠るのも朝を呼ぶのも下手になるので
 
いい夢を見た日もひどい悪夢でもひたすらあげるからあげあげる
 
うつくしいひとはいつでもうつくしくどうせキッチンで眠ったりする
 
賞味期限切れてるらしい牛乳とこんなに白くないけどわたし 
 
シリアルをやわらかくしてたべるときやわらかいひとのふりをしている
 
ドーナツの穴からのぞいた天井のシミに浮かべる心象風景
 
もうなにも求めずただ丸まっていたいショートケーキのあいだの虚で
 
泣きながらご飯を食べるその時は絶対カレーって今日決めた
 
アイドルになりたかったなカラオケのフライドポテト今日もしょっぱい
 
溶けていくクリームソーダのさくらんぼみたいなわたし取るに足りない
 
ラムネ瓶かたむけ飲んだそらいろがおんなの腹で夕焼けになる
 
くちびるの動きだけでも知りたくて好きな天ぷら何度でも聞く
 
ファミレスのファくらいポップで軽やかにきみの名前を呼びたかったな
 
お詫びならいちばんやさしい鳥のうむ卵でできたプリンじゃなきゃ嫌
 
指輪とか出てきてほしい食べかけの杏仁豆腐の底の方から
 
オムライスきれいに包むし大抵のことはゆるすしわたしでいいじゃん
 
きみの前じょうずにひらかない口をわらってひらくはまぐりひらく
 
いつまでもビールは苦いし酔ったふりしたいしレモンサワー減らないし
 
大丈夫わたしかわいい焼肉の焦げてないほうくれるのも愛
 
見慣れないベッドで眠った朝にしか食べない辛いカップラーメン
 
きみの部屋いつになっても異国のようさよならオニギリまたきてタコス
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。