ベイビー・ウォーク・イン宇宙


彩度の低いきみのクローゼットのなかにぬいぐるみを住まわせたい、そこそこ大きな魚がいい、できれば鮮やかな色の。
わたしは暗いところと狭いところが苦手だったけれど、きみと眠る夜だけはよかった、遠い星のひとつもない宇宙、いったことのない宇宙みたいな暗闇、トイレにのそのそと起き出してベッドの角に脚がぶつかったとき、はじめて、自分がもう星のこどもでないことを知るくらいの、暗闇。


餌をやりすぎた魚が日に日に大きくなる、宇宙の膨張に似ていますね、と、一冊も宇宙の本を読んだことのないひとが適当に親切に笑う、肥った魚に背が高く痩せていた元彼の名前をつけたことはもう言えなくて、数冊の宇宙の本を読んだわたしが、宇宙にはだれが餌をやっているんですか、と、気にもならないのに聞いてみる。
ぼくですね。こうしてなにかに餌をやっていると、自分が神になったみたいで気分がいいので、
と、彼は答えた。魚のことも宇宙のことも、きみのぶんまでわたしが可愛がるので、きみがろくでもないことなど(宇宙にとって)取るに足らないことなのだけれど余計なことばかりするんですねと言っておいた、
宇宙は、きょうも、きみのせいで広がりつづけて、わたしが産まれたことを忘れていく、


鮮やかでやけにおおきな魚が、暗い宇宙のなかをずんずんと泳いでいく、夢を、今夜も見られない。















生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。